魔法学院の階級外魔術師

浅葱 繚

文字の大きさ
29 / 153
第4章 ギルド体験週間編―3日目

ギルド体験週間3日目④ 生徒会ギルド(カウンサル)

しおりを挟む
「ルーシィ、いらっしゃい!みんなもいらっしゃい!よく来たわね!さぁ、そんなに大きいギルドホームじゃないけど、入って入って!」
生徒会ギルドカウンサルに行くと、サラが出迎えてくれた。

生徒会ギルドカウンサルは規模的には小規模ギルドであるが、それは役職的に人数を制限しているからである。
生徒会ギルドカウンサルは会長1名と副会長2名、書記2名、会計2名、広報1名、監査1名と、基本的に決まっている。書記、会計、広報に関しては、その時によって数の増減がある場合もあるが、いずれにしろ生徒会カウンサルメンバーは10名前後である。
全校生徒約700名のディナカレア魔法学院の中のわずか10名。生徒会ギルドカウンサルは来るもの拒まずといった大規模ギルドとは違うのである。

ちなみにサラの今の役職は書記である。

ルーシッド達が、生徒会カウンサルのギルドホームに入ると、そこには応接用の大きめのテーブルとソファがあり、部屋の左右にはドアがあった。その奥には会議室や資料室、仕事のための部屋がいくつかあるようだった。そして、部屋の奥には会長の机があり、そこには会長が座っていた。その横には副会長とおぼしき人が立っていた。

「こんにちは。入学式以来ですね。生徒会長のフリージア・ウィステリアです。ようこそ、生徒会カウンサルギルドホームへ」
フリージアはウェーブがかかった黒髪のロングヘアーがよく似合う、知性的な女生徒だった。いかにも生徒会長らしい、非常に優秀そうな女性である。しかし、ゆったりとして落ち着いた雰囲気がある女生徒だった。
そう、会長は入学式の時に、在校生代表の祝辞を述べるため壇上に上がっているので、一度は顔を見ていることになる。ちなみに、ルーシッドは入学式に出席していないので、初見である。

「どうもはじめまして。副会長のヴァン・ブレンダークです。もう一人の副会長と他のメンバーは仕事のためおりません。申し訳ない。生徒会カウンサルもこのギルド体験週間は色々と忙しいもので」
副会長のヴァンはメガネはよく似合う、こちらも理知的な男子生徒だった。

「さぁ、座ってください」
そう言って、応接用の机に自らも座りなおす会長。
「今期の生徒会カウンサル補充枠は一応、主席のアザレア・ディライトさんが内定していますので、あと1名、多くても2名を予定しています。誰になるかは目下選考中ですが…本来であれば、私としてはルビア・スカーレットさん、あなたに生徒会カウンサルに入ってもらうことを希望しています。あなたは主席を辞退されましたが、全ての面において、今回主席のアザレアさんよりも明らかに上ですから…」

そう、ルビアは主席を辞退していた。それは、自分が負けたルーシッドが主席に選ばれないのに自分が選ばれるのはおかしいという学校側への抗議の意を込めてのことだった。ルビアは自分の名声よりもルーシッドへの義を通したのだ。
ちなみに今回主席となったアザレア・ディライトは準決勝でルビアが戦った相手で、魔力ランクはAであり、実力的には本来であれば優秀な部類に入るのだが、ルビアという圧倒的な実力者を前にしてはどうしても見劣りしてしまうのが、少し可哀そうではある。

「それを言うなら、私はルーシッドが全ての面において自分よりも上だと考えています。ルーシッドが生徒会カウンサルに入らない限り、私が生徒会カウンサルに入ることはありません。この意思は主席を辞退した時から変わりません」

「ルーシッドさん…そうね。私個人としては、あなたに生徒会カウンサルに入って欲しいと考えています。サラさんよりも、ルビアさんよりも、私はあなたが欲しい。これは本心です」
ルーシッドにとって、これは意外な言葉だった。あまり評価されることがない自分が、由緒正しいディナカレア魔法学院の生徒会ギルドカウンサルの会長からそのような評価を受けているとは思ってもいなかったのだ。
「入学試験のペーパーテスト過去最高点、しかも前代未聞の満点に10点加算の510点。ちなみに今までの最高点は私の470点だったのよ。これはちょっとした自慢だったのだけれどね。塗り替えられてしまいました。あなたは恐らく現時点でも私よりはるかに多くの知識を持っているでしょう。その力をこの生徒会カウンサルのために使っていただけるのなら、どんなに良いかと思います」
「会長のそのお言葉を聞けただけで十分ですよ。問題なのは私の魔力ランクですよね?」
ルーシッドはそう伝えた。
「……あなたはどんなに優れているとしても、ランクの上ではFランク…このディナカレア魔法学院生徒会カウンサルにFランクの生徒が入ったことは今までありません。もちろん、私はそんな前例は覆してしまえばいいと考えています。ですが、他の生徒会カウンサルメンバーや先生たちの中にさえ、それをよく思わない人もいるのです。本当に残念なことです」

それを聞いていたサラは悔しそうに顔をゆがませた。


「良かったのですか?ルビアをあのまま返してしまって」
4人が帰った後で、ヴァンが口を開いた。
「本人の意思に反してまで強引に引き入れるわけにもいかないでしょう」
「私の時は強引だったじゃないですか」
フリージアの言葉に対して、サラが突っ込む。
「あなたは少し有名になり過ぎていました。むしろあなたが生徒会カウンサル以外のギルドに入る方が難しかったと思いますよ。あなたが入ることでギルドのパワーバランスが大きく変わってしまいます」
「むぅ~…」
もっともな意見にぐうの音も出ないサラ。
「しかしまぁ…私としてはルビアさんよりもルーシッドさんが生徒会カウンサルに入らない方が惜しいですねぇ」
「ルーシッドの実力に関しては、生徒だけでなく先生たちの間にも懐疑的な意見が多くありますが?例えば、サラが代わりに魔法を使っていて、ルーシッドは魔法を使っている振りをしていただけだ、とか」
「そんな!私はそんなことしていません!」
「わかっていますよ。あなたには悪いですが、入学試験でルーシッドが使っていた魔法は明らかにあなたよりも威力が高い。それに、いかにあなたでも、ルーシッドが個人実技でやったような『雷』『風』『火』の魔法を同時に使うなんてことできるわけがない。あれは明らかに私たちが使う魔法とは別の力です」
「ではなぜ!?」
「落ち着いてください。あなたはルーシッドのことになるといささか感情的になるところがある」
「すっ…すいません…」
取り乱してしまったことを謝罪するサラ。
「まぁまぁ、それだけサラさんはルーシッドさんのことを買っているということでしょう。本当は実力がある者が、まるで実力がないかのように見下げらている、それが我慢ならないのでしょう?」
サラは悔しそうに唇を噛んで、涙をこらえた。
「サラさん、私が言いたかったのは、今はまだその時ではないということです」
ヴァンがサラを落ち着かせるようにゆっくりと話す。
「ルーシッドの力が本物であれば、いずれそれは明らかになるでしょう。誰もがあの子の力を認めざるを得ない時が来るでしょう。あの子はまだ1年生だ、焦ることはない。時を待ちましょう。その時まであなたがしっかりとフォローしてあげるのですよ」
「はい…ありがとうございます」
「まぁ、幸いなことに、あの子は1人じゃありません。あなたやルビアさんを初め、あの子の実力が本物であると認める仲間がいます。風紀ギルドサーヴェイラのマーシャもあの子のことをえらく買っているようですしね。ルーシッドが風紀ギルドサーヴェイラに入ってくれたら、あなたも一緒に仕事をする機会も多くなるし良かったじゃない?
あの子がこの学院で活躍していき、そういう仲間が増えていけば、ルーシッドに対する偏見もなくなるでしょう」
フリージアが優しい笑みでサラを見ると、サラはそれに答えてほほ笑んだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

雨の少女

朝山みどり
ファンタジー
アンナ・レイナードは、雨を操るレイナード家の一人娘。母キャサリンは代々その力を継ぐ「特命伯爵」であり、豊穣を司る王家と並び国を支える家柄だ。外交官の父ブライトは家を留守にしがちだが、手紙や贈り物を欠かさず、アンナは両親と穏やかな日々を送っていた。ある日、母は「明日から雨を降らせる」と言い、アンナと一緒に街へ買い物に出かける。温かな手を引かれて歩くひととき、本と飴を選ぶ楽しさ、それはアンナにとってかけがえのない記憶だった。 やがて雨が降り始め、国は潤ったが、異常気象の兆しが見え始める。キャサリンは雨を止めようと努力するが、うまくいかず、王家やサニダ家に助けを求めても返事はない。やがて体を壊し、キャサリンはアンナに虹色のペンダントを託して息を引き取った。アンナは悲しみを胸に、自らの力で雨を止め、空に虹をかけた。 葬儀の後、父はすぐ王宮へ戻り、アンナの生活は一変する。ある日、継母ミラベルとその娘マリアンが屋敷に現れ、「この家を任された」と告げる。手紙には父の字でそう記されていた。以来、アンナの大切な物や部屋までも奪われ、小屋で一人暮らすことになる。父からの手紙はミラベルとマリアンにのみ届き、アンナ宛てには一通も来ない。ペンダントを握って耐える日々が続いた。 「なろう」にも投稿しております。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

無能だと思われていた日陰少女は、魔法学校のS級パーティの参謀になって可愛がられる

あきゅう
ファンタジー
魔法がほとんど使えないものの、魔物を狩ることが好きでたまらないモネは、魔物ハンターの資格が取れる魔法学校に入学する。 魔法が得意ではなく、さらに人見知りなせいで友達はできないし、クラスでもなんだか浮いているモネ。 しかし、ある日、魔物に襲われていた先輩を助けたことがきっかけで、モネの隠れた才能が周りの学生や先生たちに知られていくことになる。 小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿してます。

今度は悪意から逃げますね!

れもんぴーる
ファンタジー
国中に発生する大災害。魔法師アリスは、魔術師イリークとともに救助、復興の為に飛び回る。 隣国の教会使節団の協力もあり、徐々に災害は落ち着いていったが・・・ しかしその災害は人的に引き起こされたものだと分かり、イリークやアリス達が捕らえられ、無罪を訴えても家族までもが信じてくれず、断罪されてしまう。 長期にわたり牢につながれ、命を奪われたアリス・・・気が付くと5歳に戻っていた。 今度は陥れられないように力をつけなくちゃ!そして自分を嵌めた人間たちや家族から逃げ、イリークを助けなければ! 冤罪をかけられないよう立ち回り、災害から国民を守るために奮闘するアリスのお話。え?頑張りすぎてチートな力が? *ご都合的なところもありますが、楽しんでいただけると嬉しいです。 *話の流れで少しですが残酷なシーンがあります。詳しい描写は控えておりますが、苦手な方は数段飛ばし読みしてください。お願いします。

処理中です...