魔法学院の階級外魔術師

浅葱 繚

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登場人物・設定・元ネタ等

妖精辞典(※ネタバレ注意)(※2020年8月20日更新)

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妖精は人間(魔法使い)や魔獣とは異なる存在で、物質的な体を持たず、寿命という概念も存在しない。
だが、男女の区別はあるようである。あくまで本人達の気分的な問題であると思われるが…。
基本的には、魔法界とは異なる妖精界に住んでいる。魔法界と妖精界はいわば『重なり合い、繋がり合った世界』であるが、妖精は2つの世界を自らの意思で自由に行き来したり、妖精界から力を授けたりすることができるのに対し、人間は妖精界に行くことはできない。
目には見えないが、妖精の中には魔法界にほぼ定住しているような妖精も少なからずいるようである。


かつてまだ『魔法使い』という存在がいなかった時代、今は『神話の時代』と呼ばれている時代には、世界はまだ別れておらず、この境界線もよりあいまいだったようである。

妖精には寿命は確かに存在しないが、『生と死』は存在する。妖精は妖精から生まれるわけではなく、自然発生的に生まれ、自我を持つ。自然界が生命活動を行う中で生まれるのである。大きな自然現象からはより力の強い妖精が生まれる。
そして、自然界が消滅した時、妖精たちも消えてしまうのである。
ゆえにこの人間が住む物質世界と妖精界は一蓮托生、切っても切り離せない関係にあると言える。

かつて、この魔法界メイ・フォールドとそこに繋がる妖精界は、こことは違う世界に存在していた。そしてその世界はすでに滅んでいる。一部の無計画で利己的な存在の活動により自然界が滅んでしまったのである。
完全に滅んでしまう前に、一部の賢者たちが別の地に移り住むことにした。それが今の世界である。

そして、この世界を創造する際に二度とそうならないように、この世界に存在する三種族『人間族』『妖精族』『魔獣族』の間で、全員でこの世界を維持していく上での約束がなされたのだ。

その中の大きな約束の1つが『魔法』であった。
かつての世界が滅んだ大きな要因は人間の生命活動にあった。人間が生命活動を行っていく上で、自然界を徐々に破壊していったのである。
それで、人間と妖精の間で契約が結ばれ、人間はそのおきて、つまり『魔法』により、自然界を破壊するのではなく、自然を生み出すことにより生命活動を行うことができるようにしたのだ。
この時から、人間は全て『魔法使い』となった。

妖精界の頂点に立つのは、『始まりの妖精』とも呼ばれる大妖精『妖精の女王ティターニア』である。この妖精はどの妖精とも異なる絶対的な力を持つが、慈愛に富み、常に妖精達を温かく見守っている。

それ以外の妖精はその力の強さに応じて、低位、中位、高位、神位しんいと分かれている。

低位~中位の妖精たちは、言葉を理解し意思を通わせることはできるが、話すことでコミュニケーションを取ることはしない。妖精たちの間ではテレパシーのようなもので会話ができるようである。

高位の妖精の中には、神位に近い力を持つものもおり、話すことができるものもいる。神位の妖精もそうだが、妖精たちは直接口から言葉を発して話すのではなく、脳に直接語りかけるようにして話す。

神位の妖精とは、妖精族の頂点、妖精の女王とほぼ同等の位である妖精のことである。
私たちの世界でいうところの『神』にあたる存在。

神位の妖精は他の妖精たちと大きくことなる特徴がいくつかある。

その中でも決定的な違いは、扱える属性を2つ以上持っているということである。

そして、神位の妖精は唯一無二の存在である。つまり、他の妖精、例えば火の妖精『サラマンダー』、と言えば無数にいるのに対して、神位の妖精は、その名前がつく者がそれ一人しか存在しない。
この唯一無二の存在である、という点に関しては、神位の妖精に限ったことではない。高位の妖精の中にも、全てではないが、それ単体しか存在していない者は存在している。

また、神位の妖精は、妖精の女王との間の合意により、人間と妖精との間の法に縛られることはない。従いたくなければ従わなくてもよい。自分でその詠唱に答えるかどうかを決められるのだ。
それゆえに神位の妖精の中には、当てはまる魔力がわからず、その妖精を使役して使える魔法が判明していない者も多い。

一人しか存在していないということは、一度に一人の魔法使いの詠唱にしか答えられないということではない。同時に複数の詠唱に答えるということなど、神位の妖精にとっては何の問題もないことである。

妖精はそれぞれ種族名の他に真名を持つが、神位の妖精は一種族につき一人しかいないので、種族名=本人を指すこととなる。しかし、神位の妖精からすれば、それは名字のようなものであり、真名はファーストネーム、もしくは愛称に近いものであるらしい。

また、真名を魔法使いに明かすということは、そのものと『個人的な契約を交わす』『契約召喚に応じる』ということである。
魔法使いの契約召喚に応じる神位の妖精など基本的には存在しないので、神位の妖精の真名を知る者など、この世にはいないと言ってよい。


妖精達は、神位の妖精を中心にして、いくつかのグループに分かれている。それは『神族しんぞく』と呼ばれている。最大勢力の神族は神位の妖精ゼウスをトップとしたグリーク神族である。今使われている魔法の大部分はこのグリーク神族を使役したものである。
第二勢力としてローマン神族がいる。その他の少数派としてケルティック神族やノルディック神族、イージプト神族などがある。




以下は本編に登場した妖精の紹介である。
元ネタ等含む。



マリー 神位妖精:ヴァンパイア

契約召喚にしか応じないという極めて珍しい神位の妖精。
自分が好む魔力『ブラッドレッド』を持つ者としか契約をしない。

元ネタとしては当然ヴァンパイア(吸血鬼)であり、一般的な吸血鬼の特徴と合致する点も多いが、マリーは人間の血を吸うということはない。
マリーから言わせれば、そもそも妖精は物質的なものは食べないとのこと。確かに言われてみればそうである。

使用できる属性は判明しているだけで、闇・火・土・風の4属性である。


一般的なヴァンパイアという存在も、様々な見解がある。
怪物とするものや死者が蘇った存在、そして目には見えない霊的な存在。

この世界におけるヴァンパイアとは霊的な存在、すなわち妖精であるらしい。
また、この世界において、神位の妖精は唯一無二の存在であるから、ヴァンパイアに該当するのも彼女1人である。
このヴァンパイアという妖精が、どのような自然現象にしてこの世に生まれたのかはよくわからない。


真名のマリーは『ブラッディ・マリー』から



ヒルダ 神位妖精:オーディン


元ネタは北欧神話の主神オーディンである。
一般的にオーディンは髭を生やした老人として描かれることが多いが、この世界では女性である。
知識に非常に貪欲な妖精であり、魔法言語の1つ、ルーン文字と、それを用いるルーン魔法を考案した。
オーディンが好む魔力と、オーディンを使役するための魔法詠唱文は文献には存在しない。
オーディンは自ら行動することを好み、人に従うことは好まないようだ。
ただし、フェリカの魔力は『美味い』と称した。
同じくほとんど魔法界に行くことがないマリーとは親友のようである。

ヒルダはノルディック神族という妖精たちのグループのトップである。

ヒルダは妖精界にいない間は、妖精界にフギンとムニンという使い魔を置いてきており、定期的に情報を得ているようだ。フギンとムニンはカラスの形をしたヒルダの使い魔である。使い魔も妖精の一種であるが、ヒルダにだけ従っているようだ。


真名のヒルダは、オーディンに無数にある呼称のうちの1つ『ヒルドールヴ(戦の狼)』から



ヴァルカン(真名不明)

ローマン神族に属する神位の妖精。得意分野は金属の錬成。鉄の魔法の際によく使役される。人間に対して比較的友好な神位の妖精である。
鉄の魔法を用いるためには、土属性を主体として火属性が必要である。中位~高位の妖精で、鉄の魔法を使用する場合には2体を同時に使役する必要があり、魔力も分解する必要がある。しかし、神位の妖精は単体で2属性を使用することができるため、ヴァルカンはオレンジ系統の魔力を分解することなく、そのまま使用することができる。
ヴァルカンが作った剣『マルミアドワース』は神話の時代(魔法使いが生まれる前の時代)の剣であるが、実物やコピーは残っていない。今はヴァルカンを使役する『剣の生成魔法』の魔法名として用いられている。


ルー(真名不明)

ケルティック神族に属する神位の妖精。主に火や光を用いることを得意とするが、他の神位の妖精にたがわず色々な能力を持つ。ルーを使役することで使用できる火と鉄の攻撃魔法『ブリューナク』は、かつて彼が用いていたとされる槍の名前から取ったもので、使用する魔力量としても、攻撃力としても現代魔法では最上位に位置する神位魔法の1つで、通常であれば1人の魔力量で補うことはできないので、複数人の魔法使いによる輪唱サーキュラーカノンで行われる。これを1人で使用したルビアはとんでもない化け物と言える。


アルゴス(真名不明)

グリーク神族に属する神位の妖精。人の詠唱に答えることはなく、アルゴスが好む魔力も判明していない。しかし、魔法使いには友好的である。

アルゴスの能力は極めて特異なものであり、それは『魔眼サードアイ』と呼ばれる特殊な目を魔法使いに授けるという能力である。
誰にどの魔眼サードアイが発動するかは、完全に彼の独断である。
マリーやヒルダに言わせれば、「ただ単に魔法使いがどう目を使うかを見て楽しんでいるだけ」とのこと。
しかし、キリエの例を考えれば一概にそうとも言い切れないのかも知れない。

魔眼サードアイは多くは先天的なもので、生まれた時から所持している。誰に言われなくても、自分の魔眼の名前と能力を知っているのである。恐らく、キリエの場合のように、それとはわからない何かしらの形でアルゴスが伝えていると思われる。
たまにキリエのように後天的な理由で魔眼サードアイが発動することがあるが、ごくまれなケースである。
今現在、この魔法界にどんな魔眼サードアイ持ちが、何名存在しているのかも確かなことはわかっていない。アルゴスは『百の魔眼を持つ』とされているが、本当に百種類なのかは不明であり、実際に今までに判明しているものは百種類はない。それは、判明していないだけですでに存在しているのか、かつて存在していたのかもわかっていない。ただ、同じ魔眼サードアイが同時に存在するということはない、ということは間違いないようなので、その魔法使いが死んだときには、その魔眼サードアイはアルゴスの元に戻るようである。

いずれにせよ、世界に最高でも100はいないという貴重な能力なので、どんな魔眼サードアイが開眼するとしても、非常に珍しくありがたがられる。
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感想 2

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みんなの感想(2件)

ニッコリ瓢箪

5月行われた投稿に気がつけず、今日やっと気が付きました。
久方ぶりに読んでもある程度内容を覚えていられるのは、この作品を楽しく読ませて貰っているからなのでしょうか?
そんなわけで更新お疲れ様です。ご自愛ください。

2022.09.24 浅葱 繚

更新不定期で申し訳ないです。嬉しい言葉、励みになります。秋は比較的余裕があり、数話ストックがあります。順次アップしていきますので、また読んでいたどけると嬉しいです。

解除
ニッコリ瓢箪

気が付いたら最新話まで読了しておりました。
今後の更新も楽しみにしております。

2022.01.03 浅葱 繚

ご覧頂きありがとうございます!今年も頑張って更新します。よろしくお願いします。

解除

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