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第8章 地下迷宮探索編
地下迷宮探索② 第1階層
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「……どっ、どういうこと?」
「……どの道も外れってこと?」
シアンとロイエが驚き惑ってそう言った。
5本ある道を左端から順に攻略してきたルーシッド達のクラス。
4本目までは全て外れだった。逆から攻略していればすぐに終わったのにね、などと話していたのだが、最後の5本目を進むとそこも行き止まりだったのだ。
「見落としがあったのかしら?」
「で、でも、地図を描きながら来たから、全部ちゃんと確認したと思いますけど…」
シャルロッテは自分で描いた地図を見ながら首をかしげる。
「後ろのみんなに一旦最初の場所に戻るように伝えてくれる?先生言わなきゃいけないことがあるの…」
「は、はい!わかりました!」
リサ先生の深刻そうな顔にただならぬ気配を感じ、急いで後ろのパーティーに知らせに行くライム。
「え、うそぉ、5本目も違ったの?どういうこと?」
ライムが走ってきて事情を伝えると、フェリカは不思議そうに尋ねる。
「私にもさっぱり。とにかく先生が一旦初めの場所に戻るから、そう伝えてくれって」
「わかった、じゃああたし伝えてくるね」
そう言ってフェリカは後ろのパーティーに伝えに行く。
「一体どういうことかしら?」
ルビアがルーシッドに尋ねる。
「探索中に気になる点がいくつかあったよ」
「え、そうなの?」
「うん。まぁ、全員がまとまってから話そう」
クラスの全員が最初の地点、分かれ道の始点に戻ってきた。
「先生、5本とも外れとはどういうことでしょう?」
シアンが改めて尋ねる。
「最初の道で違和感に気づいたときに言おうか言うまいか迷ったんだけど…私が持ってる最新の地図と道が変わっているの」
リサは地図を取り出して広げた。
「最初の道は1本道じゃなくて隣の道に抜ける道があるはずなのにそれがなかった。その時は、地下迷宮の道が変わること自体はそんなに珍しいことでもないからそこまで気にしなかったけど、でも、第2階層に続く階段への道もなくなっていたわ。本当は左から数えて3本目と4本目の道の真ん中辺りにあるはずだったのよ」
リサが地図を指差す。
「ロッテ、さっき描いた地図を出してくれる?」
「うん!」
シャルロッテが描いた地図とリサが持ってきた地図を比べてみる。
「確かに…いくつか道が変わっていますね…」
「これがメチカさんが言ってた演習用のアトラクションってやつぅ?」
ヘンリエッタがそう尋ねる。
「無いとは言い切れないけど…」
「何か見落とした仕掛けがあったとかですかね?隠し扉のようなものとか?」
「その可能性もあるね…あるいは落石によって道が塞がれていた…とか?」
ジョンに同意してランダルも意見を述べる。
「地下迷宮で落石が起こることは考えにくいわ…それに見たところ、落石などが起きた形跡は無かったと思う」
的確な意見を述べるレガリーに対して、肩をすくめるランダル。
「メチカさんのアトラクションなのかどうかはわかりませんが、これは間違いなく人為的なものだと思いますよ」
ルーシッドがそう言った。
「ルーシィはその証拠を何か見つけたのね?」
ルビアが先ほどルーシッドが言っていたのはこれかと思い尋ねた。
「うん、何か所か魔法で綺麗に壁が作り替えられているところがあったよ。さっき先生の地図を確認したけど、位置的にも多分元々道があった場所じゃないかなぁ?エアリーはどう思う?」
「はい。確かに壁の質感が若干違う箇所かありました。そして、壁が作られていた場所と本来道があった場所は完全に一致しています」
「すごいわね、見ただけでわかるの?」
エアリーがきっぱりと答えたのでシアンは驚いて尋ねる。
「はい、歩幅と歩数から距離を計算していますので。そして、先生の地図の縮尺と照合すると、ぴったり同じ位置です。
しかし、そこの壁には仕掛けのようなものは見当たりませんでした。ただ単に壁で塞いだだけのように感じました。これをアトラクションと言うのでしょうか?」
「でもよー、メチカさんでもない、落石でもないとすれば、他に誰がやったって言うんだよ?」
「ま、まさか、侵入者ですかね?」
「えぇ~、侵入者ぁ!?」
ビリー・ジェンクスがそう尋ねると、アヤメ・クロッカスとラコッテ・テラコッタがそれに反応する。
「地下迷宮の入り口は1つしかないわ。そこ以外からこの迷宮に入るには普通に穴を掘って入るしかないけど、それはかなり無理があるんじゃないかしら?」
「そうだね、そんなことができるとすれば、地下迷宮の位置を正確に把握している者か、もしくはよほど無謀なやつのどっちかだろうね。まぁどっちにしろヤバいやつに違いないね」
リリアナとクリスティーンは笑いあった。
「でもないとは言い切れない」
コニアがぼそりと言うと、皆が黙ってしまった。
「どうしますか、先生。演習を続行しますか?」
シアンがクラスを代表して先生に尋ねる。
「コニアさんの言う通り、この地下迷宮に侵入者がいる可能性も捨て切れません。そんなことは前代未聞ですが…
先生は皆さんの判断に任せますよ。このまま続行するというのなら、その勇気ある決断を尊重します。もし、中断するというのならそれもまた賢明な判断でしょう」
「もし侵入者がいるってんなら、とっ捕まえてやるわ!」
ミスズが威勢よく答え、右の拳を左の手のひらにバチンと叩きつける。
「あはは、スズは元気だね~。まぁスズの意見に乗る訳じゃないけど、せっかく準備してきたんだし?このまま終わっちゃうのもつまんないよねー?」
オリヴィアがそう言ってちらりとヘンリエッタの方を見る。
「まぁ、私はどっちでもいいわ。みんなが行くって言うなら行くわ」
「僕も行くのに賛成だな。もしこれをやったのがメチカさんじゃないとすれば、犯行はメチカさんが中の様子を確認してから今日までのほんの数日に行われたことになる。動機はわからないが、まだこの迷宮の中にいる可能性が高いんじゃないか?今なら捕まえられるかも知れない」
ジョンがそう言うと、ジョンのパーティーはそれに同意した。
他のパーティーも同様に、このまま演習を続けようということになった。
「わかりました。では、予定通り、まずは第2階層を目指しましょう。それにはまず第2階層へ続く階段を探し当てる必要がありますね」
「その作られた壁ってのをぶち壊せばいいんじゃねーのか?」
「いや、どんな仕掛けがあるかわからない。いきなり壊すのは危険じゃないだろうか?」
「そうね。壁を壊すことで何か別のトラップが作動するという可能性もなくはないわ」
ビリーの意見に対してランダルとレガリーが慎重な意見を返すと、ビリーは、なるほどと言って頭をかく。
「…じゃあ私が、俯瞰の魔眼で壁の先を確認してこようか?」
キリエがそう提案する。
「先生、今回ばかりはこんな状況ですし、キリエさんにお願いした方がいいと思いますが?」
「そうね。一度キリエさんに確認してきてもらいましょう」
「わかりました!」
嬉しそうにそう言うと、キリエの目が普段とは違う色に輝いた。
「確かに、これは魔眼の輝き…」
「じゃあ、見てきますからちょっと待っててくださいね」
そう言ったキリエはその場に立ったままだった。
「え、何、これどういう状況?」
見てくるといいながら、キリエは黙って立ったままだ。キリエの能力を詳しく知らないオリヴィアはそう突っ込んだ。
「まぁ、簡単に言っちゃうと、視覚を2つにする感じかな。ここの視界も見えてるけど、別の視界も見えてるみたいな?」
「へぇ~、なんか頭混乱しちゃいそうだね~…」
『おい、キリィ、思念体の方だけ話すことはできるな?』
『あ、マリーさん。はい、できます』
思念体の方のキリエが、迷路を飛んで進んでいると、横に並走するようにマリーとヒルダが現れた。
『へぇ、これが俯瞰の魔眼?初めて見たわ。不思議な感じね。私たちに似ている存在ね』
『うむ。一応、私たちも一緒に行ってやる』
『そうね。1人より3人の方が何か気付けるかも知れないし』
ヒルダがウインクする。
『ありがとうございます!心強いです』
『しかし地下にこんな場所が広がっているとは知らんかったのぉ。人間とは色々考えるものじゃ』
『魔法鉱石の採掘跡を利用してるのよね?』
『そうみたいですね~。あ、この辺ですね、地図の場所は。うーん、私にはよくわからないですけど…?』
キリエが壁の辺りを確認するが、見た目にはよくわからない。
『いや、見ろ。若干じゃがこの辺りの壁だけ新しい。それにほれ、わずかに継ぎ目があるぞ』
マリーが継ぎ目の辺りを指差す。
『えぇ?わかりませんけど…よくわかりますね。ルーシィもよくわかったなぁ』
『それに微量じゃが魔力が残っておる。これは魔法で人工的に作られた壁じゃ』
『確かにそうね。でも魔力がまだ残ってるってことは、作られてからまだそんなに経ってないわね』
『どのくらいの厚さがあるんですかね?』
『それは向こうに行ってみないと何とも言えんが…キリィ、お前の魔眼は俯瞰の魔眼じゃったな…恐らくその目を使えば、実際に行かずとも見ることができるんじゃないか?』
『え、どういう意味ですか?』
『何ていうんじゃろ、それこそ上から見下ろす感じ?空から俯瞰できるんじゃったら、できると思うんじゃんが?』
『うぅーん?』
『あれじゃない?要は断面図みたいな感じよね?この上にある天井だけを透かして見るみたいな』
『あー、なるほど。ちょっと試してみますね』
キリエは意識を上方へと飛ばし、意識だけ地下迷宮から脱した。そこは森の中だった。
『わぁ、現在地ってこの辺りなんだ。さてと…うーん…こうして…こう?ちがうな…こう、あっ、できた!すごい!』
キリエが見ると、天井を取っ払って上から迷路を眺めている感じの光景だった。
『できたか。よくやった。そういう見方は私らじゃできんからな』
『そうね、魔眼ならではって感じね』
『で、どんな感じじゃ?』
『そうですね。人の厚みくらいの壁がありますが、先の通路は無事です』
『なるほどな。とりあえずは良いな。キリィ、視界をこっちに戻して、壁の向こう側に回って詳しく調べるぞ』
『はい!』
3人は壁の向こう側に立って、壁を調べる。
『特に時限式魔法などの類は仕掛けられてないみたいね?』
『そうじゃな。ただの足止めのための障壁だったようじゃな』
『一応、第2階層まで確認して見ますか?』
『そうじゃな、その方が良いじゃろうな』
「確認してきました!」
しばらくただそこに立ち尽くし、沈黙を続けていた(実体の方の)キリエだったが、急に意識が戻ったかのように喋り出した。
「わっ、びっくりしました!」
「あ、戻ってきた。おかえり~」
キリエの近くにいたライムとシャルロッテが反応する。
「キリィ、お疲れ。で、どうだった?」
シアンがキリエをねぎらい、尋ねる。
「うん、壁が作られてたけど、特に仕掛けはなかったよ。先の通路とか階段は無事だったから、壁さえなんとかできれば、第2階層に進めるよ」
「そう、それは朗報ね」
「しっかし、すごい不思議な能力だね」
ライムが興味深そうにキリエを見つめる。
「うん、使ってる自分でも不思議な感覚でまだ慣れないけど、みんなの役に立てたなら良かったよ。それがこの魔眼をくれた妖精さんとの約束だからね」
「え…キリエさんは、その魔眼を後天的に手に入れたのですか?」
リサが驚いて尋ねる。
「はい、つい最近です。アルゴスっていう妖精がくれたんです」
「アルゴス…!?」
「先生、知ってるんですか?」
シアンが尋ねる。
「えぇ…魔眼の主アルゴス。目的はわからないけど、魔法使いにランダムに魔眼という能力を与えている張本人よ」
『あいつに目的なんてあるのか?』
『無いんじゃない?ただ楽しんでるだけでしょ』
そんな会話がルーシッド達にだけは聞こえてきて、思わず吹き出しそうになってしまう。
「大抵は先天性、つまり生まれた時に発現するんだけど、まれに後天的に魔眼を保有する人がいると聞いたことはあるけど…しかもキリエさんの言い方だと、アルゴスと会話して、直接もらったのかしら?」
「はい。アルゴスさんの方から話しかけてきて、俯瞰の魔眼をあげるけど、私利私欲のために使ったら失明するからね、って言われました」
「まぁ、それだけの魔眼だものね。代償はあるということね…大事に使うといいわ」
「はい!」
「えぇ、じゃあ覗きとかに使ったらダメってことー?」
「そんなやつは失明しちゃえばいいよ。てか、キリィはそんなことに使わないでしょ。オリーじゃないんだから」
くだらないことを言うオリヴィアにあきれたように突っ込むフェリカ。
「ちょっ、リカぁ?ひどくない、私もしないし!」
「どうかしら…あなた私の…」
「わぁ!ヘティー!なし!この話はなーしっ!」
皆がそのやり取りを見て笑う。少し場の空気が明るくなった。
「さぁさぁ皆さん、キリエさんのお陰で壁について調べることができました。後は、壁をどのようにして突破するのかを考えましょう」
「その役、僕にやらせてくれないか?」
名乗りを上げたのはジョン・ブラウンだった。
「……どの道も外れってこと?」
シアンとロイエが驚き惑ってそう言った。
5本ある道を左端から順に攻略してきたルーシッド達のクラス。
4本目までは全て外れだった。逆から攻略していればすぐに終わったのにね、などと話していたのだが、最後の5本目を進むとそこも行き止まりだったのだ。
「見落としがあったのかしら?」
「で、でも、地図を描きながら来たから、全部ちゃんと確認したと思いますけど…」
シャルロッテは自分で描いた地図を見ながら首をかしげる。
「後ろのみんなに一旦最初の場所に戻るように伝えてくれる?先生言わなきゃいけないことがあるの…」
「は、はい!わかりました!」
リサ先生の深刻そうな顔にただならぬ気配を感じ、急いで後ろのパーティーに知らせに行くライム。
「え、うそぉ、5本目も違ったの?どういうこと?」
ライムが走ってきて事情を伝えると、フェリカは不思議そうに尋ねる。
「私にもさっぱり。とにかく先生が一旦初めの場所に戻るから、そう伝えてくれって」
「わかった、じゃああたし伝えてくるね」
そう言ってフェリカは後ろのパーティーに伝えに行く。
「一体どういうことかしら?」
ルビアがルーシッドに尋ねる。
「探索中に気になる点がいくつかあったよ」
「え、そうなの?」
「うん。まぁ、全員がまとまってから話そう」
クラスの全員が最初の地点、分かれ道の始点に戻ってきた。
「先生、5本とも外れとはどういうことでしょう?」
シアンが改めて尋ねる。
「最初の道で違和感に気づいたときに言おうか言うまいか迷ったんだけど…私が持ってる最新の地図と道が変わっているの」
リサは地図を取り出して広げた。
「最初の道は1本道じゃなくて隣の道に抜ける道があるはずなのにそれがなかった。その時は、地下迷宮の道が変わること自体はそんなに珍しいことでもないからそこまで気にしなかったけど、でも、第2階層に続く階段への道もなくなっていたわ。本当は左から数えて3本目と4本目の道の真ん中辺りにあるはずだったのよ」
リサが地図を指差す。
「ロッテ、さっき描いた地図を出してくれる?」
「うん!」
シャルロッテが描いた地図とリサが持ってきた地図を比べてみる。
「確かに…いくつか道が変わっていますね…」
「これがメチカさんが言ってた演習用のアトラクションってやつぅ?」
ヘンリエッタがそう尋ねる。
「無いとは言い切れないけど…」
「何か見落とした仕掛けがあったとかですかね?隠し扉のようなものとか?」
「その可能性もあるね…あるいは落石によって道が塞がれていた…とか?」
ジョンに同意してランダルも意見を述べる。
「地下迷宮で落石が起こることは考えにくいわ…それに見たところ、落石などが起きた形跡は無かったと思う」
的確な意見を述べるレガリーに対して、肩をすくめるランダル。
「メチカさんのアトラクションなのかどうかはわかりませんが、これは間違いなく人為的なものだと思いますよ」
ルーシッドがそう言った。
「ルーシィはその証拠を何か見つけたのね?」
ルビアが先ほどルーシッドが言っていたのはこれかと思い尋ねた。
「うん、何か所か魔法で綺麗に壁が作り替えられているところがあったよ。さっき先生の地図を確認したけど、位置的にも多分元々道があった場所じゃないかなぁ?エアリーはどう思う?」
「はい。確かに壁の質感が若干違う箇所かありました。そして、壁が作られていた場所と本来道があった場所は完全に一致しています」
「すごいわね、見ただけでわかるの?」
エアリーがきっぱりと答えたのでシアンは驚いて尋ねる。
「はい、歩幅と歩数から距離を計算していますので。そして、先生の地図の縮尺と照合すると、ぴったり同じ位置です。
しかし、そこの壁には仕掛けのようなものは見当たりませんでした。ただ単に壁で塞いだだけのように感じました。これをアトラクションと言うのでしょうか?」
「でもよー、メチカさんでもない、落石でもないとすれば、他に誰がやったって言うんだよ?」
「ま、まさか、侵入者ですかね?」
「えぇ~、侵入者ぁ!?」
ビリー・ジェンクスがそう尋ねると、アヤメ・クロッカスとラコッテ・テラコッタがそれに反応する。
「地下迷宮の入り口は1つしかないわ。そこ以外からこの迷宮に入るには普通に穴を掘って入るしかないけど、それはかなり無理があるんじゃないかしら?」
「そうだね、そんなことができるとすれば、地下迷宮の位置を正確に把握している者か、もしくはよほど無謀なやつのどっちかだろうね。まぁどっちにしろヤバいやつに違いないね」
リリアナとクリスティーンは笑いあった。
「でもないとは言い切れない」
コニアがぼそりと言うと、皆が黙ってしまった。
「どうしますか、先生。演習を続行しますか?」
シアンがクラスを代表して先生に尋ねる。
「コニアさんの言う通り、この地下迷宮に侵入者がいる可能性も捨て切れません。そんなことは前代未聞ですが…
先生は皆さんの判断に任せますよ。このまま続行するというのなら、その勇気ある決断を尊重します。もし、中断するというのならそれもまた賢明な判断でしょう」
「もし侵入者がいるってんなら、とっ捕まえてやるわ!」
ミスズが威勢よく答え、右の拳を左の手のひらにバチンと叩きつける。
「あはは、スズは元気だね~。まぁスズの意見に乗る訳じゃないけど、せっかく準備してきたんだし?このまま終わっちゃうのもつまんないよねー?」
オリヴィアがそう言ってちらりとヘンリエッタの方を見る。
「まぁ、私はどっちでもいいわ。みんなが行くって言うなら行くわ」
「僕も行くのに賛成だな。もしこれをやったのがメチカさんじゃないとすれば、犯行はメチカさんが中の様子を確認してから今日までのほんの数日に行われたことになる。動機はわからないが、まだこの迷宮の中にいる可能性が高いんじゃないか?今なら捕まえられるかも知れない」
ジョンがそう言うと、ジョンのパーティーはそれに同意した。
他のパーティーも同様に、このまま演習を続けようということになった。
「わかりました。では、予定通り、まずは第2階層を目指しましょう。それにはまず第2階層へ続く階段を探し当てる必要がありますね」
「その作られた壁ってのをぶち壊せばいいんじゃねーのか?」
「いや、どんな仕掛けがあるかわからない。いきなり壊すのは危険じゃないだろうか?」
「そうね。壁を壊すことで何か別のトラップが作動するという可能性もなくはないわ」
ビリーの意見に対してランダルとレガリーが慎重な意見を返すと、ビリーは、なるほどと言って頭をかく。
「…じゃあ私が、俯瞰の魔眼で壁の先を確認してこようか?」
キリエがそう提案する。
「先生、今回ばかりはこんな状況ですし、キリエさんにお願いした方がいいと思いますが?」
「そうね。一度キリエさんに確認してきてもらいましょう」
「わかりました!」
嬉しそうにそう言うと、キリエの目が普段とは違う色に輝いた。
「確かに、これは魔眼の輝き…」
「じゃあ、見てきますからちょっと待っててくださいね」
そう言ったキリエはその場に立ったままだった。
「え、何、これどういう状況?」
見てくるといいながら、キリエは黙って立ったままだ。キリエの能力を詳しく知らないオリヴィアはそう突っ込んだ。
「まぁ、簡単に言っちゃうと、視覚を2つにする感じかな。ここの視界も見えてるけど、別の視界も見えてるみたいな?」
「へぇ~、なんか頭混乱しちゃいそうだね~…」
『おい、キリィ、思念体の方だけ話すことはできるな?』
『あ、マリーさん。はい、できます』
思念体の方のキリエが、迷路を飛んで進んでいると、横に並走するようにマリーとヒルダが現れた。
『へぇ、これが俯瞰の魔眼?初めて見たわ。不思議な感じね。私たちに似ている存在ね』
『うむ。一応、私たちも一緒に行ってやる』
『そうね。1人より3人の方が何か気付けるかも知れないし』
ヒルダがウインクする。
『ありがとうございます!心強いです』
『しかし地下にこんな場所が広がっているとは知らんかったのぉ。人間とは色々考えるものじゃ』
『魔法鉱石の採掘跡を利用してるのよね?』
『そうみたいですね~。あ、この辺ですね、地図の場所は。うーん、私にはよくわからないですけど…?』
キリエが壁の辺りを確認するが、見た目にはよくわからない。
『いや、見ろ。若干じゃがこの辺りの壁だけ新しい。それにほれ、わずかに継ぎ目があるぞ』
マリーが継ぎ目の辺りを指差す。
『えぇ?わかりませんけど…よくわかりますね。ルーシィもよくわかったなぁ』
『それに微量じゃが魔力が残っておる。これは魔法で人工的に作られた壁じゃ』
『確かにそうね。でも魔力がまだ残ってるってことは、作られてからまだそんなに経ってないわね』
『どのくらいの厚さがあるんですかね?』
『それは向こうに行ってみないと何とも言えんが…キリィ、お前の魔眼は俯瞰の魔眼じゃったな…恐らくその目を使えば、実際に行かずとも見ることができるんじゃないか?』
『え、どういう意味ですか?』
『何ていうんじゃろ、それこそ上から見下ろす感じ?空から俯瞰できるんじゃったら、できると思うんじゃんが?』
『うぅーん?』
『あれじゃない?要は断面図みたいな感じよね?この上にある天井だけを透かして見るみたいな』
『あー、なるほど。ちょっと試してみますね』
キリエは意識を上方へと飛ばし、意識だけ地下迷宮から脱した。そこは森の中だった。
『わぁ、現在地ってこの辺りなんだ。さてと…うーん…こうして…こう?ちがうな…こう、あっ、できた!すごい!』
キリエが見ると、天井を取っ払って上から迷路を眺めている感じの光景だった。
『できたか。よくやった。そういう見方は私らじゃできんからな』
『そうね、魔眼ならではって感じね』
『で、どんな感じじゃ?』
『そうですね。人の厚みくらいの壁がありますが、先の通路は無事です』
『なるほどな。とりあえずは良いな。キリィ、視界をこっちに戻して、壁の向こう側に回って詳しく調べるぞ』
『はい!』
3人は壁の向こう側に立って、壁を調べる。
『特に時限式魔法などの類は仕掛けられてないみたいね?』
『そうじゃな。ただの足止めのための障壁だったようじゃな』
『一応、第2階層まで確認して見ますか?』
『そうじゃな、その方が良いじゃろうな』
「確認してきました!」
しばらくただそこに立ち尽くし、沈黙を続けていた(実体の方の)キリエだったが、急に意識が戻ったかのように喋り出した。
「わっ、びっくりしました!」
「あ、戻ってきた。おかえり~」
キリエの近くにいたライムとシャルロッテが反応する。
「キリィ、お疲れ。で、どうだった?」
シアンがキリエをねぎらい、尋ねる。
「うん、壁が作られてたけど、特に仕掛けはなかったよ。先の通路とか階段は無事だったから、壁さえなんとかできれば、第2階層に進めるよ」
「そう、それは朗報ね」
「しっかし、すごい不思議な能力だね」
ライムが興味深そうにキリエを見つめる。
「うん、使ってる自分でも不思議な感覚でまだ慣れないけど、みんなの役に立てたなら良かったよ。それがこの魔眼をくれた妖精さんとの約束だからね」
「え…キリエさんは、その魔眼を後天的に手に入れたのですか?」
リサが驚いて尋ねる。
「はい、つい最近です。アルゴスっていう妖精がくれたんです」
「アルゴス…!?」
「先生、知ってるんですか?」
シアンが尋ねる。
「えぇ…魔眼の主アルゴス。目的はわからないけど、魔法使いにランダムに魔眼という能力を与えている張本人よ」
『あいつに目的なんてあるのか?』
『無いんじゃない?ただ楽しんでるだけでしょ』
そんな会話がルーシッド達にだけは聞こえてきて、思わず吹き出しそうになってしまう。
「大抵は先天性、つまり生まれた時に発現するんだけど、まれに後天的に魔眼を保有する人がいると聞いたことはあるけど…しかもキリエさんの言い方だと、アルゴスと会話して、直接もらったのかしら?」
「はい。アルゴスさんの方から話しかけてきて、俯瞰の魔眼をあげるけど、私利私欲のために使ったら失明するからね、って言われました」
「まぁ、それだけの魔眼だものね。代償はあるということね…大事に使うといいわ」
「はい!」
「えぇ、じゃあ覗きとかに使ったらダメってことー?」
「そんなやつは失明しちゃえばいいよ。てか、キリィはそんなことに使わないでしょ。オリーじゃないんだから」
くだらないことを言うオリヴィアにあきれたように突っ込むフェリカ。
「ちょっ、リカぁ?ひどくない、私もしないし!」
「どうかしら…あなた私の…」
「わぁ!ヘティー!なし!この話はなーしっ!」
皆がそのやり取りを見て笑う。少し場の空気が明るくなった。
「さぁさぁ皆さん、キリエさんのお陰で壁について調べることができました。後は、壁をどのようにして突破するのかを考えましょう」
「その役、僕にやらせてくれないか?」
名乗りを上げたのはジョン・ブラウンだった。
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