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第9章 パーティー対抗戦編
パーティー対抗戦⑦ 戦況③ ルーン魔法
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ヒルダはキリエに連絡を取る。
「キリィ、ごめんなさい。旗を取り損ねたわ。伏兵がいたみたい。周囲を探してみるから、あなたも探してみてくれる?」
『えっ、伏兵ですか?こちらこそ、ごめんなさい。俯瞰の魔眼で見た時は、2人しかいなかったんですが…』
「仕方ないわ。俯瞰の魔眼だって、視野が変わるだけで普通の目だもの。物陰に隠れたりすれば上手く見つけられない時もあるわ。それに、キリエの場合は上から全体を見ているんだから。とにかくよろしくね」
ヒルダはアヤメとラコッテの2人をその場に残し、足早にその場を立ち去った。
「何とか上手くいきましたね~」
「うん、でもキリエちゃんの魔眼で監視されてるから、しばらくは動けないね」
ラコッテはちらりと頭上を見て言った。そこにはビリーが隠れていることだろう。
木の上に隠れているビリーもそのことは十分理解していた。ビリーは試合開始と同時に自陣が見渡せる木の上に身を隠した。キリエ対策はもちろんであるが、下の2人がピンチになった時の伏兵として上から援護するためだ。
魔法使いの場合、1対1の決闘は単純明快である。相手より早く魔法詠唱を行い、相手より早く魔法を発動させることである。
いかに属性による有利不利があるとはいえ、それは魔法同士の話である。例えば風の魔法で吹き飛ばされないように土の魔法で壁を作って防御する。これは風の魔法が先に発動されてしまい、もはや逃げる時間がない場合には有効である。
しかし、相手より確実に早く魔法を発動できるのであれば、事前に壁を作ってわざわざ相手の魔法を受けるための魔法に魔力と詠唱時間を割くよりも、相手の足元の地面を揺らしたり、隆起させたり陥没させたりするなどして攻撃した方が良いのである。
しかし、1対1の決闘でない限りは、そもそも1対1で戦う状況を避けるということが魔法使いにとっては何より大事である。魔法詠唱を邪魔されないこと、魔法詠唱文から魔法を読まれないことは魔法使いにとっては大きな利点となる。ゆえに少し卑怯に思えるかも知れないが、このように隠れたところから魔法を詠唱して、確実に魔法を発動するのが一番有効なのである。
ビリーは、フェリカがその場を去ったのを見て、一つ大きく息を吐いた。
しかし、その瞬間のことだった。左右から2つの影が木の枝に飛び乗ってきた。
「な…しまっ……!」
ビリーがその影が誰かを認識して、対処しようとしたときにはすでに遅かった。
リリアナとクリスティーンはビリーから一瞬で旗を奪い、その場を離れた。
2人の背中からは炎の翼が生えていた。
鮮やかな手際で旗を見事に奪った2人は、ビリーに反撃の隙を与えることなく、すぐにその場を飛び去ったのだった。
敵陣を離れ、周囲を見回っていたヒルダは先ほどのルーン魔法についてフェリカに説明していた。
「あなたが使えるかもしれないと言って、ルーシィに改良してもらったこの魔法具はすごいわね。これなら紙やペンが無くてもルーン文字が刻めて、それと同時に魔力が流せるわ。まぁそれもこれもあなたの魔力のお陰だけど」
今回の対抗戦を前に、フェリカはルーシッドにあるお願いをしていた。ルーシッドからもらったスマホ型魔道具を、ルーン魔法用に改良してもらえないかというお願いだ。
通常、ルーン魔法は事前に物品にルーン文字を書き込むことによって力を発揮するものだ。かつて使われていた有名なものだと、ルーンが刻まれた盾や防具、護符などがある。
フェリカの場合は事前にルーン文字を記したカードをストックしておくことによって、ルーン魔法を発動していた。
しかし、事前に何のルーン魔法を使うか分かっているような状況ならともかく、今回のようなその場でどんな魔法を使うか判断しなければならないような状況では、カードをめくって相応しいカードを探すといった手間はかなりの時間のロスとなるし、相手に隙を見せることにもなる。せっかくの詠唱しなくても魔法を発動できるというルーン魔法の利点を上手く活かしきれていなかったのだ。
そこでそのことをヒルダに相談したところ、確かにルーン魔法は文字を何かに刻む必要があるが、それは事前に行う必要はなく、条件さえ整えばその場で刻んでも問題ないということだった。そこで思いついたのが、スマホ型魔道具のメール機能だった。メール機能では、スマホ型魔道具に手で文字を書くと、それが文章になる。それを使ってルーン文字を書くことはできないだろうかと考えたのだ。それで、ヒルダとルーシッドと相談しながら、スマホ型魔道具をフェリカ用に改良したのだ。
『実際には文字を血で刻まないといけないんでしたっけ?』
フェリカがヒルダに尋ねる。
「確かに、ルーン魔法の発動に必要なのは自分の血を魔力に混ぜ込むことよ。その1つの方法としては、あらかじめ自分が書いた血の文字をなぞるようにして魔力を流すという方法があるわ。でも実際には、体内で血を魔力に混ぜ込むことが可能よ。まぁ、その過程については文献には残していないけど。
その方法を使えば、普通の紙とペンでもルーン魔法を発動することができるわ。あなたの血の色の魔力は非常に特殊な魔力で、血が混じっていないのに血が混じっている気配がする。だからきっと、私の神族の妖精たちも勘違いしてしまって、ルーン魔法が発動できたんでしょうね」
『なるほど、そうだったんですね。そういえば、さっきルーン文字を書くとき、文字を重ねて書いてましたよね?あれはどういう意味ですか?』
「あれは『ルーン・ガルドゥル』という方法よ。ルーンは一文字一文字に意味があるのは知ってるわよね?しかも1つに複数の意味を持たせているわ。だから、妖精言語よりも短い言葉で力を発揮できるわ。でも複数の意味がある分、一文字で使ったときに漠然とした効果しか現れないものもあるの。例えば、さっき使ったᚦは『遅延のルーン』で『巨人、イバラ、門』などの意味があって、単体で使えば相手の行動を抑制したり、動きを妨害したりすることができるわ。でも今回は、その中の『イバラ』の意味で使いたかったから、『豊穣』を意味するᛝと組み合わせて使ったってわけ。こういう風に2つ以上の文字を組み合わせることで、色々なルーン魔法を発動させるのが『ルーン・ガルドゥル』よ」
『へぇ、そんな方法が!組み合わせがわかっていればすごい便利ですね!』
「でしょ?ルーン魔法こそ最強の魔法よ。全くどうして主流派にならなかったのかしら」
ヒルダはため息をついて首を横に振った。
『ははは。でも前から不思議だったのは、どうして魔力が合致していなくても、色々な属性の魔法が使えるんですか?』
「だって、ルーン魔法にお菓子は必要ないもの。私の神族の妖精に言って手を貸してもらってるだけだから、魔法の発動に魔力そのものは必要ないのよ。ね、便利でしょ?」
『……多分、ルーン魔法が主流派にならなかったのって、そういうところじゃないですかね…』
ヒルダが妖精界においてどういう存在なのか少しだけわかった気がしたフェリカだった。
それとも、神位の妖精というのはこういう人たちばかりなのだろうか?
そう、ルーン文字やルーン魔法が主流派になれなかった1つの理由はここにあった。ルーン魔法はヒルダがある種強引に自分の神族の妖精たちを使って発動させている魔法だ。妖精たちも暇なときは別に付き合ってやってもいいという感じだが、ルーン魔法を使用する人が多くなってくると面倒くさくなってヒルダの目を盗んでサボったり、お菓子という見返りがある普通の魔力を使った魔法と被った場合にはそちらを優先したりしていた。
特に、他の魔法では発動できないようなルーン魔法独特の魔法などならともかく、ᚲ(火の魔法)やᛚ(水の魔法)、ᛁ(氷の魔法)などを発動するのは神族に属しているとはいえ、低位の妖精や中位の妖精だ。
最大勢力のグリーク神族ほどではないにしろ、ノルディック神族の妖精も通常の詠唱によって呼ばれることもある。
もちろんこれらの不合理な点はルーン文字が主流となれば改善されていったかもしれないが、そうなる前にルーン文字とルーン魔法は歴史の表舞台から割と早々に消えていったのだった。
しかし今やそのルーン魔法を使うのは、フェリカ1人である。それゆえに、ルーン魔法が使い放題という状況であった。だが、ヒルダのこの裏話を聞いてちょっと使うのを自重した方がいいのかな、と思ってしまったフェリカだった。
「キリィ、ごめんなさい。旗を取り損ねたわ。伏兵がいたみたい。周囲を探してみるから、あなたも探してみてくれる?」
『えっ、伏兵ですか?こちらこそ、ごめんなさい。俯瞰の魔眼で見た時は、2人しかいなかったんですが…』
「仕方ないわ。俯瞰の魔眼だって、視野が変わるだけで普通の目だもの。物陰に隠れたりすれば上手く見つけられない時もあるわ。それに、キリエの場合は上から全体を見ているんだから。とにかくよろしくね」
ヒルダはアヤメとラコッテの2人をその場に残し、足早にその場を立ち去った。
「何とか上手くいきましたね~」
「うん、でもキリエちゃんの魔眼で監視されてるから、しばらくは動けないね」
ラコッテはちらりと頭上を見て言った。そこにはビリーが隠れていることだろう。
木の上に隠れているビリーもそのことは十分理解していた。ビリーは試合開始と同時に自陣が見渡せる木の上に身を隠した。キリエ対策はもちろんであるが、下の2人がピンチになった時の伏兵として上から援護するためだ。
魔法使いの場合、1対1の決闘は単純明快である。相手より早く魔法詠唱を行い、相手より早く魔法を発動させることである。
いかに属性による有利不利があるとはいえ、それは魔法同士の話である。例えば風の魔法で吹き飛ばされないように土の魔法で壁を作って防御する。これは風の魔法が先に発動されてしまい、もはや逃げる時間がない場合には有効である。
しかし、相手より確実に早く魔法を発動できるのであれば、事前に壁を作ってわざわざ相手の魔法を受けるための魔法に魔力と詠唱時間を割くよりも、相手の足元の地面を揺らしたり、隆起させたり陥没させたりするなどして攻撃した方が良いのである。
しかし、1対1の決闘でない限りは、そもそも1対1で戦う状況を避けるということが魔法使いにとっては何より大事である。魔法詠唱を邪魔されないこと、魔法詠唱文から魔法を読まれないことは魔法使いにとっては大きな利点となる。ゆえに少し卑怯に思えるかも知れないが、このように隠れたところから魔法を詠唱して、確実に魔法を発動するのが一番有効なのである。
ビリーは、フェリカがその場を去ったのを見て、一つ大きく息を吐いた。
しかし、その瞬間のことだった。左右から2つの影が木の枝に飛び乗ってきた。
「な…しまっ……!」
ビリーがその影が誰かを認識して、対処しようとしたときにはすでに遅かった。
リリアナとクリスティーンはビリーから一瞬で旗を奪い、その場を離れた。
2人の背中からは炎の翼が生えていた。
鮮やかな手際で旗を見事に奪った2人は、ビリーに反撃の隙を与えることなく、すぐにその場を飛び去ったのだった。
敵陣を離れ、周囲を見回っていたヒルダは先ほどのルーン魔法についてフェリカに説明していた。
「あなたが使えるかもしれないと言って、ルーシィに改良してもらったこの魔法具はすごいわね。これなら紙やペンが無くてもルーン文字が刻めて、それと同時に魔力が流せるわ。まぁそれもこれもあなたの魔力のお陰だけど」
今回の対抗戦を前に、フェリカはルーシッドにあるお願いをしていた。ルーシッドからもらったスマホ型魔道具を、ルーン魔法用に改良してもらえないかというお願いだ。
通常、ルーン魔法は事前に物品にルーン文字を書き込むことによって力を発揮するものだ。かつて使われていた有名なものだと、ルーンが刻まれた盾や防具、護符などがある。
フェリカの場合は事前にルーン文字を記したカードをストックしておくことによって、ルーン魔法を発動していた。
しかし、事前に何のルーン魔法を使うか分かっているような状況ならともかく、今回のようなその場でどんな魔法を使うか判断しなければならないような状況では、カードをめくって相応しいカードを探すといった手間はかなりの時間のロスとなるし、相手に隙を見せることにもなる。せっかくの詠唱しなくても魔法を発動できるというルーン魔法の利点を上手く活かしきれていなかったのだ。
そこでそのことをヒルダに相談したところ、確かにルーン魔法は文字を何かに刻む必要があるが、それは事前に行う必要はなく、条件さえ整えばその場で刻んでも問題ないということだった。そこで思いついたのが、スマホ型魔道具のメール機能だった。メール機能では、スマホ型魔道具に手で文字を書くと、それが文章になる。それを使ってルーン文字を書くことはできないだろうかと考えたのだ。それで、ヒルダとルーシッドと相談しながら、スマホ型魔道具をフェリカ用に改良したのだ。
『実際には文字を血で刻まないといけないんでしたっけ?』
フェリカがヒルダに尋ねる。
「確かに、ルーン魔法の発動に必要なのは自分の血を魔力に混ぜ込むことよ。その1つの方法としては、あらかじめ自分が書いた血の文字をなぞるようにして魔力を流すという方法があるわ。でも実際には、体内で血を魔力に混ぜ込むことが可能よ。まぁ、その過程については文献には残していないけど。
その方法を使えば、普通の紙とペンでもルーン魔法を発動することができるわ。あなたの血の色の魔力は非常に特殊な魔力で、血が混じっていないのに血が混じっている気配がする。だからきっと、私の神族の妖精たちも勘違いしてしまって、ルーン魔法が発動できたんでしょうね」
『なるほど、そうだったんですね。そういえば、さっきルーン文字を書くとき、文字を重ねて書いてましたよね?あれはどういう意味ですか?』
「あれは『ルーン・ガルドゥル』という方法よ。ルーンは一文字一文字に意味があるのは知ってるわよね?しかも1つに複数の意味を持たせているわ。だから、妖精言語よりも短い言葉で力を発揮できるわ。でも複数の意味がある分、一文字で使ったときに漠然とした効果しか現れないものもあるの。例えば、さっき使ったᚦは『遅延のルーン』で『巨人、イバラ、門』などの意味があって、単体で使えば相手の行動を抑制したり、動きを妨害したりすることができるわ。でも今回は、その中の『イバラ』の意味で使いたかったから、『豊穣』を意味するᛝと組み合わせて使ったってわけ。こういう風に2つ以上の文字を組み合わせることで、色々なルーン魔法を発動させるのが『ルーン・ガルドゥル』よ」
『へぇ、そんな方法が!組み合わせがわかっていればすごい便利ですね!』
「でしょ?ルーン魔法こそ最強の魔法よ。全くどうして主流派にならなかったのかしら」
ヒルダはため息をついて首を横に振った。
『ははは。でも前から不思議だったのは、どうして魔力が合致していなくても、色々な属性の魔法が使えるんですか?』
「だって、ルーン魔法にお菓子は必要ないもの。私の神族の妖精に言って手を貸してもらってるだけだから、魔法の発動に魔力そのものは必要ないのよ。ね、便利でしょ?」
『……多分、ルーン魔法が主流派にならなかったのって、そういうところじゃないですかね…』
ヒルダが妖精界においてどういう存在なのか少しだけわかった気がしたフェリカだった。
それとも、神位の妖精というのはこういう人たちばかりなのだろうか?
そう、ルーン文字やルーン魔法が主流派になれなかった1つの理由はここにあった。ルーン魔法はヒルダがある種強引に自分の神族の妖精たちを使って発動させている魔法だ。妖精たちも暇なときは別に付き合ってやってもいいという感じだが、ルーン魔法を使用する人が多くなってくると面倒くさくなってヒルダの目を盗んでサボったり、お菓子という見返りがある普通の魔力を使った魔法と被った場合にはそちらを優先したりしていた。
特に、他の魔法では発動できないようなルーン魔法独特の魔法などならともかく、ᚲ(火の魔法)やᛚ(水の魔法)、ᛁ(氷の魔法)などを発動するのは神族に属しているとはいえ、低位の妖精や中位の妖精だ。
最大勢力のグリーク神族ほどではないにしろ、ノルディック神族の妖精も通常の詠唱によって呼ばれることもある。
もちろんこれらの不合理な点はルーン文字が主流となれば改善されていったかもしれないが、そうなる前にルーン文字とルーン魔法は歴史の表舞台から割と早々に消えていったのだった。
しかし今やそのルーン魔法を使うのは、フェリカ1人である。それゆえに、ルーン魔法が使い放題という状況であった。だが、ヒルダのこの裏話を聞いてちょっと使うのを自重した方がいいのかな、と思ってしまったフェリカだった。
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