魔法学院の階級外魔術師

浅葱 繚

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第9章 パーティー対抗戦編

パーティー対抗戦⑥ 戦況② ヒルダ(フェリカ)VSラコッテ&アヤメ

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『いました。あれですね』

フェリカがヒルダに話しかける。今はヒルダがフェリカの体を借りている状態で、フェリカは思念体のように外に押し出されているというよりは、体の奥に入って表面に現れていないような感じなので、心の中で発している声に近いものだ。同じ体を使っているヒルダにしかこの声は聞こえていない。

「特に目立った仕掛けはないわね?やる気あるのかしら?」

『どうするんですか?』
「あんなもん、正面突破よ」
『えぇ…』
戦略も何もないヒルダの回答にびっくりするフェリカ。
『私の体なんですから無茶しないでくださいよ…』

「まぁまぁ、この際だからルーン魔法について教えてあげるから」
『え、本当ですか?やったぁ!』
「まぁ、まずは実際やってみるわね」

そう言うと、ヒルダはスマホ型魔術具『リムレット』を取り出した。
そして、その画面に2つのルーン文字を刻む。

ᚦᛝソーング(イバラよ、地面から生え出よ)

そして、ルーン文字を刻んで、その効果が表れる前にヒルダは進み出た。

「わっ!ふぇ、フェリカさん!?」

突然の攻撃に驚いてあたふたするラコッテとアヤメ。
2人が行動を起こす前にルーン魔法の効果が表れる。
出来上がったのはイバラの壁だ。旗へと続く道を示すように、左右に立ちはだかるようにして地面からバキバキと音を立てながらイバラが生え出て、イバラの道が形成される。
そして、左右から生え出たイバラは上でアーチを描くように絡み合い、イバラのトンネルとなる。
そのイバラのトンネルをヒルダはゆっくりと進む。

「イバラ…!?ヘンリエッタさんかよ~…!」
「そ、それなら…!」

ラコッテが火の魔法を唱える。イバラに火を付けて燃やしてしまおうということだろう。

ラコッテは『焼き土色』という少し特殊な配合の茶色で、基本属性数コンポーネントは赤黄黒の3である。
基本属性数コンポーネントが3ということは3種類の属性魔法、組み合わせ次第では混合魔法も合わせれば7種類くらい使えて便利と思うかもしれないが、当然その分純度ピュリティが下がるので、それぞれの魔法のレベルや使用時間などは下がる。特にラコッテはCランクということもあり、どの魔法も中途半端で強力な魔法が使えないというのが悩みの種であった。


「生きている草木はそんな簡単には燃えないわよ。まぁでも一応妨害しておこうかしら?」

ラコッテの詠唱を聞いて、相手の手の内を理解したヒルダは次のルーン文字を刻む。


ᛚᛇラーギュル(水よ、防壁となれ)


すると、ラコッテが火の魔法で攻撃している側から水が噴水のように噴き出して、壁を作る。
それによって、ラコッテの火は完全に消化される。

「草木の魔法の次は水の魔法?フェリカさんがどうして…?」

敵の妨害をものともせず、悠々と旗に向かって進んでいくヒルダ。

「じゃあ、悪いけど旗はもらっていくわね」

ヒルダが旗を取ろうとしたその時だった。
今度は地面が隆起し、ヒルダの行く手を阻む。ラコッテが次の魔法、土の魔法を唱えたのだ。
火の魔法を打ち消されてから咄嗟に状況を判断し、次の魔法の詠唱を完成させた。なかなかの詠唱速度と判断力だ。

「なかなかやるじゃない?でも甘いわ」


ハガル(吹き飛べ)


その一言で、土の壁は吹き飛んだ。

「そ、そんな…!」

「あら…?」
しかし、土の壁の先にあったはずの旗がそこにはなかった。
「まさか今ので吹き飛ばしちゃった?」

だが、旗を破壊してしまった場合は、審判から反則のコールがかかるはずである。
しかし、何のコールもない。

「ということは…もう1人味方がいて土の壁で隠しているうちに旗を持ち去った……ふぅん…やるじゃない…?」
ヒルダがにやりと笑った。


そう、実はビリー・ジェンクスが木の上に隠れていたのだ。

ビリーは深緑の魔力で、風の魔法を最も得意とする魔法使いだ。
ビリーは風の制御、すなわち風の操作魔法が非常に優れていた。自身で発生させた風を足場にして、高いところにも自在に昇り降りできるビリーにとって、木が生い茂るこのような森林は身を隠しながら行動できるまさに打ってつけの場だった。
木の上に隠れていたために、キリエの俯瞰の魔眼ホートスコピーでも上手く探すことができなかったのだ。

あらかじめ決めていた通り、土の壁の発動と同時に旗を死守したビリーは、すぐにまた木の上に登って静かに身を隠していた。


危なかったぜ…あとはこのまま諦めて帰ってくれればいいんだが…


しかし、ビリーはあることに気づいていなかった。


ビリーが旗を取って木の上へと戻っていく様子は、正面からは土の壁に隠れて見えなかったかも知れないが、横からはしっかりと確認することができた。

そして、この場にいたのはフェリカだけではなかった。
横からその様子を観察していたリリアナとクリスティーンは、静かに顔を見合わせてうなずき合った。
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