魔法学院の階級外魔術師

浅葱 繚

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第9章 パーティー対抗戦編

パーティー対抗戦⑨ 中間報告

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試合開始から1時間ほどが経過しようとしていた。だいたい試合時間の3分の1が終わったあたりだ。
リサとリスヴェル、そしてシシルは現在の状況について話していた。

「ここまでのところルール違反はなしだな。フェアプレーで素晴らしい」
シシルが感心して言った。
「はい。それぞれのパーティーの旗の本数は、今のところ、シアンのところが0本、キリエのところが3本、ジョンのところが1本、ヘンリエッタのところが1本、ランダルのところが0本…ですね。やはりキリエのパーティーが少し戦力的に強すぎましたかね…?」
リサが不安そうに尋ねる。
「まぁ戦力的に強いのは間違いないね。キリエの目のお陰もあって、それぞれが単独で敵陣に攻めているし。それができるだけの個々の能力も大したものだよ」
リスヴェルはふっと笑いながらそう言った。



リスヴェルの手には大きなガラス板のような魔法具があり、リサとリスヴェルはそれを見ながら話していた。
そこにはなんと動く画像が映し出されていた。その画像は今実際に試合を行っている生徒たちのもので、今はちょうどルビアがシアン達のパーティーの旗を奪ったところを映し出していた。

そう、これはリスヴェルが作った離れている場所の映像を受信する魔法具だった。ルーシッドの魔力波とはまた違った方法で情報を送受信している。

魔法使いたちは魔力に色がついており、魔力と魔力が混ざることで色が変わるということから、古くから色の混色法には気づいていた。
色の混色方法には加法混色と減法混色の2種類があり、加法混色は光の三原色としても知られているもので、色を足していくと白に近づいていく。一方で絵具などは減法混色であり、色を足していくと黒に近づいていく。
魔力の色の混色は減法混色であり、一般的に行われている染色方法も全て減法混色である。

リスヴェルは光の性質について理解していた。私たちが目で捉えているのが、物体が反射した光の波長であるということ。光をプリズムで分解すると色々な色に分解できるということなどである。
そこでリスヴェルは『光の操作魔法』によって、白い光だけではなく、それらを分解した赤・青・黄の光を操作する魔法式を開発した。これによって、レンズで捉えた光を一度分解し、操作魔法によって他の場所でその光を発することによって、遠くの場所の映像を映し出すカメラのような魔法具を作り出したのだった。
ちなみにカメラはリスヴェルの魔法人形につけられているため、リスヴェルが『魔法の糸』で自由に操作することができる。

さらに言えば、リスヴェルは音の性質についても理解しており、魔法の糸の振動によって音を送受信するいわば『魔法の糸電話』のような魔法具も開発していた。これは魔法人形を動かしている魔法の糸と併用している。

これによってリスヴェルはルーシッドとは違った切り口。魔法を使ったによって、離れたところから映像と音をやり取りする魔法具を完成させたのだった。


この魔法具をルーシッドに見せた時、ルーシッドはその発想の素晴らしさにただただ脱帽し、最上級の賛辞を贈った。やはりあなたは天才だと。

この魔法具が世に発表されれば、世界の歴史は大きく変わるだろう。
しかし、リスヴェルはしばらくは発表する気はないと言った。
それは今の自分の立場のこともあるし、それに何よりこの魔法具もやはり普通の魔法具ではなく、古代言語式魔法回路ハイエイシェントマジックサーキットを使用したものなので、現段階での公表は考えていないということだった。
ルーシッドは、自らが開発している無色の魔力と古代言語を使った『魔道具』や、自分が考えた新技術の魔法具のことを思い出し、自分の境遇と重ねたのだった。
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