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第9章 パーティー対抗戦編
パーティー対抗戦⑪ 戦況⑥ 再びルーシッド
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「……というわけで、ごめんね。旗を取られちゃった…」
キリエはスマホ型魔道具のトーク機能で、パーティーメンバーに事情を説明していた。
「気にしないで、キリエ。相手がミスズじゃ仕方ないわ。あれは何かちょっとルーシィとは違う意味でチート臭いから」
ルビアが慰める。
「そうよ、あなたは良くやってるわ。戦において一番大変なのは軍師だもの。それに今から私が旗を取るから問題ないわ。それでまた一位よ」
ヒルダもそう言って励ました。
「てことは、今旗を所持してるのは、私とルビィとリリー、あとはスズにヘティーさんか…」
ルーシッドは独り言のようにぶつぶつと言った。
「多分、ヘティーさんとこのメンバーは、ヘティーさんが準備した迷彩マントを羽織ってる。それで俯瞰で見てもわからなかったんだと思う。ヘティーさんとオリーも同じ感じでどこかに隠れてるんじゃないかなぁ?それとも地下かな?うーん、わかんない…」
キリエが分析する。
「そうね…確かな場所がわからなないから何ともしようがないわね…」
ルビアは、うーんと唸る。
「キリィは引き続きリカとヒルダさんの援護をしながら、ヘティーさん達を探してみて」
「うん、わかった!」
ルーシッドにそう言われて、キリエは力いっぱいそう答えた。
「さて、このままやられっぱなしってのもね」
通信を切った後、ルーシッドはそうつぶやいた。
「どうしますか?」
それに対してエアリーが尋ねる。
「ちょっとだけキリィを助けてあげよう。
エアリー、術式:結晶探索
術式展開」
「了解しました」
以前、地下迷宮探索の際、リスヴェルを探した魔術は、薄く広く引き伸ばした無色の魔力を探したい方向に飛ばすことで対象物を見つける魔術だった。無色の魔力には『一定速度で進み、対象物にぶつかった場合同じ速度ではね返ってくる』という指令がプログラムされており、はね返ってきた魔力の形や量で障碍物の大きさを測り、はね返ってくる時間で距離を測るというものだった。現代のレーダーなどに似た方法である。しかし、この方法では対象物をすり抜けることはできないため、このような森林などの障碍物が多すぎる場所では、探したいものを上手く探すことは難しい。さすがのエアリーでも情報が多すぎて正確な計算ができないのだ。
しかし、ルーシッドはその際『この魔術では無理』なこともある、と言っていた。そう、ルーシッドに取って索敵の手段は1つではない。
今回使用した『結晶探索』は、魔法使いの位置を把握する専用魔術式だった。現代魔法使いなら誰もが持っている『結晶の指輪』を利用した魔術である。『結晶の指輪』は魔力を一点に集中し結晶化する働きがある。つまり、結晶の指輪は『魔力に反応し、吸収したり放出したりする特性』があるのである。これは『魔法石』や『鑑定の水晶』などにも共通する特性である。
『結晶探索』はこの特性を利用した魔術で、結晶の指輪に反応し、発見したら普通の探索と同様、同じ速度で戻ってくるように特殊な指令を与えた無色の魔力を、自分を中心に同心円状に放つことで魔法使いの位置を把握する魔術である。
これもルーシッドのとてつもない魔力生成速度と最大魔力量と、エアリーの情報処理能力があってこその術式と言える。
何度か無色の魔力を放ち、その情報をエアリーが処理する。
「探索終了しました。スマホ型魔道具に映します」
スマホ型魔道具には、ルーシッドを中心とした等間隔の同心円が描かれている。おそらく、距離を表しているのだろう。そして、そこにいくつかの点が付いていた。これが魔法使いの反応を表しているのだろう。
「なるほどね」
点しかないその画面を見ながら、ルーシッドは情報を分析する。何が誰を表しているかまではわからないので、位置関係から推測するしかない。
「よし、まずはヘティーさんから旗を奪いに行こう。やられたらやり返す。反撃開始だね」
ルーシッドの『静かな反撃』が今、始まる。
キリエはスマホ型魔道具のトーク機能で、パーティーメンバーに事情を説明していた。
「気にしないで、キリエ。相手がミスズじゃ仕方ないわ。あれは何かちょっとルーシィとは違う意味でチート臭いから」
ルビアが慰める。
「そうよ、あなたは良くやってるわ。戦において一番大変なのは軍師だもの。それに今から私が旗を取るから問題ないわ。それでまた一位よ」
ヒルダもそう言って励ました。
「てことは、今旗を所持してるのは、私とルビィとリリー、あとはスズにヘティーさんか…」
ルーシッドは独り言のようにぶつぶつと言った。
「多分、ヘティーさんとこのメンバーは、ヘティーさんが準備した迷彩マントを羽織ってる。それで俯瞰で見てもわからなかったんだと思う。ヘティーさんとオリーも同じ感じでどこかに隠れてるんじゃないかなぁ?それとも地下かな?うーん、わかんない…」
キリエが分析する。
「そうね…確かな場所がわからなないから何ともしようがないわね…」
ルビアは、うーんと唸る。
「キリィは引き続きリカとヒルダさんの援護をしながら、ヘティーさん達を探してみて」
「うん、わかった!」
ルーシッドにそう言われて、キリエは力いっぱいそう答えた。
「さて、このままやられっぱなしってのもね」
通信を切った後、ルーシッドはそうつぶやいた。
「どうしますか?」
それに対してエアリーが尋ねる。
「ちょっとだけキリィを助けてあげよう。
エアリー、術式:結晶探索
術式展開」
「了解しました」
以前、地下迷宮探索の際、リスヴェルを探した魔術は、薄く広く引き伸ばした無色の魔力を探したい方向に飛ばすことで対象物を見つける魔術だった。無色の魔力には『一定速度で進み、対象物にぶつかった場合同じ速度ではね返ってくる』という指令がプログラムされており、はね返ってきた魔力の形や量で障碍物の大きさを測り、はね返ってくる時間で距離を測るというものだった。現代のレーダーなどに似た方法である。しかし、この方法では対象物をすり抜けることはできないため、このような森林などの障碍物が多すぎる場所では、探したいものを上手く探すことは難しい。さすがのエアリーでも情報が多すぎて正確な計算ができないのだ。
しかし、ルーシッドはその際『この魔術では無理』なこともある、と言っていた。そう、ルーシッドに取って索敵の手段は1つではない。
今回使用した『結晶探索』は、魔法使いの位置を把握する専用魔術式だった。現代魔法使いなら誰もが持っている『結晶の指輪』を利用した魔術である。『結晶の指輪』は魔力を一点に集中し結晶化する働きがある。つまり、結晶の指輪は『魔力に反応し、吸収したり放出したりする特性』があるのである。これは『魔法石』や『鑑定の水晶』などにも共通する特性である。
『結晶探索』はこの特性を利用した魔術で、結晶の指輪に反応し、発見したら普通の探索と同様、同じ速度で戻ってくるように特殊な指令を与えた無色の魔力を、自分を中心に同心円状に放つことで魔法使いの位置を把握する魔術である。
これもルーシッドのとてつもない魔力生成速度と最大魔力量と、エアリーの情報処理能力があってこその術式と言える。
何度か無色の魔力を放ち、その情報をエアリーが処理する。
「探索終了しました。スマホ型魔道具に映します」
スマホ型魔道具には、ルーシッドを中心とした等間隔の同心円が描かれている。おそらく、距離を表しているのだろう。そして、そこにいくつかの点が付いていた。これが魔法使いの反応を表しているのだろう。
「なるほどね」
点しかないその画面を見ながら、ルーシッドは情報を分析する。何が誰を表しているかまではわからないので、位置関係から推測するしかない。
「よし、まずはヘティーさんから旗を奪いに行こう。やられたらやり返す。反撃開始だね」
ルーシッドの『静かな反撃』が今、始まる。
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