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第11章 クラス対抗魔法球技戦編
バトルボール②
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クラス対抗魔法球技戦もいよいよ3日目となった。今日の午前までに準決勝は全て終了し、午後からは決勝戦が行われていくこととなる。
ルーシッド達は、昨日まででストライクボールとエリアボールで決勝出場を決めていた。今日の午前に行われるバトルボールで勝てば、全ての競技で決勝戦に進むこととなる。もしそうなれば、1年生のクラスとしては初の快挙である。
その試合に出場する選手に関しては、試合会場の大きな掲示板に名前と魔力ランクが映し出されていた。その掲示板を見た生徒たちの間では1人の生徒の事が話題になっていた。
1年5クラス
バトルボール出場選手
フェリカ・シャルトリュー
魔力ランクD
そう、『魔力ランクF』という、いわば群を抜いたおちこぼれの存在であまり目立ってはいないが、このディナカレア魔法学院において、魔力ランクDという存在も極めて珍しい。それは、普通であれば、よほどのことがない限りDランクの生徒が魔法学院に合格することはできないからだ。
この魔法界において言えば、魔力ランクDは決して珍しくない。事実、魔法使い全体の約3割はこの魔力ランクDなのだ。魔力ランクCと合わせた割合は6割にのぼる。この魔法界の魔法使いのほとんどがランクCかDなのだ。
ランクBとランクCの差はかなり大きい。それは使える魔法の有無に関わってくる。しかし、ランクCとランクDの数値的な差はそこまで大きくはない。使える魔法は、一部の魔力の色による固有魔法を除いてほとんど変わりはなく、魔法の規模や使える長さに変わりがある程度だ。
しかし、入試の段階で魔力ランクである程度格付けが済んでしまう、この魔力ランク至上主義が根強いディナカレア魔法学院においては、CランクかDランクかは大きな差なのである。
普通であれば、Dランクと聞いただけで、『魔法は強くない』とみなされる。頭が良いか、支援系の分野が得意なのか、何かしらの強みはあるのだろうが、どうやっても攻撃系魔法に関しては得意ではないだろう、と考えられるのだ。
実際のところ、魔法の発動時間や規模、使える魔法の種類などが勝敗を左右する『決闘』や『魔法競技』などの分野に関しては、数値的には少しの差だとしてもCランクとDランクの違いは、勝敗に大きく表れるので、それも当然と言えるだろう。
それゆえに、1年5クラスの試合にDランクの選手が出るという情報は驚きだったのだ。普通に考えて、Dランクの選手が自分よりランクの高い魔法使いに混ざって、互角にやり合えるわけがないと考えたのだ。
それは試合を見に来ていた生徒会のメンバーの中でも同じであった。
試合の観戦に来ていた生徒会の会計シヴァ・フィースクルは、フェリカの名前を見てこう言った。
「フェリカ・シャルトリュー、こいつはルーシィ以上に分からんやつやな。この学院の入試では、摸擬戦の決勝トーナメントに進めたやつは、よほどのことがない限り合格確定や。しかしや、Dランクのやつがあの予選サバイバルを勝ち残れるなんてことあるわけない。どないせこい手つこたか知らんが」
「フェリカさんは勉強もそんなにできる感じじゃないし、もちろん不正を行ったとは思わないけど、予選通過は偶然もあったんじゃないかしら。現に決勝トーナメントは1回戦で何もせずにルーシィさんに敗戦していたわ」
それを聞いて、生徒会長のフリージアもそう言った。
「フェリカ君は、ルーシィ君とは別の意味で反則級の強さだよ?
私では全く歯が立たないね。純粋な魔法の強さで言えば学院最強かも知れないよ」
実際に戦ったことがあり、フェリカの事情を知っているマーシャは笑いながらそう言う。
「んなあほな!Sランクで魔法体術の使い手のマーシャさんがDランクに歯が立たないなんてあるわけない!」
「実際そうだから仕方ないね。ルーシィ君にしろフェリカ君にしろ、最近は魔力ランクなんてものがいかに当てにならないかということを思い知らされるよ」
マーシャは笑って肩をすくめながらそう答えた。
「おい、フェリカだって」
「Dランクなんか出してきて…私たちも舐められたものね…」
試合開始前、対戦チームが向かい合って挨拶をしている時に相手選手たちがそう言っているのが聞こえてきた。
「無知って恐ろしいわね」
「事実を知ってたら、恐ろしくてあんなこと言えないわね」
それを聞いていた5クラスの出場選手であるルビアとロイエが苦笑いする。
「ふん、くだらん…」
フェリカが言葉を発すると、形容できない威圧感がコートに漂う。
「またそのくだらん魔力ランクとやらか…
まぁよい、その戯れに付き合ってやろう。それで我が主フェリカの株が上がるならそれもまた良いじゃろう」
フェリカがにやりと不敵な笑みを浮かべる。
その発言の意味は理解できなかったが、相手選手はフェリカから発せられているとは到底思えない存在感に目を疑っていた。
当のフェリカ本人と言えば、今は深奥でその様子を見ているのだが、フェリカはこう思った。
あ、ダメだ
マリー、昨日私が言ったこと全然分かってない
フェリカがどうやって入学試験の模擬戦予選を通過したのかは、試合を実際に見ていた生徒たちや先生たちでさえ、誰一人として分からなかった。気づいたら、フェリカが残っていたという感じだった。サバイバル形式の予選ではフィールドの様々なところで攻防が繰り広げられているので、観戦している方は戦況がよくわからないこともあり、同士討ちなどもあり得るため、フェリカが勝ち残ったこともさほど気に留められることもなかった。Dランクが勝ち残るなんて、なんて運のいいやつだくらいにしか思われていなかったのだ。
実際のところ、入試当時にはヴァンパイアのマリーとオーディンのヒルダと契約しているわけではなかったので、模擬戦の予選を通過したのはフェリカ本人の実力である。それはフェリカの『ルーン魔法』によるものだった。
フェリカが模擬戦予選で唱えていたルーン魔法は『ᛉ』。意味は『友情、保護』。フェリカがそれを唱えたことで、相手選手はフェリカを攻撃対象から無意識のうちに外したのである。
フェリカはDランクであり、しかも特殊な結合の混色のため、通常の魔法は一切使うことができない。しかも、こう言ってはなんだが、勉強に関してもさほどできるわけではない。
しかし、フェリカは古代魔法『ルーン魔法』だけは使うことができた。フェリカはその特殊な魔法の力を駆使し、このディナカレア魔法学院に入学することができたのである。
そして、今やその特殊な魔力『血の色』のお陰で、神位の妖精2人の契約者である。
神位の妖精と契約するということがどういうことなのか、それを多くの人が知ることとなるのはもうすぐである。
1年生バトルボールの試合開始の合図が鳴った。
ルーシッド達は、昨日まででストライクボールとエリアボールで決勝出場を決めていた。今日の午前に行われるバトルボールで勝てば、全ての競技で決勝戦に進むこととなる。もしそうなれば、1年生のクラスとしては初の快挙である。
その試合に出場する選手に関しては、試合会場の大きな掲示板に名前と魔力ランクが映し出されていた。その掲示板を見た生徒たちの間では1人の生徒の事が話題になっていた。
1年5クラス
バトルボール出場選手
フェリカ・シャルトリュー
魔力ランクD
そう、『魔力ランクF』という、いわば群を抜いたおちこぼれの存在であまり目立ってはいないが、このディナカレア魔法学院において、魔力ランクDという存在も極めて珍しい。それは、普通であれば、よほどのことがない限りDランクの生徒が魔法学院に合格することはできないからだ。
この魔法界において言えば、魔力ランクDは決して珍しくない。事実、魔法使い全体の約3割はこの魔力ランクDなのだ。魔力ランクCと合わせた割合は6割にのぼる。この魔法界の魔法使いのほとんどがランクCかDなのだ。
ランクBとランクCの差はかなり大きい。それは使える魔法の有無に関わってくる。しかし、ランクCとランクDの数値的な差はそこまで大きくはない。使える魔法は、一部の魔力の色による固有魔法を除いてほとんど変わりはなく、魔法の規模や使える長さに変わりがある程度だ。
しかし、入試の段階で魔力ランクである程度格付けが済んでしまう、この魔力ランク至上主義が根強いディナカレア魔法学院においては、CランクかDランクかは大きな差なのである。
普通であれば、Dランクと聞いただけで、『魔法は強くない』とみなされる。頭が良いか、支援系の分野が得意なのか、何かしらの強みはあるのだろうが、どうやっても攻撃系魔法に関しては得意ではないだろう、と考えられるのだ。
実際のところ、魔法の発動時間や規模、使える魔法の種類などが勝敗を左右する『決闘』や『魔法競技』などの分野に関しては、数値的には少しの差だとしてもCランクとDランクの違いは、勝敗に大きく表れるので、それも当然と言えるだろう。
それゆえに、1年5クラスの試合にDランクの選手が出るという情報は驚きだったのだ。普通に考えて、Dランクの選手が自分よりランクの高い魔法使いに混ざって、互角にやり合えるわけがないと考えたのだ。
それは試合を見に来ていた生徒会のメンバーの中でも同じであった。
試合の観戦に来ていた生徒会の会計シヴァ・フィースクルは、フェリカの名前を見てこう言った。
「フェリカ・シャルトリュー、こいつはルーシィ以上に分からんやつやな。この学院の入試では、摸擬戦の決勝トーナメントに進めたやつは、よほどのことがない限り合格確定や。しかしや、Dランクのやつがあの予選サバイバルを勝ち残れるなんてことあるわけない。どないせこい手つこたか知らんが」
「フェリカさんは勉強もそんなにできる感じじゃないし、もちろん不正を行ったとは思わないけど、予選通過は偶然もあったんじゃないかしら。現に決勝トーナメントは1回戦で何もせずにルーシィさんに敗戦していたわ」
それを聞いて、生徒会長のフリージアもそう言った。
「フェリカ君は、ルーシィ君とは別の意味で反則級の強さだよ?
私では全く歯が立たないね。純粋な魔法の強さで言えば学院最強かも知れないよ」
実際に戦ったことがあり、フェリカの事情を知っているマーシャは笑いながらそう言う。
「んなあほな!Sランクで魔法体術の使い手のマーシャさんがDランクに歯が立たないなんてあるわけない!」
「実際そうだから仕方ないね。ルーシィ君にしろフェリカ君にしろ、最近は魔力ランクなんてものがいかに当てにならないかということを思い知らされるよ」
マーシャは笑って肩をすくめながらそう答えた。
「おい、フェリカだって」
「Dランクなんか出してきて…私たちも舐められたものね…」
試合開始前、対戦チームが向かい合って挨拶をしている時に相手選手たちがそう言っているのが聞こえてきた。
「無知って恐ろしいわね」
「事実を知ってたら、恐ろしくてあんなこと言えないわね」
それを聞いていた5クラスの出場選手であるルビアとロイエが苦笑いする。
「ふん、くだらん…」
フェリカが言葉を発すると、形容できない威圧感がコートに漂う。
「またそのくだらん魔力ランクとやらか…
まぁよい、その戯れに付き合ってやろう。それで我が主フェリカの株が上がるならそれもまた良いじゃろう」
フェリカがにやりと不敵な笑みを浮かべる。
その発言の意味は理解できなかったが、相手選手はフェリカから発せられているとは到底思えない存在感に目を疑っていた。
当のフェリカ本人と言えば、今は深奥でその様子を見ているのだが、フェリカはこう思った。
あ、ダメだ
マリー、昨日私が言ったこと全然分かってない
フェリカがどうやって入学試験の模擬戦予選を通過したのかは、試合を実際に見ていた生徒たちや先生たちでさえ、誰一人として分からなかった。気づいたら、フェリカが残っていたという感じだった。サバイバル形式の予選ではフィールドの様々なところで攻防が繰り広げられているので、観戦している方は戦況がよくわからないこともあり、同士討ちなどもあり得るため、フェリカが勝ち残ったこともさほど気に留められることもなかった。Dランクが勝ち残るなんて、なんて運のいいやつだくらいにしか思われていなかったのだ。
実際のところ、入試当時にはヴァンパイアのマリーとオーディンのヒルダと契約しているわけではなかったので、模擬戦の予選を通過したのはフェリカ本人の実力である。それはフェリカの『ルーン魔法』によるものだった。
フェリカが模擬戦予選で唱えていたルーン魔法は『ᛉ』。意味は『友情、保護』。フェリカがそれを唱えたことで、相手選手はフェリカを攻撃対象から無意識のうちに外したのである。
フェリカはDランクであり、しかも特殊な結合の混色のため、通常の魔法は一切使うことができない。しかも、こう言ってはなんだが、勉強に関してもさほどできるわけではない。
しかし、フェリカは古代魔法『ルーン魔法』だけは使うことができた。フェリカはその特殊な魔法の力を駆使し、このディナカレア魔法学院に入学することができたのである。
そして、今やその特殊な魔力『血の色』のお陰で、神位の妖精2人の契約者である。
神位の妖精と契約するということがどういうことなのか、それを多くの人が知ることとなるのはもうすぐである。
1年生バトルボールの試合開始の合図が鳴った。
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