魔法学院の階級外魔術師

浅葱 繚

文字の大きさ
124 / 153
第11章 クラス対抗魔法球技戦編

最終日午前終了

しおりを挟む
「アザリーさん、お疲れ様~」
席に戻ってきたアザレアを生徒会メンバーが笑顔で迎える。

コート上は準備が整い、2年生のエリアボール決勝が行われようとしていた。

「ありがとうございます。勝てるとは思ってませんでしたが、完敗でした」
「その割には随分と晴れやかな顔しとるな?」
「そうね~……うん。アザリーさん、良い顔になったわね~」
シヴァとフリージアがそう言うと、アザレアはきょとんとして言った。
「え、そ、そうですか?
ま、まぁ自分なりに今持ってる力は全部出し切れたので、潔く負けを認めれるかなと思います」
「実際よう頑張ったと思うで?あのクラスに勝てるやつなんか、同学年はおろか、この学院にはおらんやろ。今、コートで戦っとるあの全色の魔法使いかて無理やろ」

コートの方をちらっと見てシヴァが言う。
コートでは2年生のエリアボールの試合が進んでいた。ちょうど全色の魔法使いことサラ・ウィンドギャザーが先制点を取って歓声が起こっているところだった。

「へぇ、シヴァが他人を褒めるのは珍しいな」
「いやいや、いつも褒めちぎっとるやないか、ヴァン何ゆうてんねん、嫌やわー」
その様子を笑顔で見ながら席に着こうとすると、同じ1年生で生徒会カウンサルメンバーのマリン・デレクタブルと目が合った。

「おっ、お疲れ様」
マリンが恥ずかしそうにそう言うと、アザレアは少し驚いたような顔をしてから、すぐににっこりと笑って答えた。
「ありがとう、マリン」
「さっきの試合、その…すごかったわ。かっこよかった…」
「………ふふっ」
「わっ、笑わないでよ」
「ごめんごめん、ありがと、マリン。昨日のマリンだってかっこよかったわよ」

「うんうん、2人とも本当に成長したわね~」
フリージアは2人の様子を見て微笑んだ。
生徒会ギルドカウンサルは、もちろん全生徒の手本になれるように、本人自身の魔法力の強さも大事よ。それは人選の時も重視されるわ。
でも、それよりも大事なのは、自分自身が学院生活を楽しむことだと私は思うわ。自分自身が楽しめなきゃ皆の先頭に立って導くことはできないもの。
マリンさんもアザリーさんも、魔法の才能が素晴らしいことは間違いないわ。でも、マリンさんはルビアさんに対抗心剥き出しだったし、ちょっと周りが見えていないところがあったわ。アザリーさんはそうね、ちょっと生徒会カウンサルだと言う事を意識しすぎて硬くなりすぎていたと思うわ。
でも、今回の魔法球技戦を通して、2人ともだいぶ成長できたんじゃないかしら。やっぱり2人を生徒会カウンサルにしたのは正解だったわね~」
フリージアにそう言われて、少し恥ずかしそうに笑うマリンとアザレアだった。



「サリー、お疲れ。快勝だったね」
午前の試合が全て終わり、昼休みになった。ルーシッド達が食堂で休憩しているとサラ達がやってきたので、ルーシッドは手を振った。

「……なんか私の扱いが雑だった気がするんだけど?」
「え、なにが?」
「いえ、何でもないわ。ルーシィもお疲れ様。まぁエリアボールの優勝は予想通りと言えば予想通りよ。問題は午後のバトルボールね…」
サラは腕を組んでため息をつく。その様子を見てフランチェスカは静かに頷いた。
「えぇ、強敵です。でも、ルーシィが一緒に作戦を考えてくれたお陰で突破口は見えたわ。ありがとう。絶対に勝って見せる」
「まぁそれでも五分五分だと思いますけど」
「そういえばルーシィ達のクラスは…」
「ルーシィ!大変よ!」
突然自分の名前が呼ばれたので振り返ると、そこには血相を変えて走ってきたシアン・ノウブルの姿があった。
「あれ、アン?どうしたの?そんなに慌てて?」
「大変なの!控室に来て!」


シアンに連れられて控室に来ると、ライム・グリエッタが苦しそうにお腹を抑えて長椅子に横たわっていた。
「大丈夫?お昼に何か悪い物でも食べた?」
「うぅ~ん……」
「知り合いに魔法薬師ファルマジシャンがいるから呼んでこようか?魔法調薬ギルドファルマシストのギルド長ピシーさん。良い薬知ってると思うけど」
「あー、いやー、うーん……これはちょっとそういうレベルじゃないかなぁ…午後の試合は無理かなぁ…」
「えー、そう?うーん、まぁじゃあ控えの選手と交代するって伝えてくるよ。えーっと、控えの選手は…」
「る、ルーシィでいいんじゃない?」
「……え?」
「ルーシィもバトルボールの控え選手だよね?」
「いや、それはそうだけど。でも、数合わせで入れただけだから。私は出る気ないよ?魔法使えない人が出てもどうしようもないでしょ?」
「あら、土の魔法が使えないのにバトルボールに出場させてるのはどこのどいつよ?」
「え…いや、それとこれとは…」
ミスズが急に話に割って入ってきて驚くルーシッド。
「そ、そうだよ!それにまだ一度も試合に出てないのはルーシィだけだし!」
「……お腹痛いんじゃなかったの?」
起き上がっていつもの元気な声で話したライムにルーシッドが突っ込みを入れる。ライムはしまったという顔でお腹を押さえる仕草をする。
「なに?私に気を使ってくれてるの?私の事は気にしなくていいのに。動くのはそんなに得意じゃないんだよ。それに普段の実習ならともかく、さすがに試合で無色の魔術を使うわけにはいかないよ。魔術が使えないんじゃ私にはどうしようも…」
「いえ、ルーシィにならできるはずです」
そう言ってきたのは、エアリーだった。それはまったくの予想外だったので、ルーシッドは目を丸くしてエアリーの方を向いた。
「ルーシィがこの魔法球技戦のために作った魔法具の中に、まだ使われていない物があります。私の見たところ、あれは使物でした。以前その魔法具についてルーシィは確かに『で、の、のため』と言っていました。なのでは?」
「え、エアリー?」
エアリーはすました顔で立っていた。

「えぇい、まどろっこしい!ルーシィ、ライムに代わって次の試合に出て!総リーダー命令よ!」
「え、ちょっ、ちょっと、アンまで?なになに、どういうこと?」
「ルーシィ、今回の魔法球技戦、あなたはずっと裏方として私たちを支えてくれた。球技戦が始まる前からずっと、新魔法の開発、魔法具の作成、作戦立案、練習にも付き合ってくれて、魔力操作のコツも全部教えてくれた。あなたには本当に感謝してもしきれないわ。あなたのお陰で本当に楽しい。
でもね、1つだけ足りないものがあるの。私たち、あなたが戦ってるところが見たいの。そして、全種目優勝の瞬間はやっぱりあなたに直にコート上で感じて欲しい。それはこの球技戦一番の功労者である、あなたであるべきよ。これはクラスの総意よ。
最後にに付き合ってちょうだい、ルーシィ!」

「……そんな言い方ずるいなぁ…魔法が使えない私でもみんなの役に立てる分野があって十分楽しかったんだけどね。最後まで裏方で別に良かったのに。まぁ、総リーダーの命令なら仕方ないね。でも本当にいいの?1年生初の全種目優勝がかかった大事な最後の試合が私で?私が魔法が使えないってのは覆すことができない事実…」

「ふんっ、白々しいこと言わないでくれる?ルーシィ」
そう割って入ったのはルビアだった。

「あなたが魔法を使えないとしても、いえ、さらにその無色の魔術を使えないとしても、あなたのその知略のみで他を圧倒する力があることくらい、とっくに私たちにはバレてるのよ。用意周到なあなたのことだもの、当然無策で来たわけじゃないんでしょ?」
「それは褒められてるのかなぁ?」

そうは言ってもルーシッドはわかっている。
そしてルビアもわかっている。
それが最大限の信頼の証だということを。
だから、2人の顔が合った時、ルビアは不敵ににやりと笑ったのだ。


「まぁ、策はあるよ、もちろんね」


いよいよ、魔法球技戦の最終戦、バトルボール決勝が始まろうとしていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

襲ってきた王太子と、私を売った婚約者を殴ったら、不敬罪で国外追放されました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

五人姉妹の上から四番目でいつも空気だった私は少々出遅れていましたが……? ~ハッピーエンドへ走りたい~

四季
恋愛
五人姉妹の上から四番目でいつも空気だった私は少々出遅れていましたが……?

治癒魔法で恋人の傷を治したら、「化け物」と呼ばれ故郷から追放されてしまいました

山科ひさき
恋愛
ある日治癒魔法が使えるようになったジョアンは、化け物呼ばわりされて石を投げられ、町から追い出されてしまう。彼女はただ、いまにも息絶えそうな恋人を助けたかっただけなのに。 生きる希望を失った彼女は、恋人との思い出の場所で人生の終わりを迎えようと決める。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。

亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。 しかし皆は知らないのだ ティファが、ロードサファルの王女だとは。 そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

処理中です...