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第11章 クラス対抗魔法球技戦編
バトルボール1年決勝①
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「まさか選手として出てくるとは思わんかったな」
昼休みの生徒会ギルドホームは少しだけ慌ただしかった。
1年5クラスが午後から行われるバトルボールの試合の選手交代を伝えに来たのだ。選手交代自体は全く珍しいことではない。だが、その内容が問題だった。
出場選手
ライム・グリエッタに代わってルーシッド・リムピッド
「またあん時みたいにあのけったいな技を使う気やないやろな?
……いや、さすがに今回ばかりは審判も黙ってないか。やつの存在自体が不明やった入試ん時や、風紀ギルドと結託して、完全焼却をぶっ飛ばすっちゅう目的があった決闘の時とは話がちゃうで」
「……今回は『無色の魔力』は一切使わないそうよ。これと同じものを装着して出場すると言っていたわ」
そう言ってフリージアは机の上に円形の物体を置いた。
「……これは何や?」
「『発散の首輪』だと言っていたよ。我々が付けている『結晶の指輪』とちょうど逆の効果があるとか。これを装着して自分の魔力を生成しようとすると、魔力が発散されてしまい、上手く結晶化できず、魔法が発動できなくなるそうだよ。私も実際にやってみたが、確かにその通りだったよ」
ヴァンがフリージアの代わりに答えた。
「おいおい、何やそれ…。そんな魔法使いにとって致命傷とも言えるアイテムがこの世に存在するんか?」
「もちろんルーシィさんのオリジナルよ。でも、原理を聞いたけど意外に簡単だったわ。結晶の指輪にも使われている透明な魔法石のかけらを無数に散りばめてあるのよ。これによって魔力が放出される箇所が定まらずに発散してしまうっていう原理よ」
「なるほどなぁ…で、これつけて試合に出るっちゅうことは?……あいつほんまのほんまに魔法具だけで戦うっちゅうことか?」
「そういうことになるわね」
「はっはっはっ!そりゃ傑作やな!チート技を封印したあいつ本来の戦闘力がどれほどのもんか、見極めさせてもらおやないか!」
「それが…ルーシィの魔法具?」
「うん、そうだよ」
ルーシッドは2つの似た形状の魔法具の動作を確認していた。
「アンに渡してるのと基本的には同じだよ。サンドボールを発生させる魔法具だからね」
「……とてもそうは思えないけど…」
「……まぁ、こっちの方がシンプルなやつだよ。アンに渡してる方がもうちょっと複雑」
「…そっちのはまぁ良いとして、もう片方の魔法具よ。それ、本当に魔法具なの?」
「うーん…まぁ、魔法石は使ってるし、詠唱も一応するから、ルール違反にはならないと思うよ」
「気になる言い方ね……」
「ねぇ、ルーシッドって…」
バトルボールの試合を見るために会場に集まった生徒たちは、会場に設置された大きなスクリーンに表示された選手名を見てざわついていた。
「あぁ、魔力ゼロのルーシッド…」
「今度は一体何をする気なのかしら?」
「でもあの完全焼却を倒した時のあれはすごかったよなぁ?あんな威力の魔法は見たことないぜ?」
「それに魔法具もオリジナルだったわよね。1年生ですでにオリジナルの魔法具を作れるってどういうことなのかしら?リムピッド…全く聞いたことがない姓だけど、よほど優秀な魔法具師の家の子とか?あの子の出身ってフィダラリア(魔法界で特に魔法具の作成において抜きん出た技術を持つ国)だっけ?」
実際にはルーシッドはディナカレア王国ウィンドギャザー領内の片田舎出身であり、両親ともに特に魔法の才能はない。使えるのは普通の生活魔法程度だ。
「…私、友達から聞いたんだけど、今回の1年5クラスが使用している魔法具も謎の魔法も全部あの子が作ってるって噂よ」
「はぁ?マジで?嘘だろ?」
「そうよね…どう考えてもあり得ない。あんなの到底学生レベルじゃないわ…」
「でも、あの子この前の期末試験1000点満点だったらしいわよ」
「はっ、はぁぁ!?1000点満点!?あり得ないでしょ、そんなの!」
「点数開示して掲示されてたんだから間違いないわよ。まぁ仮に今回の魔法も魔法具も全部あの子が作ってるって言うんなら、逆に学校のテストなんて簡単すぎるんじゃない?って話よ」
そんな事を生徒たちが口々に噂しているのを他所に、午後の試合開始を告げる鐘が鳴り響いた。
そして、拍手に迎えられて午後の最初の試合にして、今回の魔法球技戦における1年生最後の試合。バトルボール1年決勝に出場する選手たちがコートに入場してきた。そしてその列の中には当然、ルーシッドの姿もあった。
昼休みの生徒会ギルドホームは少しだけ慌ただしかった。
1年5クラスが午後から行われるバトルボールの試合の選手交代を伝えに来たのだ。選手交代自体は全く珍しいことではない。だが、その内容が問題だった。
出場選手
ライム・グリエッタに代わってルーシッド・リムピッド
「またあん時みたいにあのけったいな技を使う気やないやろな?
……いや、さすがに今回ばかりは審判も黙ってないか。やつの存在自体が不明やった入試ん時や、風紀ギルドと結託して、完全焼却をぶっ飛ばすっちゅう目的があった決闘の時とは話がちゃうで」
「……今回は『無色の魔力』は一切使わないそうよ。これと同じものを装着して出場すると言っていたわ」
そう言ってフリージアは机の上に円形の物体を置いた。
「……これは何や?」
「『発散の首輪』だと言っていたよ。我々が付けている『結晶の指輪』とちょうど逆の効果があるとか。これを装着して自分の魔力を生成しようとすると、魔力が発散されてしまい、上手く結晶化できず、魔法が発動できなくなるそうだよ。私も実際にやってみたが、確かにその通りだったよ」
ヴァンがフリージアの代わりに答えた。
「おいおい、何やそれ…。そんな魔法使いにとって致命傷とも言えるアイテムがこの世に存在するんか?」
「もちろんルーシィさんのオリジナルよ。でも、原理を聞いたけど意外に簡単だったわ。結晶の指輪にも使われている透明な魔法石のかけらを無数に散りばめてあるのよ。これによって魔力が放出される箇所が定まらずに発散してしまうっていう原理よ」
「なるほどなぁ…で、これつけて試合に出るっちゅうことは?……あいつほんまのほんまに魔法具だけで戦うっちゅうことか?」
「そういうことになるわね」
「はっはっはっ!そりゃ傑作やな!チート技を封印したあいつ本来の戦闘力がどれほどのもんか、見極めさせてもらおやないか!」
「それが…ルーシィの魔法具?」
「うん、そうだよ」
ルーシッドは2つの似た形状の魔法具の動作を確認していた。
「アンに渡してるのと基本的には同じだよ。サンドボールを発生させる魔法具だからね」
「……とてもそうは思えないけど…」
「……まぁ、こっちの方がシンプルなやつだよ。アンに渡してる方がもうちょっと複雑」
「…そっちのはまぁ良いとして、もう片方の魔法具よ。それ、本当に魔法具なの?」
「うーん…まぁ、魔法石は使ってるし、詠唱も一応するから、ルール違反にはならないと思うよ」
「気になる言い方ね……」
「ねぇ、ルーシッドって…」
バトルボールの試合を見るために会場に集まった生徒たちは、会場に設置された大きなスクリーンに表示された選手名を見てざわついていた。
「あぁ、魔力ゼロのルーシッド…」
「今度は一体何をする気なのかしら?」
「でもあの完全焼却を倒した時のあれはすごかったよなぁ?あんな威力の魔法は見たことないぜ?」
「それに魔法具もオリジナルだったわよね。1年生ですでにオリジナルの魔法具を作れるってどういうことなのかしら?リムピッド…全く聞いたことがない姓だけど、よほど優秀な魔法具師の家の子とか?あの子の出身ってフィダラリア(魔法界で特に魔法具の作成において抜きん出た技術を持つ国)だっけ?」
実際にはルーシッドはディナカレア王国ウィンドギャザー領内の片田舎出身であり、両親ともに特に魔法の才能はない。使えるのは普通の生活魔法程度だ。
「…私、友達から聞いたんだけど、今回の1年5クラスが使用している魔法具も謎の魔法も全部あの子が作ってるって噂よ」
「はぁ?マジで?嘘だろ?」
「そうよね…どう考えてもあり得ない。あんなの到底学生レベルじゃないわ…」
「でも、あの子この前の期末試験1000点満点だったらしいわよ」
「はっ、はぁぁ!?1000点満点!?あり得ないでしょ、そんなの!」
「点数開示して掲示されてたんだから間違いないわよ。まぁ仮に今回の魔法も魔法具も全部あの子が作ってるって言うんなら、逆に学校のテストなんて簡単すぎるんじゃない?って話よ」
そんな事を生徒たちが口々に噂しているのを他所に、午後の試合開始を告げる鐘が鳴り響いた。
そして、拍手に迎えられて午後の最初の試合にして、今回の魔法球技戦における1年生最後の試合。バトルボール1年決勝に出場する選手たちがコートに入場してきた。そしてその列の中には当然、ルーシッドの姿もあった。
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