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隣の席の不良少女
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転校してからというもの、1人でいる時間が限りなくゼロになった。常にななみの周りには人が集まり、あれやこれやと質問攻めにしてくる。授業と授業の間の10分休みくらい息をつかせてほしいのだが、クラスメイトがそれを許さなかった。
女子生徒が話しかけてくるのは、単なる興味からなのでまだいい。問題は男子生徒のほうだ。ななみとなんとかして親密になろうと、過剰なアピールをしてくるものだから堪らない。ご自慢の一発ギャグで笑いを取ろうとして空気を凍らせたり、自然なふうを装ってボディタッチをしてきたりと、常に衛星のようにななみの周りをくるくると回っていた。
あまりに鬱陶しく感じた時は、体調不良のふりをしてやり過ごすことにしていた。それでもななみを気遣うという体で話しかけてくるので、もう防ぎようがない。どうにか1人になる方法はないだろうか。
「次移動教室だよ。ななみちゃん、一緒に行こ」と、1人の女子生徒が腕を掴んできた。移動とはいっても、一つ上の階に行くだけだ。時間にして1分もかからないのだから、1人で行けばいいのに。
しかしそんな心の声はおくびにも出さず、笑顔で腕を組んでやった。
移動先の教室には、まだほとんど人がいなかった。授業開始まで残り3分だというのに、みんな悠長なものだ。ななみは自分の席に腰を下ろして、教科書を机に広げた。通常の教室で行われる授業とは座席の配置が異なっており、ななみの席は廊下側の一番後ろだった。全体を俯瞰できるこの位置は、生徒からも人気が高い。そのぶん教壇からも見えやすく、サボっていればすぐにばれてしまうリスクも高い席だ。もちろんななみは授業を真面目に受けるタイプの生徒なので、教師から怒られたことなど一度もない。
ふと隣を見ると、すでに着席している生徒が1人。前かがみになって、何かを読んでいた。予習をしているのだろうかと思ったが、どうやら読んでいるのは教科書ではなかった。教壇側から見えないように教科書を壁にしているが、その内側には漫画がセットされていた。教科書よりも一回り以上小さいサイズなので、うまく隠れている。
学校への漫画の持ち込みは禁じられているのに、随分と大胆なことをするものだ。まだ話したこともない女子生徒だったが、ななみは素行不良の少女に興味を抱いた。
話しかけてみようかと顔を覗き込み、ななみはビクッとした。漫画のコマを追うその目つきはあまりに鋭く、気安く声をかけられる雰囲気ではなかった。
結局読書の邪魔をすることが出来ず、授業開始1分前になった。ようやく生徒たちがぞろぞろと入ってきて、教室は満席になる。チャイムが鳴り、教師が黒板にチョークを走らせ始めてもなお、隣の席の生徒は難しい顔で漫画を読んでいた。
一体なにが彼女をそこまで熱中させるのだろう。
ななみの意識は完全に削がれ、その日の授業はまったく頭に入らなかった。
女子生徒が話しかけてくるのは、単なる興味からなのでまだいい。問題は男子生徒のほうだ。ななみとなんとかして親密になろうと、過剰なアピールをしてくるものだから堪らない。ご自慢の一発ギャグで笑いを取ろうとして空気を凍らせたり、自然なふうを装ってボディタッチをしてきたりと、常に衛星のようにななみの周りをくるくると回っていた。
あまりに鬱陶しく感じた時は、体調不良のふりをしてやり過ごすことにしていた。それでもななみを気遣うという体で話しかけてくるので、もう防ぎようがない。どうにか1人になる方法はないだろうか。
「次移動教室だよ。ななみちゃん、一緒に行こ」と、1人の女子生徒が腕を掴んできた。移動とはいっても、一つ上の階に行くだけだ。時間にして1分もかからないのだから、1人で行けばいいのに。
しかしそんな心の声はおくびにも出さず、笑顔で腕を組んでやった。
移動先の教室には、まだほとんど人がいなかった。授業開始まで残り3分だというのに、みんな悠長なものだ。ななみは自分の席に腰を下ろして、教科書を机に広げた。通常の教室で行われる授業とは座席の配置が異なっており、ななみの席は廊下側の一番後ろだった。全体を俯瞰できるこの位置は、生徒からも人気が高い。そのぶん教壇からも見えやすく、サボっていればすぐにばれてしまうリスクも高い席だ。もちろんななみは授業を真面目に受けるタイプの生徒なので、教師から怒られたことなど一度もない。
ふと隣を見ると、すでに着席している生徒が1人。前かがみになって、何かを読んでいた。予習をしているのだろうかと思ったが、どうやら読んでいるのは教科書ではなかった。教壇側から見えないように教科書を壁にしているが、その内側には漫画がセットされていた。教科書よりも一回り以上小さいサイズなので、うまく隠れている。
学校への漫画の持ち込みは禁じられているのに、随分と大胆なことをするものだ。まだ話したこともない女子生徒だったが、ななみは素行不良の少女に興味を抱いた。
話しかけてみようかと顔を覗き込み、ななみはビクッとした。漫画のコマを追うその目つきはあまりに鋭く、気安く声をかけられる雰囲気ではなかった。
結局読書の邪魔をすることが出来ず、授業開始1分前になった。ようやく生徒たちがぞろぞろと入ってきて、教室は満席になる。チャイムが鳴り、教師が黒板にチョークを走らせ始めてもなお、隣の席の生徒は難しい顔で漫画を読んでいた。
一体なにが彼女をそこまで熱中させるのだろう。
ななみの意識は完全に削がれ、その日の授業はまったく頭に入らなかった。
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