私は悪役令嬢なんだそうです

1章 飯テロ？

謝るばかりでは

　しばらくして、私はフライドポテトのテーブルの近くにエミリーさんを見つけました。大人に混じって何かをしようとしています。
「エミリーさん、どうかしましたか？」
「ひえっ！？」
肩をビクリと震わせてエミリーさんは恐る恐る振り返りました。私だと認識するとますます震えます。
「す、スカーレット様……ご、ごめんなさい！」
「え？」
いきなり謝られ、驚愕しました。エミリーさんは何も悪いことはしていないのですがね。
「どうして謝るのですか？」
「え、えっと……びっくりしたから？」
「疑問形……」
「す、すいません！」
また謝りました。口癖なんでしょうか。

「謝らなくて良いですよ。何も悪いことをしてないのですから。」
「すいません……」
「だから、良いですって。」
「すいま……あ、はい。」
相変わらずビクビクはしていますが、これでようやく謝罪以外の言葉が聞けそうです。

「で、どうかしたんですか？」
「えっと、その……」
モジモジしながら、テーブルへ視線を移します。その先には山盛りのフライドポテトが。
「あぁ、フライドポテトが食べたいんですか？」
「………はい」
顔を真っ赤にして、消え入りそうな声で言いました。確かに夫人たちが我先にとフライドポテトを食べる中には入りづらいですね。ましてや今日が社交デビューですもの。

「少し待っていてくださいね。」
エミリーさんを待たせて、私が向かったのはカートで料理を運んできた侍女のところです。

「お嬢様、どうかされましたか？」
「ここにフライドポテトの皿はある？」
「えぇ、ありますよ。どうぞ！」
「ありがとう！」

そしてフライドポテトの皿を貰いました。これは開催場所に住んでいる人の特権ですね。

「どうぞ、エミリーさん。」
「え？あ、ありがとうございます……！」

エミリーさんは遠慮がちに手を伸ばすと、口に入れた瞬間幸せそうな顔にパッと変化しました。頬を抑えて、垂れ気味の目はつぶって、凄く美味しそうに食べますね。見ているこっちまで幸せになります。
「んん～！美味しい……！」
「ふふ、もっと食べてね。」
私もフライドポテトを口に運びます。うん、やっぱり美味しい。幸せな味です。