変態が紳士~憧れの堅物団長から「罵ってくれ」と迫られています〜

水瀬かずか

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意図4

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「どうした?」

 私の気持ちなんてわかってるくせに、わざわざ団長が問いかけてくる。

「……あんなやり方じゃなくても、良かったじゃないですか」

 実感させるには、体感させるのが一番手っ取り早い。でも、団長の思惑に気付かず腹を立てるしかできなかった自分が、矮小で惨めで、視野の狭さを痛感して、恥じ入るしかできなくなる。
 八つ当たりだ。この行き場のない鬱憤を団長のせいにしたくて、団長を責めたかった。どうせ、私のこんな感情をわかっているんでしょうと。じゃあ、口に出して責めても一緒じゃないと、ぶつけた。
 訪れた沈黙が怖くてうつむいていると、団長の静かな声が頭の上から降ってきた。

「……あのやり方が、君に罵ってもらうのに、最適だった」
「……は?」

 いま、なんて言った?

 顔を上げてその顔を見ると、団長は至極真面目な顔で静かに語り始める。

「君は完璧に私の期待に応えてくれた。怒った君は女神のように清廉で美しく強く、最高の切れ味で俺を貫いてくれた」

 そしてうっとりと微笑みを浮かべると団長は私の手を取り、ちゅっとその手の甲に口付ける。

「さすが俺の女神」

 さ い て い !!

 口づけされた手の甲から、ぞわぞわと悪寒が走る。
 思わず振り払うと、ぺちりと頬に指先が当たってしまった。
 とっさに申し訳ありませんと謝ろうとして顔を上げた途端、団長の表情が見えた。ひくりと口端が引き攣ったのを自覚する。
 団長の笑みが恍惚としてる。怖い。
 片手で抱いていたカゴを、再びぎゅっと両手で抱きしめなおす。このバリケードは手放せない。

「……もっと、罵って欲しい。君のその、正論の刃で……」

 距離を詰められ耳元ですこぶるいい声が変態っぷりを炸裂させる。
 耳を押さえて後ずされば、クククッと、団長が楽しげに笑っていた。

「からかったんですね……っ」
「まさか。愛しい婚約者殿に、懇願しているんだよ」

 そんな懇願されたくない……!!

 はははと、団長が声を上げて笑った。
 それがまた憎らしくてふいと顔を背けて団長から距離を取り、早足に先を急ぐ。なのに団長はゆったりとした歩調で、私の隣を遅れることなくついてきた。別れ道でくるりと振り返ると、団長も立ち止まる。
 そして、散々言いよどんでから、団長から目をそらした。

「……ありがとうございました」

 だれが、罵ってなんかやるものか!!
 そんな決意を込めて、なんとか感謝の言葉を絞り出す。不本意だけど。とても不本意なんだけど……!!

「ああ、気をつけて」

 団長が小さく頷いて、「残念、もう少し叱られたかったんだが」なんて、煽ってくる。
 その手にはのらないと、私は礼をして魔術師棟へと向かう足を進めた。
 団長の視線が気になったけれど、振り向くことはしなかった。
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