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対処1
しおりを挟む「……ということなんですが、王妃様の要望、どのようにいたしますか」
「なるほど。では、俺が行こうか」
え、そんなに簡単にいいんですか。王妃様の慰問の護衛に魔術騎士団長って……。慰問と視察にそんな大物二人いたら、向こうの方が困っちゃうヤツじゃないですか。
「かわいい婚約者殿が困っているんだ」
団長がにっこりと笑う。仕事で笑わない人から笑顔で言われると、胡散臭さが上がるのでやめて欲しい。
「それは、私があちらからお小言を拝聴すればすむ話ですので……。どうしようもないとなれば、騎士団が入ることで折れてくれると思います。あと、副団長が王城に待機ですよね、副団長と騎士団で手が打てるのではないでしょうか。団長は予定通り監査に向かった方がよろしいのではないですか?」
そんなこと、団長だってわかっているだろうに、変に私に気を遣うのはやめて欲しい。
ちょっと、あそこはきな臭いのだ。今度の監査先は東部での塩事業だ。採掘や主な管理は王妃の生家であるメディアード伯爵家に委託をしてあるのだが、岩塩坑は国の所有となっている。なので、団長が行くことでちょっと伯爵家に圧をかけておく感じだったはずだ。
「いや、監査の方は問題ない。王妃殿下の護衛の後に向かうことにする。……君が気になるようなら誰か別の者……そうだな、そちらの方に副団長を向かわせようか」
からかうような視線に、慌てて首を振る。
「……私の愚考など気にせず、団長の判断にお任せします」
思わず睨んでしまうのは仕方がない。団長は私の黒歴史をからかったのだから。元の仕事を軽んじたとか思ってないですって。順列をつけるのは当然だと思ってます。
私の黒歴史だって別に、彼らが領民の前で言わなければよかっただけのことだ。そういう意見があって当然だし、実際、人をもう少し減らして行っていたとしても問題なかっただろうと思っている。私は彼らの考えに腹が立ったわけじゃなくって、それを聞いた人の気持ちを考えてない発言に腹が立ったのだ。つまりは場所を考えて話せ、という問題だ。
人員を減らしたからといって憤るほど単純に物事を受け取るバカと思われたのだろうか。大変心外だ。
もちろんなにも思わないわけではない。
確かに、討伐には関わらないといっても、団長が来るはずだった監査に団長がいないというだけで、不安要素を感じる者もいるだろう。けれど、言うならばそれだけだ。
物事には優先順位がある。といっても王妃様の件は代替案は存在するのだから優先順位としては高くない。王妃様が余計なこだわりをしなければ良い。けれど、王妃様と軍部の方に余計な確執は作らない方がいいのも事実。今後の仕事に差し支える。
目先だけを見て采配しては、余計に大きな被害に繋がりかねないのは当然だ。
私の気持ちを考えてくださるのはありがたいけれど、軍部が預かるのは民の命だ。個人の感情を優先して采配するのは得策ではない。目先の不安だけを見るべきではない。
団長が問題ない判断したのなら、私が口を出すことではない。
まあ、正直なところ、団長が王妃に付いていってくれるのなら、私はネチネチ言われずにすむので助かるのだけど。
「ただ、私への特別扱いではなく、通常業務の範囲内での気遣いであるというのであれば、ありがたく思います」
しれっと、その心遣い、やぶさかではないと伝えておく。
だって、今後の仕事に差し支えがなくなるというのは、けっこうありがたいのよね。私の心情をどの程度感じ取っているのか、クスリと笑う団長が憎らしい。
「副団長には、俺から声をかけておく。君は王妃宮の方に、俺が護衛に入る旨を伝えておいてくれ」
「承知しました」
「今日はもう遅い。依頼を受けるのなら、返答は明日の朝で十分だろう。帰ろう」
「大丈夫です、団長の手を止めるわけには……」
「そんなことを言わず休憩に付き合ってくれないか。残りは持ち帰ってもできる。どうか君と一緒にいる時間を奪わないでくれ」
立ち上がって歩み寄ってくるなり、手を取って礼を取ってみせる姿に、クラリとする。
こんな気障ったらしい言動が様になるのがたまらない。こういうことをされたいのかというと、全く興味がなかったというか、むしろ引く……と思っていたのだけれど、貫禄のあるイケオジがやると違和感がない。
「……では、お言葉に甘えまして……」
顔だけ無表情を取り繕うのが精一杯だった。変態要素がないときは、やっぱりかっこいいのだ。悔しい。
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