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思惑1
しおりを挟む王妃様は、私に何を求めているんだろう。
話している最中は必死で気付かなかったけど、あの様子を見れば、さすがにわかる。なんか取り込もうとされている気がする。
団長と王妃様で私の争奪戦とかやめて欲しい。私のために争わないで!! って、飛び出したい。
団長にしろ、王妃様にしろ、二人の間にある良い感じの駒なのが私ってのは、まあ、わかる。
軍務からの女官の引き抜きは珍しいことだ。そのせいで私の価値が上がったのか。でもそれは微妙かな。
実際のところ管轄が変われば、仕事をそのまま引き継いでいても権利や采配に多少の差は出てくる。なにせ物を言う立場が変われば、優先順位が変わる。以前王妃宮での女官をしていたときは王妃宮の意見をなんとしてでもより多く通すのが私の役割だったが、今は軍務の女官である。優先順位は軍務の方に置かざるを得ない。その仕事に大きな差はつけていないが、無理な言い分が王妃宮からの物だった場合、同じ断るにしても、気分的に断りやすくなったのも事実。でも所詮その程度だ。
弱まってしまった私への影響力を強めたいのだろうか。
かといって、私の所属を王妃宮に戻したい様にも見えない。以前は、戻そうとしてた気がするけど。
やっぱり私の言動が団長に影響すると勘違いしてるのはおおきいのかな。
……まさか、王妃様まで、私に軍部の諜報をしろと、おっしゃる?
だとしたら、むしろ団長の思うつぼじゃないですか。団長のせいで巻き込まれた……。ひどい。
私、言動に気をつけないと、王妃様に切られてしまうじゃないですか。
いつどこで監視されてるかわからないので、無言のまま団長に報告することになりそうだ。団長には勝手に頭の中を読んでもらいたい。私、無関係貫きます。
面倒ごとは謹んでお断りしたい。
だって諍いごとに巻き込まれて、うっかり着火してしまったら大変なことをしでかしてしまいそうで怖い。だいたいにして私は頭に血がのぼってやり過ぎるのだ。子供の頃団長に食ってかかってしまったことしかり、田舎の価値観が合わずに衝動的に計画して家を出たこともしかり、婚約も解消してこうして一人暮らししていることもしかり。……いや、今、団長の屋敷だけど。
女官始めてからも、当然色々やらかしている。
正義感にまかせて自分を犠牲にしてでも……なんていうやり方がかえって迷惑になると叱られて鼻っ柱を折られる出来事を大小様々なことで数度経験している。
いい先輩方に出会えたと、感謝している。あのままだったら、私なんて破滅まっしぐらだった。
女官になってから、それまで成功体験だった諸々への感情が、ひっくり返った。
私のやらかしで傷つけた人がいた。私の正義感で大きな負担を負った人がいた。
間違ったことはしてなくても、何かを成す以上、巻き込む周りの人への責任を負っていることを、ようやく覚えた。私では負えない責任がある事を覚えた。
私は静かに燃えるから、自分自身着火してることに気付かず、冷静に自分の信念貫いているつもりになるところが怖いのだ。
幸い今のところ大きな後悔はない。いろんな人が助けてくれて支えてくれたおかげで、私が負いきれなかった責任は他の人がなんとかしてくれて、今までは悪くない結果にはなっている。
けれど団長に食ってかかったのは黒歴史だし、家出と婚約解消では家族を大いに悩ませたし、なんなら未だに心配をかけている。私を叱ってくれた先輩を傷つけたし退職させる羽目になったし、本当に迷惑をかけた。先輩は辞める時機をうかがっていたから気にしなくていいと言ってくれたけれど、自分の無力さはいやと言うほど思い知った。
自己満足で突っ走ってしまってから事に気付いた後の自己嫌悪たるや。良い感じにおさまったからなんて楽観視するのは、もうしたくない。運がよかっただけ、人に恵まれただけ。運が悪ければと思うと、ぞっとする。それを考えなしの恥と思う程度の理性は身に付いたはずだけれど、人間早々変わらないのだ。
着火駄目、絶対。だから、おとなしく、平穏に暮らしたい。
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