変態が紳士~憧れの堅物団長から「罵ってくれ」と迫られています〜

水瀬かずか

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結末2

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「オルティス! 貴様がこのことを仕組んだのか?! くだらぬでっち上げで、王妃の生家である東部を陥れる気か!!」

 再び足音がして叫び声が聞こえた。第四王子だ。
 どうやら副団長が指示した通り、第四王子とオターニョ伯、その他数人の関係者がここに呼び出され、無事拘束がされたらしい。その中にはあの女官もいる。
 団長の腕の中から辺りを見回すと、全員が集合しているのが見えた。

 王子が喚くので、私も正しく訂正をさせてもらう。

「いえ、こちらはそちらにいらっしゃる宰相補佐のオターニョ伯と、殿下の護衛である近衛騎士のファロナダ様から、隣国への密売分であるとうかがっております。お怒りになるようでしたら、国を裏切っているオターニョ伯と近衛騎士殿へ向けるのがよろしいかと存じます。……まさかとは存じますが、殿下は反逆者を庇われるのですか……?」
「……っ」

 突然の事態に思考が追いついていない王子が、わなわなと震えている。なるほど、やはり王子もこの件は知っているらしい。
 が、誰がどう関わっているかなど、私が暴くことではない。直接私を陥れようとしたこの四人がとりあえず処分されるならそれでいい。お互い下っ端のつらいところですね、と、心の中で、同情心の欠片もない同情を向ける。この密輸の罪が王妃や東部をおさめる伯爵まで届くかは微妙かもしれないが、多少なり釘を刺すことはできるだろう。
 まあ、密輸をひとまず根絶し、王妃と伯爵の力を一時的にでもそげれば上出来といったところか。

 諦めきれない王子が一矢報いるかのように声を張り上げた。

「お前は、私の護衛と恋仲だろう! 見捨てるのか!」

 そんな半月前後顔を合わせた程度で、恋仲認定はどうかと思う。

「あの、本人の前では、大変言いづらいのですが……、彼は、私の好みではないのです」
「……は?」

 お互い様だとは思うけどね。

「せめて、婚約者の団長よりいい男でないと意味がないかと……」

 困った私の声に王子はとうとう黙った。件の近衛の方は、目を向けないようにした。
 団長が私をぎゅうぎゅう抱きしめてくる。
 この変態に勝るのは簡単そうに思えるのに、世の中は不思議に満ちている。



 間もなくして、この場の検分にあたりは更に慌ただしくなったけれど、私は魔術騎士団の分所に戻ることになった。

「……よく、あの場所がわかりましたね」

 私がどこでなにをするつもりか、副団長を呼び出したときには伝えられなかったのに。やってきた団長は状況すら把握できているように見えた。

「……君が持っていた監視用の魔術具は、あの近衛騎士から渡された物だけではなかったということだ」

 団長から渡されていた魔術具があるということ?
 何かあっただろうかと考え込んでいると、トン、と胸元を弾かれた。そこには団長からプレゼントされた万年筆がはいっているポケットが。

 さすが、あの近衛とはやることの格が違う。
 全く魔術具とは気付かなかった。万年筆というだけで高級なのに、更に一見してどころか、今あらためて見ても魔術具とは気付かせない細工。いや、ホント、どこにそんな機能を埋め込んでいるの? 値段を聞くのが恐ろしすぎる代物だ。捨てたくても、捨てられそうにない。最低だ。

「……頼むから捨てないでくれ。せめて、君の身の安全が確立されるまでは。それに一定以上離れると関知できないから、安心してくれ」

 それは、ほんとうに、安心要素なの……?
 知りたくなかった。そしたら気にせず持っていられたのに。
 いや、でも、知らずに監視されるのもいやだな……。
 状況考えると、追跡と盗聴と両方入っていることない?
 じとりと団長を見ると、「頼む」と、もう一度懇願された。
 しばらく考えて、まあ、仕事中に持ってるだけなら問題ないということで納得することにした。
 ついでに、ごまかさずに自己申告したので怒らないであげることにした。ここで激情にまかせて怒ろう物なら、変態が降臨しそうだ。

「君の心の広さには、時々心配になる」

 自分で頼んだ癖に、ひどい言い草である。私だって、普通ならこんな事了承しない。ただ相手が団長だから不都合がないだけなのに。
 仕事中の会話は誰に聞かれてもいいように話せばいいだけだし、仕事中に場所を特定されても、別に困ることもない。むしろ、団長から用事があるのなら便利で良いと思う。
 更には普段から考えていることが筒抜けなのだから、それに比べれば会話ぐらい聞かれても今更……という感情しかわかない。
 私がそんなことを考えていると、「そうか」と団長が苦笑した。
 思うんだけれども、盗聴よりも、普段から考え読んでることを思い知らせるがごとく思考に返事するのをやめるのが先じゃないかと。
 団長が、はは……と苦笑した。
 だから、それですよ、それ。

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