変態が紳士~憧れの堅物団長から「罵ってくれ」と迫られています〜

水瀬かずか

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結末5

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「ソレル殿、そろそろ団長が戻ってくるそうですよ」

 私は王都に帰ってきていた。
 副団長の声かけに頷いて了承を伝える。
 団長は未だ東部から戻ってきていない。

 こちらはこちらで慌ただしい。
 私が知らぬうちに、大捕物が計画されていたのだ。

 私はというと、早々に聞き取り調査は終わり、そのまま仕事に復帰している。なんのおとがめもなしだ。
 団長とはもう半月ほど顔を合わせていない。迎えに来たと言った団長は、私と少し話しただけで、自分は東部に残り、私を王城へと帰した。
 全然お迎えになってない。普通、迎えに来たと言うのなら、帰りを送っていくものじゃないだろうか。
 そんな風に心の中で毒づいては溜息をつく。いろんな事を思い返しては、団長を責める毎日だ。
 嘘つき。
 伯爵領を出るときに今後の指示を仰いで、挨拶をしたのが最後だ。

 団長は宰相閣下の指示で伯爵家の制圧をしたのだと聞いている。
 そして王城に戻ると、王妃は病気になっていた。実際のところ国王からの指示で、自由に出歩けず情報も規制されていて軟禁状態な訳だけれど。
 どうやら、王妃が北部への慰問へ行っている間に、宰相が王妃の塩の密輸に関する罪を暴き、王妃宮の捜査を行い諸々を押収、ついでに諸々の不正なども一斉摘発し、王妃は帰還直後に拘束、それが確定してすぐに伯爵家の摘発に動くというのが、今回の一連の計画だったらしい。
 私は全てが終わってからようやく全貌を知らされた訳だ。

 なるほど、だから団長は王妃の護衛に付くのも、それはそれで王妃の監視にもなるし塩事業の監査との連携ともいいという判断だったのかもしれない。
 塩と伯爵家摘発するのに、どうして抜けたのかと思ってた。

 話を聞いたときは、思わず苦笑が漏れてしまった。
 

***

「それで団長は急いで伯爵領まで来たんですね」

 なにが、私がいなかったから急いだ、よ。
 私が王城にいても同じ事をした癖に。

 元々団長は伯爵家を検挙をする予定だったのだ。
 それはそうか。……私のためのはずが、なかった。
 そんな当たり前のことを突きつけられた。

「いやいやいや! 団長はそんな早く行く予定はなかったです」
「同時検挙の予定だったんですよね?」

「それは、王妃に同行した時点で団長はもう少し遅れていく予定でしたよ。先行して各団が東部に出発はしておりましたし、副団長いましたし、監査官の中には宰相の腹心もいらっしゃいました。連絡は先に鳥を飛ばしてありましたから、団長があそこまで急ぐ必要はありませんでした。ソレル殿が東部に連れて行かれたと知った後の団長、こわかったですよ」

 そう語ったのは、北部にも同行していた団員だ。

「そうなんですね……」
「ソレル殿が無事でよかったです。何かあったら、団長がヤバいんじゃないかと俺達話してたんですよ」
「……まさか」

 苦く笑った私に団員は苦笑した。
 心配してくれたというのは、私が感じた通り本当だったのだと、うれしいような、泣きたいような、それでいて憎らしいような、言い表せない感情が込み上げた。
 話を聞いていた別の団員が、横から口を出してくる。

「それで伯爵領についたらついたで、ソレル殿がやってくれたという話でしょう。団長、真っ先にソレル殿のもとへ向かったんですよ。……あの時、団長の言ってたことですけど、ソレル殿をおとりにしたわけじゃありません。ならないように、していたのです。本当に心配をしておられました」

 そう語ったのは彼は私たちと共に東部に行っていた団員だ。
 私は苦笑してから、「そうですか」と小さく頷く。
 ありがとうと呟きながら、でも、あなたたちには共有されていた情報は、私には教えてもらえなかった、と、心の中でみっともなくひがんだ。

***


 そんな当時の会話を思い出して、また気持ちが沈んだ。



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