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2章
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しおりを挟むルカが男と知られてから今まで、正臣の気持ちがわからずにずっと悩んでいた。けれど、気付いてしまえば、そう難しい話ではなかったのではなかったのかもしれない。
正臣からすると、ルカの恋心は想像だにしていなかった、ということなのだろう。
正臣と触れ合ったあの日、時折不可解だった正臣の言動の意味がようやく意味を成した。
観察されているように感じたルカは、おそらく間違っていなかった。正臣は見ていたのだ。ルカが正臣に対して、欲情するかどうかを。
考えてみれば当然である。むしろなぜ自分がそれに気付かなかったのか不思議なぐらいだ。最初はルカもそう思っていたのだ。自分の倍ほどの年齢の男から恋情を向けられるなど、気持ち悪い、と。
実際のところ正臣に対して気持ち悪いと感じたことはないが、理性的に状況だけ考えたなら、嫌悪する事象であったとも理解していた。だから正臣に気を許さないように気持ちが悪いと嘯いていたのだ。
実際、三十も半ばを過ぎていると思われる男が、二十歳にも満たぬ相手と情を交わすなど、どこのヒヒジジイだと吐き捨てられても仕方がない。だからルカの立場なら、そう嫌悪してもおかしくない状況だったのだ。
ルカは最初から正臣への無自覚の好意でそういった感情は一切覚えなかった。けれど正臣は冷静に状況を把握し、観察していたのだろう。
それに加えて男同士である。同性であることを否応なしに感じさせるペニスの存在に、萎えていたとしてもおかしくはない。ましてや入れる場所はアナルだ。嫌悪感がわくのが普通だったのかもしれない。
正臣を想うと興奮するため、あの時のルカには思いつきもしなかったが。
しかし、今しがたうっかり、その辺りの男で想像してしまったルカは怖気立った。突っ込むどころか興奮するのさえ無理だ。ちょうど目に入った正臣と同年代の男が、もしあの状況でペニスを出して……やめろ、気持ちが悪い。ルカは想像した自分を反省した。
つまり、そういう事だ。正臣はそう萎えるルカを想定していたのだろう。
だからペニスを見せつけた。尻の穴さえも見せた。ルカに現実を思い知らせるために。ルカはそのまま興奮してしまったわけだが、それに驚いた正臣の気持ちが、ようやくわかった。
反面、気持ちを信じてもらえなかったことに、腹立たしさも覚える。
正臣さんがあんな態度をとるから、不安になってしまったじゃないか。
危うく正臣に与えられたチャンスをふいにするところだった。大興奮してそのまま突っ走ってしまった自分は正しかったのだと、讃えたい気分だ。
誰が萎えてなんかやるものか。私は、あなたが欲しいんだ。
時間の許される限り、正臣と時間を共有したいのだ。できるだけ深くまで触れ合いたい。側にいるのだと刻みつけたい。自分の物にしてしまいたい。
何もかもが、叶わないとわかっているから、尚更こだわってしまうのかもしれない。どうしようもない焦燥感は常につきまとう。
だって、私たちには、時間がない。
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