81 / 163
2章
81 3-9
しおりを挟む一年近く前は悪化の一途だった情勢は、今、一見落ち着いていた。軍の方は革命軍の動きが鈍ったことで、腰を据えて隣国との戦に備えている。革命軍の方も今はなりを潜めており、軍は革命軍への警戒を緩め始めていた。……それは、まもなく革命軍が活動をはじめるということでもある。今の平穏は嵐の前の静けさといって良い。革命軍が活動を再開すれば、一気に風向きが変わる。仮にそれがなくても、今度は軍が戦争に向けて動き出すのは目に見えている。
軍にとっても革命軍にとっても、今が束の間の平穏とわかっていた。側にいたいからと正臣を言いくるめるのは別問題としても、出国がいつになるかわからない状態なら、少しでも安全策があるなら、やっておいた方がいいのも事実だ。何より正臣のもとなら、軍の目をかいくぐりやすいだろう。
正臣がルカの身元を知ったときどうするかはわからないが、少なくとも「正臣の情人」という立場になれば、正臣以外からルカが男ではと思われる可能性はほぼなくなる。
なんだ、良いこと尽くめじゃないか。
側にいれる事以上に有益なことが多い。
問題があるとしたら、偽姉と乳母を残して正臣のところに行くということだが、異国民街周辺の治安の良さなら問題はない。むしろ本来なら血のつながりのないルカが、偽姉達と一つ屋根の下で暮らす方が、実は自国に戻ったとき外聞が悪い。いくら偽姉にとって弟のような存在といえど、年の近い男と同居など許されることではない。家族という触れ込みのため同じ家で暮らすしかなかったのだが、夫以外の年頃の男と暮らす羽目になった偽姉に対し、ルカはずっと申し訳なく思っていたのだ。
真剣に考え始めるルカに対し、正臣は顔を顰めて溜息をついた。
「駄目だ。お前を揶揄する者が出てくる。……余計なことを言って悪かった」
「余計なんかじゃない。……正臣さん、私ともっと一緒にいられる方法、考えてくれていたんでしょう? 嬉しい。……じゃあさ、母と姉に相談するから、それでいいって言われたら、それなら?」
弄んでいた正臣の手を握る。ルカはあざとく懇願して見せた。もちろんわざとだ。
ルカは知っている。正臣は、ルカに甘い。ルカのわざとらしいあざとさを普段は楽しんでいる正臣だが、今はずっと苦い顔だ。
総合的には悪くない案だと思った。正臣もそれはわかっているからこそ、つい口から出てしまったのだろう。けれど中傷されるであろうルカを案じて、駄目だと言うのだ。
正臣自身も揺らいでいる、そう感じたルカはなおも強請った。
「ねえ、正臣さん。一緒に暮らそう?」
呻いて天を仰いだ正臣が、とうとう折れた。
「母君と姉君がいいと言ったら、だ」
「やった!」
笑顔でルカはうなずく。勝算はあった。
20
あなたにおすすめの小説
【完結】君を上手に振る方法
社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」
「………はいっ?」
ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。
スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。
お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが――
「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」
偽物の恋人から始まった不思議な関係。
デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。
この関係って、一体なに?
「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」
年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。
✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
男前受け
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。
はぴねこ
BL
高校生の頃、片想いの親友に告白した。
彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。
もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。
彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。
そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。
同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。
あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。
そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。
「俺もそろそろ恋愛したい」
親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。
不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
【完結】ただの狼です?神の使いです??
野々宮なつの
BL
気が付いたら高い山の上にいた白狼のディン。気ままに狼暮らしを満喫かと思いきや、どうやら白い生き物は神の使いらしい?
司祭×白狼(人間の姿になります)
神の使いなんて壮大な話と思いきや、好きな人を救いに来ただけのお話です。
全15話+おまけ+番外編
!地震と津波表現がさらっとですがあります。ご注意ください!
番外編更新中です。土日に更新します。
αからΩになった俺が幸せを掴むまで
なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。
10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。
義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。
アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。
義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が…
義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。
そんな海里が本当の幸せを掴むまで…
祝福という名の厄介なモノがあるんですけど
野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。
愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。
それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。
ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。
イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?!
□■
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!
完結しました。
応援していただきありがとうございます!
□■
第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる