S系攻め様は不憫属性

水瀬かずか

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序章:部下・S氏の言い分「俺が上司を襲ったわけ。」

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 囲っていた腕を抱きしめるように動かして、腕の中で無意識に煽ってくる上司を羽交い締めにする。指先に触れたのが男にとってはただの飾りでしかない乳首だと気付き、いじりたいという衝動のままつまみ上げた。

「ひぅっ」

 腕の中の筋肉質な身体が思った以上に大きく震え、情けない声が腕の中の上司から漏れた。
 情けない、うわずった声だ。何が起こったのかわからないまま、とっさに漏れてしまった声。いい年したおっさんが乳首つままれて、感じてしまった、情けない声。
 なのに、ぞわりと背筋に鳥肌が立った。

 もっと聞きたいともっと泣かせたい、この、なまめかしい声をもっと……。

 そこまで考えて、自分の考えにぞっとした。
 違う、気持ちが悪かっただけだ、だから鳥肌が立った、情けない声に嗜虐心が疼いただけ……。
 こみ上げる興奮に、そう言い訳をする。
 けれどやり始めたことは、止められなくなっていた。

 シャツごしに主張し始めた小さな突起を、欲求に任せてくにくにとつまむと、びくびくと腕の中で上司が震える。「ヒッ」と、時々息を飲みながら、未だ状況を把握しきれない様子で、震えながら力のない抵抗をする。その抵抗も、乳首をこすったり押しつぶしたりとちょっと違う刺激を加えただけで、びくりと身体を強ばらせて失われる。
 たったそれだけの事に、ひどく興奮した。

 今、主導権を握っているのは、俺だ。
 ぞくぞくとした興奮が、思考を、そして身体を突き動かす。
 あのいつも堂々とした男ぶりを見せつける上司が。部下からの信頼と尊敬を集め自信に溢れたあの課長が。俺をいつも高みから見下ろして嘲笑っているこの人が。乳首をいじられるという、たったそれだけのことで主導権を手放した。

 ああ、おかしくてたまらない。もっともっと、気持ちよくしてやろう。俺の手で、女みたいに、あんあんと間抜けによがれば良い。俺はそれを見下ろして嘲笑って……。

「な、なに、し、て………っ」
 混乱からようやく思考を取り戻した課長が、わずかに振り返り厳しい声を出そうとしたようだが、それも途切れ途切れ、喘ぐ吐息を挟みながらでは、威厳もなければいつもの威圧感も全くない。
 漏れそうな嬌声を押さえ込んでいるのだろう、息を飲む度に、ぐっと表情がきつくなる。
 睨む目元は苦しげに皺を寄せている。
 課長の動きは俺の手のひらの上だ。

 なのになぜか、課長の目を見てこみ上げたのは痛快さではなく、苛立ちだった。
 その目は俺が望んだような怒りや屈辱に歪んだ目ではなかった。困惑を浮かべつつも睨めつけてくる視線は、俺を批難しているようではあったが、どこか冷静に観察しているようでもあった。

 気に入らない。
 ほんとに、この人は俺をイライラさせるのが上手い。
 あなたは、自分がどういう状況かわかってないんですか? もっと取り乱してくださいよ……!!
 その余裕が気に入らない。まるで子供のおふざけを見極めようとしている大人のようじゃないか。この体勢で主導権は俺にあるはずなのに、抜け出せなくなってるくせに、何なんだ、その余裕は。
 どうあっても自分の上に立つこの男が腹立たしい。

 睨みつつも冷静さを失わない視線が俺を責める。腕をほどこうとするように軽く身をよじる程度なのは、俺をたしなめる程度でいいと判断しているのか。
 馬鹿にするな。俺はあなたに簡単にあしらわれる程度の男じゃない。あなたこそが俺に組み敷かれるんだ。あなたはこれから俺に蹂躙されて、俺にひざまずくんだ。
 あなたは、みっともなく俺にいじられて声をあげて恥をさらせば良い。

 俺の手をふりほどこうとする動きを、ぐっと羽交い締めにする腕に力を込め、そのままぎゅっと両方の乳首をシャツごしにひねり上げる。ちょっといじっただけでぷっくりと立ち上がっていて、簡単につまめた。
「うあっ」
 びくびくっと腕の中の身体が震え、喉元をさらす。顎から胸元までのなだらかな曲線が細かく震えて、天を仰いだ口元から、途切れ途切れの熱い吐息がこぼれる。

 ちょっと乳首をいじっただけで途端に抵抗をなくし、おもしろいほど、顕著に反応する身体。
 それを見て、ようやく溜飲が下がる。
 おかしくてたまらない。こんなに厳つい顔して、こんなにがっちりとした体つきをしておいて、こんなに敏感だなんて。

「もしかして、男のくせに乳首、感じるんですか?」
 嘲笑いながら耳元で囁けば、それさえも感じたかのように、びくりと身体が震える。
「……なっ」
 息を飲んだ上司が、顔を赤く染めながらも強ばった表情で先ほどより力を込めて身体をよじり始める。が、遅い。つまんだままになっている胸の飾りをくりくりと指で弄べば、途端に上司の身体は快感に負ける。

「………っ、はなせっ……うくっ、ひぁぁっっ」
 なんだこれ、おもしれぇ。
 くっ、はっ、と、熱い吐息が上司の口から漏れている。
 はっ、はっ、と浅く早くこぼれるその吐息が、乳首をいじられただけでどれだけ快感を覚えているのかを伝えてくる。

 ぐっとこらえながら、首を横に振って快感を逃そうとするのを、ぐりぐりと乳首を潰すようにいじって快感を被せれば、がくがく震えながら食いしばる口元から力が抜けた。

「あっ、……あっ……やめっ」
「こんなに気持ちよさそうにしながら、何言ってんですか。ハハッ、課長、ほんとに乳首いじられて、感じてら……ねぇ、課長、嫌いな部下にいじられて、気持ちいいですか?」
「ふざ、ける、な……っ」

 それまでより力を込めて身をよじるが、乳首をいじる俺の手を払いきれずに、全てが無駄に終わっている。
 それどころか、前の棚に縋りつくようにして耐えながらもがく姿は、むしろいじりやすい体勢を取っているかのようだ。

 嘘だろ。乳首いじられてるだけで、抵抗できなくなるぐらい感じてんの? マジで? このおっさん、きめぇ。
 顔が笑うのを抑えられない。
 憎たらしい上司が俺のやることに抵抗できなくなっている。整った男前の顔がいびつに歪んでいる。俺がこの上司に屈辱を与えている。なのにこの人はこの状況を受け入れがたくても必死に耐えるしかない。

 でも、気持ちいいんでしょう?

 それを思い知らせてやりたい。
 だから「ほら」と耳元で囁く。あなたは俺に蹂躙されているんだと思い知らせるために。

「乳首いじってるだけですから、逃げたければ逃げてください、俺、そんなに力入れてないですよ? ほら、課長?」
 うっすらと笑いながらシャツ越しの突起をいじり続ける。
「ひぅっ…………あっ、うあぁ…………」

 もう、声が上がるだけで、ろくな抵抗はない。ただ、耐えてるだけの姿が、たまらなく俺を高揚させる。もっと。もっと声をあげさせたい。
 こねるように乳首をひねり上げれば、極まったかのように、びくびくっと身体を震わせながら身体を強ばらせる。そして、がくんと腕の中の身体から力が抜けた。
 腰が抜けるほど気持ちよかったのかとほくそ笑む。

「ハハッ、乳首いじられるの、そんなに気持ちよかったですか? いつも涼しい顔してるくせに、乳首いじられただけで腰砕けとか……淫乱な女みたいですねぇ」

 抱き留めたその身体は、すっかり弛緩して、普段は厳つく見える面立ちが今は色気を垂れ流し、ひたすらに俺の欲情を刺激してくる。
 元々が整っている顔立ちをしているのだ。厳しさが抜けてしまえば、伏せ目がちの目元も、小刻みに震える唇も、「はー、はー」と力なく息をこぼし上下する胸元も、決して見苦しい物ではないように思えてきた。

 なのに、次の瞬間には、伏せられた目がゆっくりと開き、鋭い視線が俺を捉える。まるで、俺の思い通りにはさせないとでも宣言するように。

「……っ、黙れ、上司にこんなふざけた真似して良いと思っているのかっ」
 俺の立場を思い出させようとさせるその叱責が、俺の感情を逆なでる。

 この人の気持ちよくなる姿を見たいと思っていた感情より、屈服させたい感情の方が、再び強くこみ上げてくる。
「ふざけた真似? なに言ってるんですか、俺に乳首触られただけで、ここを、こんなに膨らませておいて」

 乳首をいじっている間に上司の股間が猛っている事には気付いていた。ズボン越しにはっきりとわかるほどに盛り上がっている。それに手を伸ばせば、想像以上にガチガチに膨らんでいる。
 笑いながら布ごしにつかみ上げればビクンと跳ねるように背筋が反った。

「うぁんっ」
 ズボンごしに分かる猛ったそれを、握り込んですり上げる。先端部分らしき場所を重点的にこすってみれば、強ばった身体が、戸惑うように小刻みに震えた。
「や、やめ、ろっ」
 焦りの混じった、必死の声。ここまで来て、ようやくこの上司は焦ってきはじめたようだった。




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