S系攻め様は不憫属性

水瀬かずか

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序章:部下・S氏の言い分「俺が上司を襲ったわけ。」

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 そうだ、あなたはもう俺に敵わない状況になってるんだよ。

 そう思い知らせるように、嘲りを込めた笑いを浮かべる。
 もっと早く降伏していれば良い物を。これだけ快楽に弱いくせに抵抗するなんて。
 くっくっと笑いながら、課長の勃起した股間を掴む手に、力を込める。

「やめて欲しければ、俺から離れれば良いじゃないですか、別に俺、課長のこと力尽くで拘束してるわけじゃないですよ? 腰揺らしながら触られたがってるくせに、俺が無理矢理やってるみたいな言い方、しないでください」
 手を上下に擦れば、こらえきれないというように腰が揺れている。それを揶揄しながら、課長が逃れられないのを自覚させてやる。
「ちが、うっ」

 あの課長が、必死になって現実から目をそらそうとしているのを楽しむ。
 みっともなく快感に陥落する姿を早く見たい。
 反面、プライドを踏みつけられて屈辱にまみれながら無様にあがく姿が見たい。違うと叫びながら快感に負けて絶望する姿が見たい。

 その方があなたは傷つくだろう? その方が俺からの敗北を痛感するだろう?
 プライドをずたずたにされたあなたが、こらえきれず快感を求めて俺に縋りついたなら、それは、どれだけ楽しいだろう。

 だから、ねぇ、ほら、はやくみっともない姿をさらしてください。惨めな状況に、必死に抗ってください。

「違うんですか? じゃあ、ほら、逃げてください、俺が触ってるのは、乳首をつまむぐらいの力しか込めませんから、ほら、課長?」
 前の棚に縋りつき腰を突き出した状態で、俺に身体を支えられている課長の身体は、今にも崩れ落ちそうだ。
 それをわかっていながら、腰に回していた手を再び胸元に戻す。そして両方の乳首を、軽くくりっとつまめば。
「ひうぅぅぅっ、や、やめ………あぁぁ……!」
 課長がこらえきれないほどの嬌声を上げて、がくがく震えながら、座り込んだ。

 棚に縋りついたような状態で、ハー、ハーと、荒い息をこぼす。上気した頬がひどく官能的だ。
 どう見ても、男だ。男臭い顔立ちに、肩幅もある筋肉質な身体。なのに切れ長の鋭い目元を赤く染めながら、視線だけが俺に向けられて、ぞくりと震えたのは、なぜだ。
 知らず、ごくりと息を飲んだ。無理矢理笑顔を貼り付けた。そうしないと、目の前の上司の色気に、飲まれてしまいそうだった。

「……腰砕けになるぐらい気持ちよくなるなんて……もしかして課長、こっちも、いけるんじゃないですか?」

 今、激しすぎるほどの動悸が胸を打っていた。
 いつかの妄想が、急に脳裏を過ぎっていった。
 衝動が俺を勝手に突き動かした。

 棚にぶら下がるようにして膝をつく上司の、誘うように突き出された尻をするりと撫でる。
 ビクンと震える身体はどこまでも敏感で、素直すぎるほどに快感を教えてくる。いつもの感情を見せない上司の身体とは思えぬほどに、どこまでも正直に。

 ケツ撫でられても感じるのか。
「淫乱」という言葉が頭を過ぎる。
 まさかとは思ったが、もしかしたら本当に掘られても感じるんじゃないか、この人。

 俺を睨む顔が、怒りに歪んでいる。
「ばかなことを、いう、なっ」
 息も絶え絶えに、快感さめやらない状態で凄んでも、今更怖いだなんて思わない。この人の動きを封じるなんて、簡単なのだとわかってしまった。どれだけ快感に弱いのか、俺はもう知っている。

 震える太ももが、ギリギリ膝立ちを保っている事を示している。抵抗する力なんておそらくないだろう。手を離しふりほどこうとしたら、きっとそのまま力が抜けて座り込むんじゃないだろうか。

 怒りと戸惑いが課長の言動と表情から読み取れる。パニックを起こし、正常な判断がとっさに出来なくなっている人間を押さえ込むのは簡単な事だ。
 顔が笑うのを抑えられない。いつも何事にも動じないこの人が自らの手の内にあるという、この優越感。たまらない。

 ベルトを外すのは簡単だった。
 この現状を受け入れられずにいる上司は、今自分が何をされているのかすぐに判断できなかったんだろう。気付いてすぐに俺を止めようと身をよじっていたが、ズボンはそのまま床まですとんと落ち、ボクサーパンツに手をかけたところで勃起したチンポにひっかかって下ろす動きを止められる。

「お前、何して……!!」
 パンツを引きずり下ろそうとする力と共に、課長がそのまま座り込み、脱がせるのを邪魔してきた。
 座り込んで、「離せ」と俺の手を振り払おうとする。この上司らしからぬ、雑で弱い抵抗だ。この上司がそれだけ混乱しているのかと思うと、興奮する。

 立つ力もないのか、手が振り払えないとわかると、必死に逃げようとして手で這うようにして逃れようとする。
 四つん這いで、ケツを俺に掴まれて突き出した状態で蠢く様は、ひどく滑稽で、尻を揺らしながらの抵抗は、むしろ誘っているようにさえ見える。
 その様子を楽しみながら、パンツを膝まで引きずり下ろした。
 ぷるんと、衰える事なく勃起したチンポが現れる。脱がした反動で誘うようにゆらゆらとゆれたそれは、塗れた先端からとろりと涎をこぼした。

 掴んでいた腰から手を離し、ゆっくりと手を伸ばす。
「や、やめろ、何をするつもりだ……!! は、放せ……!! やめろぉ!!」
 初めて聞く、必死に焦った声がした。叫びながら俺を拒絶する。でも逃げられない。
 ひどく愉悦がこみ上げた。
 もっと叫べば良い。泣きながら許しを請えば良い。

 逃げようともがく課長のチンポをぐっと掴む。
「ひぃっ」
 いつも低い声が、完全に裏返っている。
 恐怖だろうか。
 部下に、いつも見下し侮っている部下に、好き勝手いじられる恐怖を味わっているのだろうか。
 楽しい。楽しくてたまらない。この人の中を俺でいっぱいに埋め尽くしたい。

 課長は眉間に皺を入れギリギリと歯を食いしばりながらにらみつけてくる。普段ならこの不快感をあらわにした表情で睨まれたなら、身をすくませていたかもしれない。けれど潤んだ目が、その恐ろしい印象を裏切り、嗜虐心を煽った。

 睨んでも無駄だと笑みを返す。
「……何をヤメロって言うんですか? こんなにチンポガチガチにしといて」
「ひぅっ」
 情けない悲鳴と共に突っ張っていた両腕が崩れ落ちた。俺に腰を押さえ込まれ突き出すように晒された課長の尻は、脅えるように、ぶるぶると震えた。
 更に逃げようとするかのように、投げ出された腕が床をひっかくが、力ないその動きでは、俺を振り払うどころか、身体を起こす事さえ出来ていない。

 震える度に、課長が羽織ったジャケットが、床にあたって、コツン、コツンと音を立てる。ポケットに何か入れてあるのか……と、何となく目を向けたところで思い出す。
 同僚達にからかわれながら「最近、紙をめくれないんだ」などと苦笑いしながら手に何かを塗っていた姿が記憶の片隅を過ぎる。「最近、肌が荒れやすくて」と、紙を触るときは持ち歩いているのだと。

 あつらえたかのようなこの状況に、笑いが漏れる。どこまでもこの状況は俺に味方をしているようだ。
 ポケットに手を突っこみ、入っていたチューブを取り出した。入っていたのがハンドクリームですらなく、ワセリンである事がオヤジくさくて笑える。

「良い物、持ってますね?」
「な、に、を……」

 震えながら眉間に皺を寄せて、怪訝そうに振り返る。
 殊更明るい声を出して、にっこりと課長の持ち物を見せつける。
「痛い思いをするのも、痛みを与えるのも趣味じゃないんで」

 這いつくばった状態でケツだけを突き出した課長の背中を押さえつけ、蓋を開けて、チューブからたっぷりとワセリンを絞り出す。それから見せつけるようにしてその指を尻に添える。

 ねぇ、課長、今から男に犯される気持ちって、どんなですか?
 にっこりと笑ってみせると、課長の表情が脅えるようにして強ばった。
「う、嘘、だ、ろ……? 篠塚、お前、何考えて……」
 課長の声が震えている。
 脅えている様子があまりにも情けなくて、見ているだけで気分が良い。

「何って、いつもお世話になっている課長に、気持ちよくなってもらいたいだけですよっ」
「ひゃうっ」
 にゅるんと、ワセリンを穴に押し込めるようにしてケツを撫で上げると、課長から情けない悲鳴が上がった。そのまま指できつく締まった穴を探るようにくりくりと撫でれば、きゅっと襞が締まる。ひくひくと震えるその動きは、刺激を求めているかのようだ。

「ハハッ、もしかして、ここ撫でられても気持ちいいんですか。……まさか、こっちも、いけるクチなんですか?」
「や、めっ」

 パニックに陥った様子で、震えながら課長がもがく。何をされるかわかったのだろう。必死な様子だが、けれど混乱に任せた力ない闇雲な動きでは俺の動きを止められない。
 這って逃げようとする課長の尻がゆらゆらと揺れ、俺を誘う。塗りたくられたワセリンでてらてらと光る穴はひくりと震えながら煽っているのだ。誘われるまま、そこに指を突き立てやる。
 ずぷりと中指は穴の中へと飲み込まれた。
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