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第2話 異世界に来てみたら… 5
しおりを挟む「あっ、おれの元いた世界には居なかったので…」
「フェンリルが?」
「いえ、フェンリルだけじゃなくて……、魔法とか、魔術とかそういうのもなくて、伝説とか伝承の中で、魔物とか魔女とかそういうのはあったけど…」
「へェ~、オレら伝説の生き物だったの?」
「そうです。だから、ここにきてからびっくりしすぎて、もう、何が何やら」
「まァ、そりゃそうだよなァ」
「何もわからないし、どうして良いかもわからない感じです」
「そのうち慣れるから、わかんねェコトあったら、オレでもアレにでも聞いたら良いぜェ」
アレと言いながら、ムスタはヴィオラの背中を指した。
「……ムスタはヴィオラさんと中がいいんだね?」
律がそういうと、ムスタは心底いやそうな顔をした。
ちょうど、エントランスホールらしき所へ出た。
「リツ様、まずはこちらからご説明いたします」
律一人では王宮の中からは出られない事を説明されつつ、中庭、食堂、使用人たちが住む塔を窓の向こうに見ながら、大浴場と回っていく。
ムスタが気さくに話しかけてくれるおかげで、少しずつ解けていくような気分がしていた。
「それでは、こちらがリツ様のお住まいいただくお部屋でございます」
重厚な扉を開けると、その部屋の床には、なにか文字が書かれている。
それは見たことがないはずなのに、律には魔法陣であることが理解できた。しかし、床一面に魔法陣が描かれている理由はわからず、律は首をヴィオラに問いかける。
「どうして、床に魔法陣が書いてあるんですか」
ヴィオラが少し驚いた表情で律を見る。律は首をかしげると、薄っすらと微笑むヴィオラが床を指差して説明してくれた。
「この魔法陣は、魔力を吸収するために書いてあります」
「魔力を吸収する?」
「ええ。リツ様の魔力は、我々の命をつなぐために必要なものなのです。この魔法陣から、リツ様の魔力を魔石のベースに貯めさせていただき、そこから国中に行き渡ります」
「国中に行き渡るほど…、魔力を吸われてもおれの命は大丈夫なんですか」
「リツ様の命が脅かされるほどの量を、取ることはありませんよ」
「よかった…」
「それに、今日はもうお疲れでしょう。一日お休みいただけるように、魔法陣の使用は明日の夜からになります」
「本当ですか。よかった」
ヴィオラはポケットから手帳を取り出し、サラサラと文字を書いた。
「恐れ入りますがリツ様、こちらの文章を読んでいただけますか?」
ヴィオラに渡された手帳を見る。
そこに書かれていた文字をそのまま読んでみる。
「ええと…『おはようございます。ご機嫌いかがですか?』って書いてあると思うんですが…?」
「その通りです。さすが、リツ様」
「多分…、この世界に来るときに通った魔法陣の影響だと思います」
「なるほど。しかし、会話が通じて文章が読めるというのは、かなりありがたいですね」
「確かに…」
ヴィオラの後ろから、ひょこっとムスタが顔を出した。
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