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第2話 異世界に来てみたら… 12
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「『勇者』などという肩書の人間たちに領地を侵略されてきた。それにより命を落とした者には、王として追悼の意を表し、わが国に命を賭してくれたことに深く感謝を述べたいと思う」
バルコニー下に集まった国民から、次々に「王様! 王様!」と声が届く。
泣き叫ぶような声もいくつか交じっていた。
(王様のために戦って亡くなった人のご遺族かな…)
現代日本に生まれた永遠には、想像を絶することだ。
悲しくて、涙が出そうだった。
目を伏せる永遠の視線の端で、イグニスの手がスッと上がるのが見える。
するとそれまで叫んでいた声がピタリと止む。
「今度こそ、我は戦況を覆し、これまで好き勝手してきた人間どもとの争いに終止符を打ちたい!」
遠吠えのような、絶叫が響き渡る。
永遠の背中にイグニスが手を添えた。
そして永遠にだけ聞こえる声で、
「トワ、お前は何も言わなくてよい。ただ、凛と佇み、微笑めばよいのだ」
と言った。
そんな難しい事を言われても困る、と永遠は思った。
とりあえず背筋を伸ばして、ぎこちなく微笑んでみる。
「待ち望んでいた【供給者】であるトワが異なる世界より召喚された! 枯渇していた魔力は、トワの魔力によって回復し、我らの力は取り戻されるであろう!」
割れんばかりの拍手と、圧倒されるほどの熱量が押し寄せてきて、永遠は軽はずみにこの世界へ転移してきたのではないかと不安になってしまう。
バルコニー下からは「王様!」「トワ様!」と叫び声が聞こえてくる。
「皆の者! これからも我が国のためによろしく頼むぞ!」
イグニスの声に、バルコニー下の国民たちが答える。
気迫と、歓喜の声に、まるで共鳴するように城が揺れたような気がした。
戸惑う永遠の様子を見て、イグニスは楽しそうに――それはとても悪魔のような恐ろしさだったが――笑った。
「トワ、今この瞬間からお前に目通りをと数多の者たちが押し寄せてくるぞ」
「ええぇ…ッ!?」
「っはは、お前は我らの国を救うたった一人の【供給者】だからな」
「…荷が重いな…はは…」
永遠はバルコニーの下にいる国民たちに目をやる。
明らかに、人間とは違う姿の者ばかりだ。
さすがに全員がここに集結しているわけはないが、確かに100を超える人数がいるだろう中に、赤い毛並みを持つものはだれも居なかった。
「さあ、トワ。これからお前の歓迎の宴だ。存分に楽しめ」
そういわれて、宴のテーブルにまた戻る。
色とりどりの食事に果物、気づいたらケーキなどのお菓子も並べられていた。
「どれでも好きなものを好きなだけ食べると良い。すべてお前のための食事だ」
「すごい…、こんなに!」
いままでこんな扱いを受けたことなど、一度もない。
というか、大抵の人間はこんな豪華な食事にありつくことはないだろう。
バルコニー下に集まった国民から、次々に「王様! 王様!」と声が届く。
泣き叫ぶような声もいくつか交じっていた。
(王様のために戦って亡くなった人のご遺族かな…)
現代日本に生まれた永遠には、想像を絶することだ。
悲しくて、涙が出そうだった。
目を伏せる永遠の視線の端で、イグニスの手がスッと上がるのが見える。
するとそれまで叫んでいた声がピタリと止む。
「今度こそ、我は戦況を覆し、これまで好き勝手してきた人間どもとの争いに終止符を打ちたい!」
遠吠えのような、絶叫が響き渡る。
永遠の背中にイグニスが手を添えた。
そして永遠にだけ聞こえる声で、
「トワ、お前は何も言わなくてよい。ただ、凛と佇み、微笑めばよいのだ」
と言った。
そんな難しい事を言われても困る、と永遠は思った。
とりあえず背筋を伸ばして、ぎこちなく微笑んでみる。
「待ち望んでいた【供給者】であるトワが異なる世界より召喚された! 枯渇していた魔力は、トワの魔力によって回復し、我らの力は取り戻されるであろう!」
割れんばかりの拍手と、圧倒されるほどの熱量が押し寄せてきて、永遠は軽はずみにこの世界へ転移してきたのではないかと不安になってしまう。
バルコニー下からは「王様!」「トワ様!」と叫び声が聞こえてくる。
「皆の者! これからも我が国のためによろしく頼むぞ!」
イグニスの声に、バルコニー下の国民たちが答える。
気迫と、歓喜の声に、まるで共鳴するように城が揺れたような気がした。
戸惑う永遠の様子を見て、イグニスは楽しそうに――それはとても悪魔のような恐ろしさだったが――笑った。
「トワ、今この瞬間からお前に目通りをと数多の者たちが押し寄せてくるぞ」
「ええぇ…ッ!?」
「っはは、お前は我らの国を救うたった一人の【供給者】だからな」
「…荷が重いな…はは…」
永遠はバルコニーの下にいる国民たちに目をやる。
明らかに、人間とは違う姿の者ばかりだ。
さすがに全員がここに集結しているわけはないが、確かに100を超える人数がいるだろう中に、赤い毛並みを持つものはだれも居なかった。
「さあ、トワ。これからお前の歓迎の宴だ。存分に楽しめ」
そういわれて、宴のテーブルにまた戻る。
色とりどりの食事に果物、気づいたらケーキなどのお菓子も並べられていた。
「どれでも好きなものを好きなだけ食べると良い。すべてお前のための食事だ」
「すごい…、こんなに!」
いままでこんな扱いを受けたことなど、一度もない。
というか、大抵の人間はこんな豪華な食事にありつくことはないだろう。
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