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第一話『異世界へようこそ』1
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今度は真っ暗な空間に漂うような気持ちだった。遠くから小さく、『……《鑑定》』『……聖女』と言う声が聞こえた。
『いらっしゃい、セイラ……』
凛とした美しい女性の声が響く。
(誰…? さっきの神様とは違う声だ…)
上にも下にも広がるのは夜の闇の様だ。その中に、同じ声が響く。
『世界を頼みます、わたくしの半身…』
意味を理解するより先に、聖良の意識が遠のいた。
眩しい光と共に、聖良は意識を取り戻す。耳に入ってくるのは雑踏の中の様な音。意識がはっきりとしてくると、それまで雑音だと思っていたのは、人の話し声だった。
石造りの床に横たわらされていた体は痛みを訴えていたが、ゆっくりと起き上がる。
「……ここは……?」
目の前に広がっていたのは、小さいころに絵本で読んだ、アラビアンナイトのような世界だった。聖良はスーパーの入り口と神様に出会った空間、それからこの絵本の中の様な場所という目まぐるしい変化に頭がクラクラした。
「聖女様! ようこそおいでくださいました!」
きらびやかな衣装に身を包んだ人たちから、口々にそう声が上がった。
非現実的な世界なのに言葉がわかる事に驚いたが、仙人みたいな神様が、そういう能力をくれた事を思い出した。
お揃いの白い服を着た十数人の人たち、デザインの違う青い服を着た男性が二人、聖良を囲んでいる。
集団の中の一人が、こちらに向かってきた。
背は高く、小麦色の肌に砂色の髪、夜空の様な紺色の瞳の美しい壮年男性。
頭には大きな赤い宝石がついたターバンを巻いている。そして青い服には銀色の糸で美しい刺繍が施されていて、その豪華さは彼の位の高さを物語っている。
その人は、聖良の前に立ち頭を下げた。
「私はこのスウルス王国の王で、パルミエ・ラ・スウルスと申します。さあ、こちらへどうぞ」
聖良に椅子を勧めながらそう言った。
「王様……!」
聖良は立ち上がり、慌てて頭を下げた。
「お楽になさってください。よろしければ、聖女様のお名前をお教えいただけますか」
「私は、御園聖良と申します」
「ミソノ・セイラ様とおっしゃられるのですね。ご丁寧にありがとうございます、聖女様」
「あの……、さっきも女の人の声が聞こえたんですけど、聖女ってなんの事ですか……?」
パルミエ王は首をかしげる。
「この部屋には、聖女様以外に女性は居りませんが……」
「えっ⁈」
パルミエ王の言う通り、あたりを見回しても、その場に女性の姿はなかった。
「でも確かに、女の人が私の名前を呼んで、聖女って言ったんですけど……」
聖良の訴えに周りの人々が顔を見合わせる。
小さ派紋が広がるように、静かな騒めきが起こっていた。
パルミエ王は驚いた表情でつぶやく。
「もしや……女神アルテミス様の御声を……」
パルミエ王の言葉を聞いて、周囲の人たちからざわめきが巻き起こった。
『いらっしゃい、セイラ……』
凛とした美しい女性の声が響く。
(誰…? さっきの神様とは違う声だ…)
上にも下にも広がるのは夜の闇の様だ。その中に、同じ声が響く。
『世界を頼みます、わたくしの半身…』
意味を理解するより先に、聖良の意識が遠のいた。
眩しい光と共に、聖良は意識を取り戻す。耳に入ってくるのは雑踏の中の様な音。意識がはっきりとしてくると、それまで雑音だと思っていたのは、人の話し声だった。
石造りの床に横たわらされていた体は痛みを訴えていたが、ゆっくりと起き上がる。
「……ここは……?」
目の前に広がっていたのは、小さいころに絵本で読んだ、アラビアンナイトのような世界だった。聖良はスーパーの入り口と神様に出会った空間、それからこの絵本の中の様な場所という目まぐるしい変化に頭がクラクラした。
「聖女様! ようこそおいでくださいました!」
きらびやかな衣装に身を包んだ人たちから、口々にそう声が上がった。
非現実的な世界なのに言葉がわかる事に驚いたが、仙人みたいな神様が、そういう能力をくれた事を思い出した。
お揃いの白い服を着た十数人の人たち、デザインの違う青い服を着た男性が二人、聖良を囲んでいる。
集団の中の一人が、こちらに向かってきた。
背は高く、小麦色の肌に砂色の髪、夜空の様な紺色の瞳の美しい壮年男性。
頭には大きな赤い宝石がついたターバンを巻いている。そして青い服には銀色の糸で美しい刺繍が施されていて、その豪華さは彼の位の高さを物語っている。
その人は、聖良の前に立ち頭を下げた。
「私はこのスウルス王国の王で、パルミエ・ラ・スウルスと申します。さあ、こちらへどうぞ」
聖良に椅子を勧めながらそう言った。
「王様……!」
聖良は立ち上がり、慌てて頭を下げた。
「お楽になさってください。よろしければ、聖女様のお名前をお教えいただけますか」
「私は、御園聖良と申します」
「ミソノ・セイラ様とおっしゃられるのですね。ご丁寧にありがとうございます、聖女様」
「あの……、さっきも女の人の声が聞こえたんですけど、聖女ってなんの事ですか……?」
パルミエ王は首をかしげる。
「この部屋には、聖女様以外に女性は居りませんが……」
「えっ⁈」
パルミエ王の言う通り、あたりを見回しても、その場に女性の姿はなかった。
「でも確かに、女の人が私の名前を呼んで、聖女って言ったんですけど……」
聖良の訴えに周りの人々が顔を見合わせる。
小さ派紋が広がるように、静かな騒めきが起こっていた。
パルミエ王は驚いた表情でつぶやく。
「もしや……女神アルテミス様の御声を……」
パルミエ王の言葉を聞いて、周囲の人たちからざわめきが巻き起こった。
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