【完結】スローテンポで愛して

鈴茅ヨウ

文字の大きさ
2 / 123

日常は崩れないからこその日常2

しおりを挟む
 そんなこんなで、早十三年。三十三歳になった日和は、各部署に迷惑をかけるようなミスもせず、特に華やかな活躍もしないまま、ただ粛々と職場の衛生環境が良くなるように清掃業者を吟味したり、大量に出るシュレッダーの紙ゴミをリサイクルしてトイレットペーパーにして卸してくれる業者との契約を押し進めたり、地味ながらも充実した日々を送っていた。
 八時三十五分。
 総務部の入り口に置かれた機械にIDカードをかざす。この社員IDはタイムカードの代わりだ。
 始業時間は九時からなので、あと十五分ほど部下たちはやってこない。
 総務部長は、すでにデスクでコーヒーを飲みながら社内報の最終稿を読んでいた。
「おはようございます、部長」
「おう、三上、おはよう。相変わらず元気ないな。今日、月曜だぞ?」
「…はあ…月曜だから元気が無いのだと思いますが…」
「三上ぃ、週の始まりに元気がないなんて、オレより十も年下なのに、オレ達の年代が言うような事言うなよ」
「ははは…」
 斎藤部長は豪快かつ、大らかな人である。失言が少なく、部下に慕われている。
 この大らかさに救われている部下たちは多い。ただ、少々雑談が長いのが玉に瑕なところだ。
 そんな上司との会話をやんわりと辞して、始業前のルーチンワークに入る。
 自分のデスクの上をダスターで拭き、それから給湯室へ向かう。
 食器棚の前の洗いカゴには、使用して洗われた来客用の湯飲みや急須、茶たくが置かれている。それらの備品も総務課の管理なので、中が茶渋で汚れていないか、茶碗のフチが欠けていたり、割れたりしていないかをチェックしてから食器棚に戻す。ヤカンでお湯を沸かしながら、フローリング用ワイパーで床を拭く。
 沸いた湯を保温ポットに入れて、茶葉の残量を確認するなど、全てを整えてから給湯室を出る。
 これが月曜から金曜までの毎朝の様子だ。
 日和は、今日も一日、どの部署の誰も大きなケガをしたり、事故をしたり、取り返しのつかないような大損害を出したりしない事を願って…、
「三上課長、すみません、営業部のコピー機がまた詰まってしまったんですが…!」
 と考えていたが、そう上手くは行かなかった。
 営業部の女性社員が、給湯室に血相を変えて飛んできた。営業部は気性の激しい人達が多いせいか、物の扱いが少々乱暴だ。
 備品は備品であって私物ではないし、総務から丁寧に扱ってくれと再三お願いしているのだが、面倒くさがられてあまり守られないために、営業部のコピー機は度々詰まる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

【完結】取り柄は顔が良い事だけです

pino
BL
昔から顔だけは良い夏川伊吹は、高級デートクラブでバイトをするフリーター。25歳で美しい顔だけを頼りに様々な女性と仕事でデートを繰り返して何とか生計を立てている伊吹はたまに同性からもデートを申し込まれていた。お小遣い欲しさにいつも年上だけを相手にしていたけど、たまには若い子と触れ合って、ターゲット層を広げようと20歳の大学生とデートをする事に。 そこで出会った男に気に入られ、高額なプレゼントをされていい気になる伊吹だったが、相手は年下だしまだ学生だしと罪悪感を抱く。 そんな中もう一人の20歳の大学生の男からもデートを申し込まれ、更に同業でただの同僚だと思っていた23歳の男からも言い寄られて? ノンケの伊吹と伊吹を落とそうと奮闘する三人の若者が巻き起こすラブコメディ! BLです。 性的表現有り。 伊吹視点のお話になります。 題名に※が付いてるお話は他の登場人物の視点になります。 表紙は伊吹です。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

青は藍より出でて藍より青し

フジキフジコ
BL
ヤクザの跡取りの高校生とその同級生の話。高校生からはじまり40代になるまで続きます。 【青は藍より出でて藍より青し】本編。高校時代。 【番外編/白い花の家・月を抱く】葉月と綾瀬が出会った頃の話。 【番外編/Tomorrow is another day ・Sweet little devil】綾瀬と高谷の高校時代の短いエピソード。 【朱に交われば赤くなる】本編「青は藍~」の続き。 【狭き門より入れ】本編「朱に交われば~」の続き。7年後のお話になります。 【番外編/BLEED】篤郎の事情 【三代目の結婚】本編「狭き門~」の続き。綾瀬の結婚問題。 【番外編/刺青】高谷×綾瀬のいちゃいちゃ 【瑠璃も玻璃も照らせば光る】本編「三代目の結婚」の続き。主役は篤郎です。エピローグに高谷×綾瀬のいちゃ。 【番外編/古傷】高谷×綾瀬のいちゃいちゃ 【番梅花は蕾めるに香あり 】本編「瑠璃も玻璃~」の続き。高谷と男子高校生の話。 【天に在らば比翼の鳥】本編の完結編。 他シリーズ『チェリークール』の【番外編】「東京ミスティ」「東京ミスティ2」「微笑みの行方」に綾瀬と高谷が出ています。

愛され少年と嫌われ少年

BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。 顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。 元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。 【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】 ※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。

僕の部下がかわいくて仕方ない

まつも☆きらら
BL
ある日悠太は上司のPCに自分の画像が大量に保存されているのを見つける。上司の田代は悪びれることなく悠太のことが好きだと告白。突然のことに戸惑う悠太だったが、田代以外にも悠太に想いを寄せる男たちが現れ始め、さらに悠太を戸惑わせることに。悠太が選ぶのは果たして誰なのか?

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

うちの鬼上司が僕だけに甘い理由(わけ)

藤吉めぐみ
BL
匠が勤める建築デザイン事務所には、洗練された見た目と完璧な仕事で社員誰もが憧れる一流デザイナーの克彦がいる。しかしとにかく仕事に厳しい姿に、陰で『鬼上司』と呼ばれていた。 そんな克彦が家に帰ると甘く変わることを知っているのは、同棲している恋人の匠だけだった。 けれどこの関係の始まりはお互いに惹かれ合って始めたものではない。 始めは甘やかされることが嬉しかったが、次第に自分の気持ちも克彦の気持ちも分からなくなり、この関係に不安を感じるようになる匠だが――

処理中です...