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驚きの落とし物6
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名刺でこうなのだから、自分には場違いなお店なんだろうな、と考えて、日和はそこで気づいた。自分の名刺を渡していない。
日和は慌ててスーツのジャケットから名刺を取り出して、
「じゃあ…近いうちに、仕事の帰りに寄らせてもらいます。これ、俺の名刺です」
と言って渡した。
「ありがとう。名刺まで出して貰っちゃって申し訳ない」
「良いんですよ」
副島は、真剣な表情で日和の名刺をしげしげ眺めている。
「俺の名刺、何か変ですか?」
「あっ、いや、何でもないよ。若いのに課長さんなんてスゴいなと思って」
何かありそうな様子だったが、本人が言いたく無さそうな様子なので、日和はそれ以上は聞かない事にした。
「あ、そうだ。…図々しいついでに、…ここの住所でタクシー呼ばせてもらっていい?」
「ええ、大丈夫です。そんな事、気にしなくても良いのに」
日和が思わず笑うと、つられたように副島も笑った。
「いやー、ほんと、良い人に助けてもらって助かったよ~。通りかかったのが三上さんで、ホントにツイてた!」
「そんな、とんでもない」
副島はすごく良い人なのではないかと思った。接客業で働いている人の中でも、特に人とのやり取りに長けた人だ。こんな事さえなければ、この人と自分は、一生言葉を交わす事なんて無かっただろうな、と日和は思った。
「体調は…どうですか? 無理しないで、帰りがけに病院とか、行ってくださいね。あと、警察も」
「うん、ちゃんと寄るよ。さっき目が覚めた時よりはずっと体調も良いし、普通に帰れそう」
「それは良かったです」
「いや、本当に助かりました、ありがとう」
「いいえ、どういたしまして」
「じゃあ…、…タクシー呼ぶね」
副島はスマホで、クレジットカードが使えるタクシーを呼びつつ、日和が住所を後ろから言うのを伝えていた。
エントランスの前に来たタクシーを見送りながら、副島は最後に、
「今度、本当にうちの店来てね。サービスするから!」
と言って、ニコニコと手を振りながら乗り込んで行った。
日和はその様子を見て、具合が悪いだろうにサービス精神旺盛な人だな…と妙に感心してしまった。
副島が乗ったタクシーを何となく見送り、部屋に帰る。気付けば、時刻は午前0時目前だった。
久しぶりに会社の人以外と話した為、気疲れもあったが、不思議となにか充実したような気持ちになっていた。
明日が休日の土曜日で助かった。すこし朝寝坊しても許される。
副島に出したお茶のグラスを洗ってから、日和はベッドに横になった。
日和は慌ててスーツのジャケットから名刺を取り出して、
「じゃあ…近いうちに、仕事の帰りに寄らせてもらいます。これ、俺の名刺です」
と言って渡した。
「ありがとう。名刺まで出して貰っちゃって申し訳ない」
「良いんですよ」
副島は、真剣な表情で日和の名刺をしげしげ眺めている。
「俺の名刺、何か変ですか?」
「あっ、いや、何でもないよ。若いのに課長さんなんてスゴいなと思って」
何かありそうな様子だったが、本人が言いたく無さそうな様子なので、日和はそれ以上は聞かない事にした。
「あ、そうだ。…図々しいついでに、…ここの住所でタクシー呼ばせてもらっていい?」
「ええ、大丈夫です。そんな事、気にしなくても良いのに」
日和が思わず笑うと、つられたように副島も笑った。
「いやー、ほんと、良い人に助けてもらって助かったよ~。通りかかったのが三上さんで、ホントにツイてた!」
「そんな、とんでもない」
副島はすごく良い人なのではないかと思った。接客業で働いている人の中でも、特に人とのやり取りに長けた人だ。こんな事さえなければ、この人と自分は、一生言葉を交わす事なんて無かっただろうな、と日和は思った。
「体調は…どうですか? 無理しないで、帰りがけに病院とか、行ってくださいね。あと、警察も」
「うん、ちゃんと寄るよ。さっき目が覚めた時よりはずっと体調も良いし、普通に帰れそう」
「それは良かったです」
「いや、本当に助かりました、ありがとう」
「いいえ、どういたしまして」
「じゃあ…、…タクシー呼ぶね」
副島はスマホで、クレジットカードが使えるタクシーを呼びつつ、日和が住所を後ろから言うのを伝えていた。
エントランスの前に来たタクシーを見送りながら、副島は最後に、
「今度、本当にうちの店来てね。サービスするから!」
と言って、ニコニコと手を振りながら乗り込んで行った。
日和はその様子を見て、具合が悪いだろうにサービス精神旺盛な人だな…と妙に感心してしまった。
副島が乗ったタクシーを何となく見送り、部屋に帰る。気付けば、時刻は午前0時目前だった。
久しぶりに会社の人以外と話した為、気疲れもあったが、不思議となにか充実したような気持ちになっていた。
明日が休日の土曜日で助かった。すこし朝寝坊しても許される。
副島に出したお茶のグラスを洗ってから、日和はベッドに横になった。
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