【完結】スローテンポで愛して

鈴茅ヨウ

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お言葉に甘えて7

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「ええとね…、お客さんにはこういう事しないんだ、基本的には…、一応…、こっちは公私を分けたいから…。ただ、三上さんとは仕事で知り合った人でも、店に来て知り合った人でもないし…いいかな、と」
「…はあ…」
「仕事の利害関係とか、面倒な人間関係とかない人と、こう、他愛もない話したりとか、飲みに行ったりとかしたいなって思ってて…それで…、三上さんさえ良かったら…僕、だいぶ年上だけど、えーっと、そのー…友達…に、なってもらえないかなあと…」
 そこまで言われて、日和はハッとした。
「すいません、空気読めなくて! 嫌なんて全然! 良いんですか?」
「いや、お願いしてるのはこっちだよ」
 日和の頓珍漢な答えに、副島は例の少年の様な顔で笑った。
「それも、そうですね…」
「仕事に出てる時間は、夜は十八時から朝はお客さんが帰るまでだから…、なかなか外で飲むのとかは無理かもしれないけど」
「大変ですね…。それなら、休みの日ならどうですか?」
「うちは水曜が固定の休みだから、合わないかなーって思ったんだけど…」
「大丈夫ですよ、たぶん。俺、友達全然いなくて、仕事場と家の往復みたいな生活してるんで」
 日和が苦笑いを浮かべていると、副島は、
「じゃあ、今度の休み、仕事の帰りにでもいいから、どっかで少し飲もうよ」
 と言ってくれた。
「嬉しいです、楽しみにしてます」
 日和はスマホを取り出して、紙に書いてあるアドレスを登録していく。
 それを見ながら、
「よかった。気持ち悪がられるんじゃないかと思って、ひやひやしてたんだよね」
副島はそんなことを言った。
「どうして…ですか?」
「いや…、三上君よりだいぶ年上のおじさんがね、プライベート用の携帯のアドレス渡すとか…、なんか…、へんな感じしない? 狙ってる~みたいな」
「…あぁ!」
 そう言う事か、と俺が膝を打つのを見て、副島が噴き出した。
「なんだ、気にしすぎだったのかぁ」
「俺にそういう魅力を感じる人がいるなんて思ってないので、そういう事は考えませんでした」
 副島の表情が何となく固まったような気がして、日和は首を傾げる。
「失礼な事聞くようだったらごめんね…? 三上さんって、恋人は…?」
「居たら、週末の夜に来ないと思います」
 日和は自分の自虐的な言い回しについ苦笑いを浮かべてしまうと、副島は慌てたように手をぱたぱた振った。
「すいません、プライベートに立ち入って」
「いや、良いですよ。事実ですし」
登録したアドレスに、『三上です、よろしく』と短いメッセ―ジと電話番号をつけて送信する。すぐにどこからかバイブ音が聞こえて来た。
「アドレス、送っておきました」
「ありがとう。じゃあ、…今度の休みの前に連絡入れるね」
「はい。じゃあ…そろそろ。今日はごちそう様でした」
「いえいえ、こちらこそ楽しい時間をどうもありがとうございました」
 そんなやり取りをしながら、日和は副島の店を出た。時刻は二十一時を少し回った所だった。
 もしかしたら、社交辞令的な事だったのかもしれない。それでも、嬉しかった。まさか、相手から友達になりたいと言ってくれるなんて。
(もし社交辞令だったとしたら、本気にして連絡するのは…、何か言われたりするかもしれないなあ。でも…さすがにそんな風に考えるのは副島さんに失礼かな…)
そんなことを考えながら、日和はいつもとは違う感覚で帰路にについた。
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