スローテンポで愛して

木崎 ヨウ

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初めて家に行った日3

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「ンっ!?」
 ぬるりと舐められて、逃げそうになる。そうか…恋人ならこういうキスも…するよな…と、妙に冷静になる。
 触れるだけと言っていたのに、日和の一瞬の隙をついて、副島に舌を絡め取られた。
「ンッ?!…っ、…んん…」
 舌を吸われて、甘ったれた声が零れる。
「日和…」
 唇をくっつけたままで、副島が熱い声が日和を呼ぶ。
「たかひろ、さ…っ、んん…」
 副島が服の上から身体を撫でるので、それがくすぐったい。
 気づけばソファーに押し付けられるようにされていて、逃げられない。日和は逃げたくて身をよじる。
 日和は無駄な抵抗をしていると解っているのに、経験した事の無い行為が始まりそうな恐怖に、身体が勝手に逃げてしまう。
 副島に執拗に舌を吸われて、絡め取られて柔らかく噛まれて、二人分の飲み込みきれない唾液が口の端から溢れていく。
 溺れそうだ、と日和は副島の胸を叩いた。
「ごめん…苦しかった…?」
 やっとキスが終わって、副島の身体が離れていく。
「は…っ…ぁ…」
 日和が唾液を飲み込んだ拍子に、ごくっと喉が鳴った。ビショビショになった口元を手の甲で拭うと、蕩けそうな微笑みで日和を見下ろす副島と目が合った。
「日和…トロトロで可愛い」
 自分がそんな風に言われる様子になっているなんて、日和は恥ずかしくてたまらなかった。
 顔を隠そうとしてみても、ソファーの上ではうまく行かない。
「き、キスだけって…っ、軽く、するだけって…! ……こんな、こんなキス…」
「ごめんね…、欲が出ちゃった…」
 そうして日和が藻掻いている間にも、副島の手は日和の身体を撫でる。大きな手のひらだ。男性の手だと解るのに不快感はない。
 それどころか、くすぐったい感覚を拾ってしまって、日和は身を捩ってしまう。
 不馴れな自分を呪った。
「日和…可愛い…、こういうの弱い?」
「わか、りません…っ、こういうコト、されたことないっ…」
 副島は心なしか嬉しそうだ。
「…そうなんだ。じゃあ、日和がしたこと無い事、たくさんしてあげたい…」
 甘い囁きに、日和は心臓がどくどくと脈打つのを感じていた。
「もう…いっぱい、してもらってます…」
 そう正直に言えば、副島は嬉しそうな顔で日和にまたキスをする。
「そんな可愛い事を言われたら、止まらなくなっちゃうよ?」
 日和は副島に頬や目元に唇を柔らかく押し当てられて、恥ずかしくて、でも、嬉しい。
「た、だめです…っ」
「だめなの…?」
「ダメ、です…っ。今まで…、こんなにたくさん…、キスした事ない…」
 日和はずっと、自分は性的に淡泊な方だと思っていた。でも、それはただ、こういう事を知らなかっただけだったんだと、副島にキスをされるたびに思う。
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