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デートの前に2
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何だろう、と思っていると副島は眉を下げて笑った。
「何の計算もなくそういうコトを言うんだから、堪らないよ」
「え…っ」
「そんな可愛い事言われたら、帰してあげられなくなっちゃうって」
くすくす笑っている副島の様子を見るとそれは本気に思えなかったけれど、言われた内容の恥ずかしさに、日和は慌ててしまった。
「そん、そんなこと、いわれてもっ、困りますからっ」
「大丈夫、大丈夫、解ってるよ。さて、どうぞ」
手元にパナシェが出される。いつもの様にチーズと生ハム乗せクラッカーも一緒だ。
どうも、と声をかけて、いつもの様にクラッカーを齧ってからパナシェを飲む。
ポケットから煙草を出したところで、副島が手元に灰皿を出してくれた。
「タバコ、変えたんですね」
副島は、日和の手元に置かれたタバコの箱がいつもと違っている事に気が付いた様で、そう聞いて来た。
「そんなに吸わないんですけど、…ちょっと気分を変えてみようと思って」
値上がりで変えたというのが少し恥ずかしかった日和はそんな事を言って誤魔化した。
さらに話を突っ込まれそうになったところで、他のお客が入って来たので会話が中断した。
少し、助かったなと思いながら、日和はパナシェとクラッカーを堪能する。
しばらくして、日和よりも後に来た客が先に帰ってしまったので、また二人きりになった。
「…そろそろ…帰ります」
「そっか。帰っちゃうのか。残念」
「…日曜…楽しみにしているので…」
「うん、僕も」
会計の時、お釣りの受け渡しで指先が触れて、日和はたったそれだけの事で赤くなってしまった。
「僕の事、意識してくれるようになったみたいで、とっても嬉しいな」
するりと手の甲を撫でられて、不自然なほどに日和は動揺した。
「な…慣れていないので…そういうのは…っ」
「うん。反応が初々しくて可愛いよね」
これだからホストは…! と、日和は思わず毒付いた。
「だ、だめですそういうの…恥ずかしいです」
「僕と付き合っている間にすぐ慣れるよ」
「いや…それはそれで問題あると思うんですけど…っ」
「僕としては、慣れて貰わない方が良いんだけどね」
副島はまたクスクスと笑った。
帰るタイミングを逃して、なんとなく見つめ合う事になってしまう。
嬉しそうに、照れくさそうにはにかむ副島の表情につられて、日和は照れ臭くて仕方なくなった。
「…あの…」
「あっ、ごめんね。日曜日、楽しみにしてるよ」
「はい、俺もです。…じゃあ、帰ります」
日和は、にこりと微笑んで副島の店を出た。こんなに、後ろ髪を引かれるような気持ちは始めてだった。
「とりあえず…日曜日だな…」
デートプランは考えられていない、こんなに緊張して、ドキドキするなんて、いつ以来の事だろう…。
日和はそんなことを思いながら、帰路に着いた。
「何の計算もなくそういうコトを言うんだから、堪らないよ」
「え…っ」
「そんな可愛い事言われたら、帰してあげられなくなっちゃうって」
くすくす笑っている副島の様子を見るとそれは本気に思えなかったけれど、言われた内容の恥ずかしさに、日和は慌ててしまった。
「そん、そんなこと、いわれてもっ、困りますからっ」
「大丈夫、大丈夫、解ってるよ。さて、どうぞ」
手元にパナシェが出される。いつもの様にチーズと生ハム乗せクラッカーも一緒だ。
どうも、と声をかけて、いつもの様にクラッカーを齧ってからパナシェを飲む。
ポケットから煙草を出したところで、副島が手元に灰皿を出してくれた。
「タバコ、変えたんですね」
副島は、日和の手元に置かれたタバコの箱がいつもと違っている事に気が付いた様で、そう聞いて来た。
「そんなに吸わないんですけど、…ちょっと気分を変えてみようと思って」
値上がりで変えたというのが少し恥ずかしかった日和はそんな事を言って誤魔化した。
さらに話を突っ込まれそうになったところで、他のお客が入って来たので会話が中断した。
少し、助かったなと思いながら、日和はパナシェとクラッカーを堪能する。
しばらくして、日和よりも後に来た客が先に帰ってしまったので、また二人きりになった。
「…そろそろ…帰ります」
「そっか。帰っちゃうのか。残念」
「…日曜…楽しみにしているので…」
「うん、僕も」
会計の時、お釣りの受け渡しで指先が触れて、日和はたったそれだけの事で赤くなってしまった。
「僕の事、意識してくれるようになったみたいで、とっても嬉しいな」
するりと手の甲を撫でられて、不自然なほどに日和は動揺した。
「な…慣れていないので…そういうのは…っ」
「うん。反応が初々しくて可愛いよね」
これだからホストは…! と、日和は思わず毒付いた。
「だ、だめですそういうの…恥ずかしいです」
「僕と付き合っている間にすぐ慣れるよ」
「いや…それはそれで問題あると思うんですけど…っ」
「僕としては、慣れて貰わない方が良いんだけどね」
副島はまたクスクスと笑った。
帰るタイミングを逃して、なんとなく見つめ合う事になってしまう。
嬉しそうに、照れくさそうにはにかむ副島の表情につられて、日和は照れ臭くて仕方なくなった。
「…あの…」
「あっ、ごめんね。日曜日、楽しみにしてるよ」
「はい、俺もです。…じゃあ、帰ります」
日和は、にこりと微笑んで副島の店を出た。こんなに、後ろ髪を引かれるような気持ちは始めてだった。
「とりあえず…日曜日だな…」
デートプランは考えられていない、こんなに緊張して、ドキドキするなんて、いつ以来の事だろう…。
日和はそんなことを思いながら、帰路に着いた。
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