【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)

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80 それでもできないこと

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 フランソワーズの策略を見抜けたのは、フォースが記録魔法で真実を浮き彫りにしたから。
 リリアンナの奇襲から無傷で生還できたのは、フォースが身を挺して戦ってくれたから。
 そしてシャーロットをこの運命の輪から救うことができたのは、フォースが王族としての威光を正しく発揮したから。

 ……全部フォースさんのおかげ……わたしはなにも……。
 リズがそう思ったとき、しかしヴォクス夫人が口を挟む。

「確かにフォース様が貴女を助けたのは事実です。けれど、本当にそれだけでしょうか?」
「え……?」
「貴女は自覚がないようですが、フランソワーズの件では、貴女が『映像』という概念をフォース様に教えたからこそ、フォース様はその映像を投影し、一早く過去の事実と近い未来に迫りくる策略に気付くことが出来ました。これが映像ではなく、従来の文字情報による記録の解読であれば、事実と策略を把握するのに数日は要したでしょう」
「それって、つまり……?」
「フォース様や私達がフランソワーズの策略に気付いて対処法を講じようとするより前に、リーゼロッテ様のほうがこの王都から追放されてしまっていたということです。フランソワーズの策略を直接把握出来たのはフォース様の記録魔法ですが、そのきっかけはリーゼロッテ様の助言があったからなのですよ」
「…………」

 加えて、それは婉曲的で間接的ではあるが、リズ自身が自分の身を守ることに寄与したともいえるのである。

「またシャーロットさんの件に関しても、フランソワーズとリリアンナの件に対する貴女とフォースの対応を知っていたからこそ、私は貴女達に依頼しました。貴女には何かがある、貴女ならきっと出来る、そう思ったからこそ依頼し、そして貴女は見事思いつき、それをフォースを介することで為し遂げたのです」
「…………」
「だから、本当にありがとうございます。シャーロットさんのこと」

 この国でも王族の次に権力を持つとされる、最上流の貴族であるヴォクス家の夫人に直接お礼を言われているのに……リズの心には感激も驚喜も湧いてはこなかった。その代わりとして抱いたのは……疑問。
 ……ヴォクス夫人はスクエアさんのお母さんなのに……。という疑問だった。

「……ヴォクス夫人……聞いても良いですか……?」
「何でしょうか?」
「どうして夫人はそんなことを、シャーロットさんを助けてくださいなんて言ったんですか? だって夫人はスクエアさんのお母さんで、お母さんだから、子供の幸せや結婚を望むのが当たり前なんじゃないですか?」
「……誤解してもらっては困りますが、私も確かに一人の母親です。我が子の幸せを願うのは、至極当然の心境でもあります」

 しかし夫人は言うのだ。

「ですが、だからといってその為に誰かを不幸にすることは間違っているとも思っています。私は親馬鹿かもしれませんが、他人の不幸までは願いません」
「……夫人……」
「だから、本音を言うことが許されるならば、リーゼロッテ様、貴女のことも助けてあげたいと思っているのです」
「…………」

 リズは複雑な気持ちになってしまう。夫人がそう思っているのなら、いますぐ助けてほしいとも思う。
 しかし反面、それをしないということは……それができないということなのだろうと察してしまうのだ。夫人は確かに最高位の貴族であるが、それでもできないことがあるのだと。

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