【完結】 【魔女と蔑まれた私。実は神託の聖女でした?-命を弄ぶ回復魔法使いと蔑まれた私の物語-】

はくら(仮名)

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【神託の聖女】


 これはいまからいくらか前の話だ。
 私が王宮の自分の部屋で魔法書を読んでいると、ドアにノックが響いた。

「私です。王太子殿下、入ってもよろしいですか?」

 それは王宮の占術士の声だった。

「構わない。入れ」
「失礼致します」

 この国を統治している王宮、引いては国王もまた、国内外の政務や軍事に迷うことがある。
 そのような時に、占術士の言葉を聞いて、参考にすることもあった。

「何の用だ?」
「……神託がございました。運命の女神様からのご神託でございます」
「何だと?」

 占術士はその役職の通り、占術によって様々な事柄を占うことが出来る人物だ。
 そして我が国や外国の歴史の中には、神からの神託を授かる占術士も存在したとされている。

「それは本当か⁉」
「はい。女神様は夢の中で仰いました。『『運命の聖女』が貴方の国の辺境伯領にいます。名はユキア=レアフ。彼女を保護し、王宮の力として役立てなさい』と」
「ユキア=レアフ……レアフ伯爵の一人娘か」
「はい。ですが聞いた噂によると、レアフ伯爵もその夫人もいまは既にお亡くなりになり、現在はユキア様の義父母が実権を握っているようです」
「何? 義父母? 爵位の継承権は実子であるユキア=レアフにあるはずだぞ?」
「継承権自体はそうでございますが、義父母はレアフ様がまだうら若い女学生だということを理由に、後見人として爵位を借用しているようです。しかし実際には爵位を濫用し、ユキア様を蔑ろにして、ゆくゆくはレアフ家を乗っ取るのでは……との黒い噂も流れています」
「…………」

 私は愕然としてしまった。
 レアフ家といえば、代々良家として伯爵を担ってきた家系だった。
 ユキア=レアフの実父もまた領地経営の才能を遺憾なく発揮し、領民からの信頼も厚く、だからこそ王家は安心して辺境領の経営を一任していた。

「……まさか、レアフ家がいまそんな状態に陥っているとは……」
「ユキア様の義父母が王家への報告を誤魔化していたようです。領民の不満を弾圧し、以前よりも多額の税を課して、しかし王家にはいままで通りに納めていたようです」
「…………。向かうぞ、レアフ伯領に」
「かしこまりました」

 私達は部屋を出て、転移魔法が使える王宮直属の魔法士の元へと向かっていく。
 長い廊下の最中、占術士が補足の話をした。

「ユキア=レアフ様は『運命の聖女』とのことですが、より具体的には怪我や病気を癒す聖女のようです」
「高レベルの回復魔法の使い手ということか」
「より正確には、『神聖魔法』の使い手ということになります。運命の女神様のご加護を受けております故」
「『神聖魔法』……まさか私が生きている間に、そのような稀有な存在に出会えるとはな」

 この世界に存在する魔法は、『魔王』と呼ばれる者の力の一部……正確には力を扱う権利の一部を借り受けて、魔法を行使している。
 しかし『神聖魔法』に関しては魔王からではなく、『神』及びその一族の力の権利の一部を借り受けることになる。
 どの神や神族に借りるかによっても異なるが、通常の魔法とは仕様や効果が異なり、中にはまさしく奇跡としか思えないことが出来るものもあると文献で読んだことがある。

「細かい分類としては、治療を主とした『神聖回復魔法』ということになるでしょう」
「命を運ぶ聖女……まさしく『運命の聖女』の名に相応しいな」

 そんな会話をしている間に、魔法士のいる部屋へと到着する。
 私の姿を見た魔法士は驚いていた。

「殿下? わざわざ私の部屋にご足労頂かなくとも、お呼びくだされば向かいましたのに」
「緊急の用事だ。いてもたってもいられなくてな。早速で悪いが、レアフ伯爵家までの転移を頼む」
「レアフ家まで? 何でまた……?」
「ユキア=レアフが『運命の聖女』だという神託があったそうだ」

 占術士が口を開いた。

「説明は私から致します」

 私にしたのと同じ内容の説明を、若干かいつまんで占術士が説明していく。
 魔法士は驚きながらも、事情を理解したようだ。

「分かりました。ではレアフ家まで転移の準備を始めますので、少しお待ちください。ちなみに、国王陛下にご連絡は?」
「後でする。いまはユキア=レアフの保護が最優先だ」
「かしこまりました」

 そうして私達はレアフ家へと転移していった。
 その時レアフ家に義父母と義姉はいなかった。無駄に豪華な馬車に乗って貴族の社交パーティーへと外出したそうだった。
 本来の伯爵家であるユキアを無視し、放置して。

 私は内心憤りを感じたが、これは絶好のチャンスでもあった。
 義父家族がいない間に、ユキアの保護と使用人達への聞き込みを終わらせることにした。



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