異世界チートレイザー

はくら(仮名)

文字の大きさ
135 / 325
【第四幕】 【王都】

その五十五 王都へ入れないってどういうこと……⁉

しおりを挟む

 かしらたち盗賊団と金髪の少女を乗せた巨大白ネズミは、星空の下、草原を進んでいく。その間、金髪の少女は視界の先を見据えたまま、一言も口を開かなかった。

 そんな真剣な様子の彼女を横目に見つつ、盗賊団の若い男が、かしらにひそひそ声で言う。

「おかしら、俺分かっちゃいましたよ」
「何がだ?」
「このシスターさんを目的地まで運んだら、その見返りとして、ぼったくるってわけですね。もしくは運ぶ途中で有り金全部奪って、そのあとどっかに放り出すって寸法でしょ。もう、そんなことなら早く言ってくれればいいのに!」

 かしらが若い男の頭に拳骨を振り下ろした。

「いった!」
「おめーはもう黙れ! じゃねーと、おめーを放り出すぞ!」
「ええええ……」

 かしらの考えていることが分からず、若い男は戸惑いの声を漏らす。

 そうしているうちにも白ネズミは草原を駆け抜けていき、途中にあった小さな町を通り過ぎて……しばらくの時間が経過してから、背の高い壁が見えてきた。

「見えてきた……王都だわ」

 金髪の少女がつぶやき、かしらたちに顔を向ける。

「ここで止めて」
「ん? まだ距離あるし、近くまで送っていくぜ?」

 答えたかしらに、しかし彼女は遠慮の意を示す。

「ありがとう。でも、こんな大きなネズミのまま近付いたら、魔獣が襲ってきたって間違えられちゃうかもしれないから。さっきの馬車の御者みたいに」
「ああ、なるほどね。確かにそんなことになったら、面倒だな」

 下手をしたら、王都にいる憲兵たちや冒険者たちに攻撃されてしまうかもしれない。かしらは巨大白ネズミの身体をトントンと軽くたたいて、

「ストップだ、ネズ公。ここで降りて、あとは歩いていくぞ」
「ヂュウ」

 彼らが草原に降り立ち、身体を小さく戻した白ネズミがかしらの肩に乗る。かしらが金髪の少女に言った。

「王都までまだ距離あるし、護衛も兼ねて送っていくぜ。シスターさんをここまで連れてきといて、最後の最後でなんかに襲われましたじゃ、寝覚めが悪いからな」

 金髪の少女は目測するように、一度王都の外壁のほうを見る。確かに外壁まではまだ距離があり、到着まではいくらか時間が掛かるだろう。

 なので、ここは素直に相手の提案を受け入れることにした。

「ありがとう。お願いするわ」
「おうよ」

 威勢よく応じるかしらの背後で、若い男がぼそりと言う。

「……俺たち、盗賊団なのになあ……」

 その若い男の頭を、若い女がひっぱたいた。


 王都の外壁の前、そこには警備兵の詰め所が設けられている。ここにいる警備兵たちによって王都を囲む外壁は警備され、魔獣や他国の軍が襲撃してきたときなど、何かしらの有事の際に迅速に王家へ報告、およびその有事への対処をおこなっている。

 またこの詰め所では、外壁の門を通る際の通行証の確認もしていた。

「王都へ入れないってどういうこと……⁉」

 閉まっていた外壁の門を開けてもらおうと、金髪の少女はそこにいた警備兵に声をかけたのだが、警備兵は彼女に二、三の質問をして、その返答を聞くと、厳然な態度を崩さないまま応じるのだった。

「通行証をお持ちでないのですよね。であるならば、この門を通すわけにはいかないのですよ」
「そんな……」

 金髪の少女はショックを受ける。彼女のそばにいた、かしらが警備兵へと言った。

「そこをなんとかできねえのか? 見りゃ分かるだろうが、彼女はシスターさんなんだ。王都の修道会に問い合わせるなりして、彼女を通してくれよ」
「そんなこと言われましてもね……彼女が本当にシスターだとしても、ここを通るには通行証が必要なんですよ。そういう規則なので」
「やれやれ。融通が利かねえなあ」

 かしらは嘆息を漏らす。

 彼らの話を聞いて、気を取り直した様子の金髪の少女が言った。

「それじゃ、その通行証っていうのはどこでもらえるのよ?」
「近くの町で発行しています」
「分かったわ。それじゃいまからその町に行って……」

 踵を返す彼女に、警備兵は付け加えるように言う。

「ですが、今日はもう夜も遅いですので。通行証を発行できるのは、どんなに早くても明日の朝になると思いますよ」
「……っ⁉」

 金髪の少女は立ち止まり、もう一度警備兵のほうへ顔を向け、口を開きかけて……。

 それじゃあ遅いの! いますぐここを通してよ!

 そう言おうとした気持ちをぐっとこらえて、彼女は言葉を飲み込んだ。いまここでそんなことを言ったところで、事態は好転しない。通行証を見せなければ、この外壁の門は通れないのだから。

 むしろ、そう言って無理矢理通ろうとすれば、警備兵たちに危険人物と判断されてしまうかもしれない。ここは一旦退いたほうがいいだろう。

「……教えてくれてありがとう。とにかく一度近くの町に行ってくるわ」

 金髪の少女はそう言って、警備兵に背を向けた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...