【完結】 『未熟』スキル 最強ではないが相手を最弱にすれば関係ない ~かつてパーティーを追放された者の物語~

はくら(仮名)

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第二話 ルタ

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「いまのうちに避けろ!」
「……⁉」

 突然の声に少女が目を開く。眼前のエビルボアは確かに遅くはなっているが、それでも直撃すれば大ダメージは避けられない。
 なぜエビルボアは遅くなったのか? いまの声は誰なのか? 疑問が頭を駆け巡ったが、それでもいま自分が真っ先にすべきことを直感して、少女は横跳びにエビルボアの突進を回避した。
 魔物は木の幹へと直撃し、凄まじい衝撃音を響かせて木が倒れていく。巨体が停止したその一瞬の隙をついて、少女は身体に力を込めて剣を構えると。

「ハヤブサ斬り!」

 手の甲と剣身に再び淡い光を宿らせて、目にも止まらぬような高速でもってエビルボアの身体を斬り裂いた。

「ブオオオオ……ッ⁉」

 血飛沫が上がり、最期の絶叫を轟かせて、魔物の巨体が地面へと沈んでいく。はあはあと息を吐き、身体の痛みを思い出しながら、少女はその光景を見つめていた。

「間一髪だったな。いまのエビルボアを一撃で仕留めるとか、すごい剣技だ」
「……!」

 かけられた声に、少女がそのほうを振り返る。彼女から少し離れた木々の間に、レンジャーのような軽装の冒険者服に身を包んだ一人の少年がいた。長剣や槍などといった中型以上の武器は装備しておらず、腰に短剣とアイテム収納用のポーチを身に付けている。

「もしかして、エビルボアを遅くしたのは、あなたが?」
「そうだ。おれはルタ。冒険者職は一応、レンジャーってとこかな。あんたは?」
「あたしはロウです。剣士をやってます。助けてくれて、ありがとうございます」

 とはいえ、初対面の人物なので一応少女は少し警戒しながら言う。そんなロウのことには気が付いていない様子で、ルタは彼女に。

「気にすんな。ところで、この二体のエビルボアだけど、あんた、いるのか?」

 冒険者ギルドのクエストのなかには、依頼達成の証拠として、魔物の身体の一部や記録情報などを提出する場合がある。ルタが言っているのはそのことなのだろう……そう思って、ロウは首を横に振った。

「いいえ。あたしのクエストはこの森の泉から水を汲んでくることだったんですけど、その帰りに襲われて、迎撃したので……」
「ふーん。帰還用のサポートアイテムとか持ってなかったのか。レイブンの翼とか」
「水を汲んだあとに、使い切ってたことに気が付いて……」
「ふーん。んじゃ、このエビルボア達はいらないってことだな」
「はあ、まあ……」

 もしかして、同年代くらいに見えるこの少年は、これらのエビルボアの討伐依頼でも受けていたのか? それで幸運とばかりにその証拠を持ち帰ろうとしているのだろうか……少女がそう推測したとき、彼はまず普通サイズのエビルボアに近付いていくと。

「へっへー、こりゃもうけた。こんだけありゃ、しばらくは肉には困らねえな」

 腰の短剣を引き抜くと、ザクザクとエビルボアの身体を刻んでいって、手頃なサイズにしていく。それらの肉を、ポーチから出した小袋型のサポートアイテムのなかへと入れていく。

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