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第十三話 ありがとうございますっ!
しおりを挟む男が再度、背中の大剣に手を伸ばし、今度こそ背丈ほどもあるその大剣を引き抜く。
「お、おい……」
「まさか町のなかで使うつもりか⁉」
仲間達が若干戸惑った声を出すなか、男は大剣を構えると、そばの空間にメッセージウィンドウを出現させた。
『剛剣スキル:レベル10』
『剣技:地壊斬』
大剣に焦げ茶色の光がまとわれて、男が地面を蹴ってルタへと迫る。その顔は鬼のような形相となっているが、しかしルタは逃げようとも避けようともせずに、男の接近を悠然と待ち構えていた。
「粉々になって死ねッ! 地壊斬ッ!」
真剣な目付きで待ち受けるルタへとたどり着くと、男は少年を跡形もなく粉砕する一撃を振り下ろした。
『未熟スキル:レベル1』
『特技:デバフ』
しかしルタのそばにメッセージウィンドウが表示されると同時に、彼は眼前に迫りくる大剣を、あろうことか片手のひらで受け止める。
「なッ⁉」
至近距離でそれを見た男だけではなく、その場にいた誰もが信じられないという顔をして、声を漏らした。その場のほとんど全員が、大剣に押し潰されて粉々になる少年を予想したからだ。
ただ、店のカウンターの向こうのおやっさんは当然だとばかりにそれを見ていて、またロウも驚いたことは驚いたが、なんとなく彼ならどうにかできるのではとも思っていた。
おそらくは男の必殺技だったそれを軽々と受け止めつつ、ルタは男へと言う。
「おう、いいスキルに剣技だな。うらやましいぜ」
ほめたあと、すぐに瞳に鋭い戦意をみなぎらせて。
「だが、相手が悪かった」
拳を固く握りしめる。
ブワッ。男の顔や全身から汗が噴き出した。次に来るであろう一撃が脳裏をよぎり、なんとかしようとした瞬間。
「しばらく眠ってろ」
鍛え抜かれているその腹に、少年の拳が深々と突き刺さった。男が身に付けていた装備も、腹筋の壁すらも、いとも容易く乗り越えて大きなダメージを与えていく。
「カッ……ハッ……⁉」
あまりの衝撃に男が目を剥き、そして次の瞬間にはグルリと白目に反転する。ズズン……大きな音を響かせながら地面へと再び落ちていく。
しかし今度はもう立ち上がることはなかった。
「ふう……終わった終わった。対人戦とか、地味に久しぶりだったかもな」
額に浮き出たわずかな汗を拭いながらルタが言う。
その様子を、おやっさんはふんと鼻を鳴らしながら見て、ロウと女性店員は口を少しだけ開けて見て、道にいた人々は驚いた顔で見ていた。
シン……と、かすかな静寂。次の瞬間、若い女性店員が。
「あ、あのっ!」
尻餅をついていた床から慌てて立ち上がると、ルタへと駆け寄って、その手を取りながら。
「ありがとうございますっ!」
「おう。あんたも怪我はないか?」
「は、はい、わたしなら大丈夫ですっ」
「それならよかった」
「あ、あのっ、かっこよかったですっ!」
「お、おう?」
「お名前はなんていうんですかっ⁉」
「へ?」
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