【完結】 『未熟』スキル 最強ではないが相手を最弱にすれば関係ない ~かつてパーティーを追放された者の物語~

はくら(仮名)

文字の大きさ
12 / 131

第十二話 弱体化

しおりを挟む

 いままさに男が大剣を引き抜こうとしたとき。

『未熟スキル:レベル1』
『特技:デバフ』

 ルタのそばの空間にメッセージウィンドウが表示され、それとともに男の手と大剣に暗い光がまとわっていく。同時に、男の動きが先ほどよりも遅くなり。

「どうした? 今度はお寝んねタイムか? 動きが遅くなってんぜ」

 ルタが床を踏み込み、男へと迫る。反応できないでいる男の懐へと入り込むと、手のひらを広げた状態で腕を振りかぶり、がらあきになっているその腹部へと掌底を打ち込んだ。

「グブッ……⁉」

 防ぐことも避けることもできずに、もろに直撃した男の身体が店のドアをけたたましく破って、外の道へと吹き飛ばされていく。

「なっ⁉」
「おいっ⁉ 大丈夫かっ⁉」

 目の前で起きた出来事に男の仲間達が声を上げて、慌てて地面を転がっている男の元へと駆け寄っていく。
 驚いていたのはなにも彼らだけではなく、道行く人達もまた、突然の事態にびっくりした顔を浮かべていた。人々にとっては幸いなことに、いまの一撃で巻き込まれた人はいないようだった。

「おいルタっ! ケンカすんなら時と場所を考えろ! 誰かに当たってたらどうするつもりだ⁉ あと俺の店のドアをぶっ壊してんじゃねえ!」
「わりーわりー、あとでべんしょーすっから」
「当たり前だバカヤロー!」

 おやっさんの怒鳴り声に、ルタが片手を身体の前に出して謝罪のポーズを取る。その様子を女性店員は呆けたように見て、ロウも驚いたようにしていた。
 冒険者の男にまとわれた暗い光の正体について、ロウは知っている。エビルボアに使ったデバフと同じ光だからだ。しかしその後の、男を吹き飛ばした力は……いや、あれもおそらくは。

(自分を強化していたわけじゃない……彼は、あの冒険者を弱体化させて、吹き飛ばした……)

 それを見て、ロウは気付いたのだ。ルタが使うデバフは対象のスピードを遅くするだけではなく、防御力や耐久力も減少できることに。いや、デバフのスキルなのだから、できるのは当たり前だといわれればそうなのだが。
 しかし、筋骨隆々としていて、なおかつ重量のある大剣も含めて吹き飛ばせるとは……。

(彼のデバフの減少率はいったいどのくらいなの……)

 デバフだからと、能力を下げることだけだからと思っていたが、その認識は反省するべきかもしれない。少なくとも一対一の戦いであれば、彼は……。

「グ、ウオオオ……ッ!」

 仲間に声をかけられながら地面に転がっていた男が、雄叫びを上げながら立ち上がる。その顔つきや雰囲気はこれ以上ないほどの怒りに満ちており。

「テメエッ! 絶対に許さねえッ!」
「お。いまの一撃を食らって起きれんのか。よく鍛えてんな」
「黙れッ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

処理中です...