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第二十六話 不意討ち
しおりを挟むいつでも抜けるように腰に差した剣の柄に手を持っていくロウと、同じく警戒の視線を当たりに巡らせるルタ。
ルタがロウに聞く。
「さっきここを通ったのは何分くらい前だ?」
「覚えてないんですか? 探索しながらでしたけど、十分から十五分くらい前だったかと」
「つーことは、その間になにかがこの骨をここに置いたってことか」
「おそらくは。たまたまここを通っただけなのか、それともずっとあたし達のあとをつけてきてたのかは分かりませんけど」
暗いダンジョンのなかに二つの明かりだけなので、どうしても視界は限定されてしまう。暗闇の部分、特に背後からの不意討ちに備えるために二人は背中合わせに警戒する。
「目だけじゃなくて、音や匂いにも気を付けろよ。暗いなかじゃ重要な情報源だ」
「分かってます。だからあまりしゃべらないほうがいいかもですね」
「そうだな」
二人は口を閉ざす。自分達の声で周囲から迫る音が聞こえなくなっては意味がないから。またそれ以外にも、しゃべることで視界や匂いへの集中力が散漫する可能性があるだろうから。
だからこそ、黙ったまま視覚と聴覚と嗅覚に意識を集中させる。異常を感知した瞬間に即座に反応できるようにするために。
そうして長いようで短い時間が過ぎていく。実際には一分も経っていないかもしれなかったが、二人にとっては数十分や一時間以上に感じるような、緊張に満ちた時間が経過していく。
目に映るのは依然暗闇をまとうダンジョンの内部。耳に聞こえるのは身につけた時計の音と自分の心臓が鼓動する音。鼻に感じるのは相変わらずの石や岩の無機物の固い匂い。
そして。
ごくり。少女が張り詰めた緊張のなか喉を動かしたとき。
二人の足元に転がっていたさっきの骨が、いきなりルタの顔面へと飛び上がってきた。
「っ⁉ こっちだロウっ!」
「⁉」
ルタが彼女の手を取って、とっさに横に跳ぶ。彼らの頭のそばを、ギリギリのところで骨が通り過ぎていき、二人もまた地面を転がっていく。
「骨ですか⁉」
「もう少しで当たるところだった……っ」
状況を察したロウに彼が言う。
自分が避けただけでは背後にいるロウに命中してしまう……だからルタは彼女の手を取って回避したのだと、彼女は理解したが……。
すぐに体勢を起こしながら、ロウはルタに言った。
「あれくらい振り払えば……」
「万が一のためだ。もしかしたら変な付与効果があるかもしれねえからな。毒とか身体操作とか」
「…………」
ルタもまたすぐに起き上がりながら答えた。
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