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第二十五話 骨

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 また匂いに関しても、腐敗臭があれば動植物などの死体がある可能性があり、異臭すなわち排尿や排便の匂いがあれば生命体がいる可能性が出てくる。
 さらにいえば、匂いが留まっているということは、その場所では空気の流れがないか、あったとしてもかなり弱いことになる。
 もし空気の流れがほとんどないのに、つまり酸素の供給がなされていないのに、生命体の生きている痕跡があった場合、その正体は酸素を必要としない魔物の可能性もあり得るのだ。
 無論、これらはあくまで一例であり、これらに当てはまらないような場合も往々にして存在するのだが……。

「いずれにしても、油断は禁物だぜ。前人未踏のダンジョンだ、なにが起こるのかは予想はつかねえからな」

 覗き込んでいた壺から顔を離して、ルタは振り返りながらそう言う。彼の言葉に、ロウも真剣な顔でうなずいた。

「そうですね」

 そして二人は再び先を歩き始める。……が、少しして視界に壁が見えてきた。行き止まりだ。

「おっと、行き止まりか。こりゃ残念」

 ルタがマッピングしていた地図に行き止まりであることを記録する。ロウは後ろを振り返りながら。

「さっきの分かれ道まで戻りましょう。あっちは奥まで続いてるといいんですけど」
「だな。せっかくの新ダンジョンなのに、こんな浅いんじゃ肩すかしだもんな」

 ルタも振り返り、さっそく元来た道を戻っていこうとする。しかし、数メートル歩いたとき、カタンと何かを踏んづけた。

「ん、なんだ?」

 足元を見ると、円形に照らされる光のなかに白く細長いものが落ちていた。もっとよく確認するために拾い上げようとする彼に、ロウが制止の声をかける。

「ちょっと待ってください、それって、骨じゃないですか……っ⁉」
「骨?」

 言われて、もう一度それに視線を凝らす。言われてみれば確かに、どこの部位かまでは分からないが骨のように見えた。何らかの動物か、あるいは人間のものか。

「ってことは、ここには昔動物か人間がいたってことか……」

 ルタはそう推測しているが、ロウはそれ以上に警戒の視線を周囲に巡らせていた。明らかに何らかの存在を危惧している様子だった。

「おいおい、まだ魔物のものとか襲われたやつのものだとか決まったわけじゃないだろ。まあ警戒するに越したことはないけど……」

 彼がそう言ったが、ロウは警戒態勢を解こうとしない。むしろ一層強くするように、ルタへと言ってくる。

「よく思い出してください。いまあたし達は来た道を引き返してるんですよ。でも、さっきここを通ったとき、こんな骨なんか落ちてなかったじゃないですか……っ」
「…………、そういや、変だな……」

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