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第四十七話 『避けた』こと
しおりを挟む相手が答えないのを見て、ルタは。
「まあいいけどよ。あんたを捕まえたあとに、聞けばいいわけだし」
拳を握り込む。相手はナイフを持っているにもかかわらず素手で挑もうとしているのは、決して甘く見ているからではない。
ルタは確かに刃物としてナイフを装備している。が、これまでの戦いにおいて、それを使ったことはあまりない。相手の武器を素手で破壊できる以上、素手のほうが戦いやすいと思っているからだ。
ナイフはあくまで冒険の途中で見つけた食材を捌くときや、あるいはそれを使わなければいけないような場面で使っていた。
「行くぜ!」
「…………!」
ルタと通り魔が足に力を込めて、互いに相手へと迫ろうとした……そのとき。
「それでさー」
「あの子がねー」
道の両側に並ぶ店のドアが開き、なかから人々が外に出てくる。ついいままで静寂に包まれていた道に、人々の喧騒が戻っていく。
「…………っ」
多くの人々が現れたのを見て取って、通り魔は急制動するとともに、後ろを振り返って走り始めた。これだけの人数の前でナイフを持って立ち振る舞えば嫌でも目立ち、そして通り魔だと気付いた人によって官憲を呼ばれることを危惧したのだろう。
「あ、待て!」
突然の通り魔の行動の変化に、ルタが声を上げてそのあとを追いかけ始める。いま見失えば、次に遭遇できるのはいつになるか分からない。
最悪の場合、今回で犯行を終わらせてしまい、そのまま足取りをつかめずに迷宮入りする可能性すらある。
「あ、ちょ……っ」
通り魔を追う彼の背中にロウが声を上げようとする。彼女の頭に短い思考が巡っていく。深追いは危険なのではないか、周囲の人達に危害があったらどうしよう、まず官憲を呼ぶべきではないか……追いかけるべきか、否か……。
…………、一瞬の思考の末、彼女が下した判断は……。
「……もう……っ!」
ロウもまた彼のあとを、その先にいる通り魔を追いかけ始める。彼は確かに強いが、それでも一人で追わせるのは心配だった。相手は得体の知れない通り魔であり、複数の武器を隠し持っている、いったいなにをするのか分からなかったから。
またそれに加えて、いや下手したらそれ以上に懸念だったのが、通り魔がルタの攻撃を『避けた』ことだった。あのときの通り魔にはデバフが適用されていたと思われるのに、その影響をものともせずに彼の蹴りを避けたのだ。
(危ない気がする……彼を一人にしたら……)
デバフ状態でそれほど動けるのであれば、デバフが解除されればもっと強いことになる。
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