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第五十三話 担当
しおりを挟む「官憲に到着、と。そんじゃあ、担当の奴に会いに行くか」
年季の入った木のドアを開けて、ルタが入り、そのあとをロウも続く。建物は結構広く、いくつもある部屋や通路をひっきりなしに官憲の役人が出入りしていた。
そして二人は入口近くの受付窓口に向かい、自分達の名前と用件を伝えて、担当者と面会する。頭に手を当てながら軽くあいさつしたのは、官憲の制服の上にヨレヨレの外套を着た中年の男だった。
「あ、こりゃどーも、ルタさんにロウさんですな。私はサージと申します。昨夜は大変でしたなあ」
「どーも」「……こんにちは」
ルタは同じように軽い感じであいさつを返したが、ロウは若干固い様子だった。昨夜出くわした通り魔が外套を着ていたため、同じく外套を着ている男に心持ち警戒してしまったのだ。
彼女のその様子に気付いたのか、ルタが耳打ちするように小さな声で言う。
「……昔から愛用してんだろうな、このおっさんが着てる外套はところどころ破れてる。特に裾の辺りなんか、かなりひどい。フードもついてないタイプだし、昨日の奴とは違えよ」
昨夜の通り魔が着ていた外套は生地も滑らかであり、破れやほつれなどは一切なかった。少なくとも、この官憲が着ている外套とは別のものだ。
無論、それはあくまで外套が異なるというだけの話だが。
「……外套だけで一々警戒してたら、神経すり減らすぜ。もうちょい気ぃ抜いとけ」
「……あなたはもっと警戒とか緊張とかしたほうがいいですけどね」
「……かもな。ははっ」
肝に銘じたのか銘じていないのか、ルタは軽く笑う。相変わらずのことでロウは呆れるように息を一つつくが、同時に不思議なことに、どこか安心した部分もあった。
彼がこう言っている間は、まだ事態は深刻ではない……充分に対処できる範囲なのだ、と。
受付にいた女性となにやら仕事の会話をしていたサージが、二人に向き直って言った。
「それじゃあ、早速現場に向かいましょうか。実況見分をしに」
「だな」「はい」
「ではこちらへ。官憲の馬車がありますので」
「おう」
サージが入口へと向かい、二人もあとに続く。官憲の敷地内に出ると、話の通り、数人が乗れる馬車が何台か停まっていた。
すでに準備は整えていたらしく、御者台には二人の若い官憲が乗っていて、やってきたサージに手を上げてあいさつしている。サージもまたあいさつを返すと、ルタとロウに。
「さあ、お乗りください。乗り心地はいいとは言えませんが、それはご勘弁を」
頭に手を当てて、好々爺のように言う。ルタとロウとサージの三人が乗り込んでから、目的地に向かって馬車は発進した。
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