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第六十八話 言うのが怖い
しおりを挟む三人を一度見渡して、ルタが続けて言った。
「おまえ、本当になにも知らないのか? 本当はなにかに気付いたけど、言うのが怖い……っていうふうに、おれには見えるぜ」
「…………」
男が黙り込む。仲間達も目をそらす。それを見て、ルタは確信した。
「やっぱりな。おまえら、なにを見たんだ? なんで官憲や誰かに言おうとしない?」
「オレは、オレ達は何も知らねえ! それは本当だ!」
ルタの言葉尻に即答するように、男は声を上げる。その口調や気迫にウソをついているような感じはしなかった……が。
「だったらなんでそんなに怖がってるみたいなんだよ。おまえなら、おれに吹っ掛けてきたときのように、その通り魔をたたきのめそうって息巻くと思うけどな」
「グ……ッ」
男は言葉に詰まってしまう。ルタの指摘は的を射ていると、自分自身理解しているのかもしれない。
目を伏せて黙り込んでしまう男へと、ルタは何度目かの言葉を発した。いつものようなひょうひょうとした軽い雰囲気ではなく、いつになく真面目な顔つきで。
「教えろよ。あの夜、おまえらが見たすべてを。知っている限りのことでいいからよ」
「…………」
堅く閉ざされた口を開かせるために。
「今日の新聞は読んだか? 実はよ、おれとこいつも昨日の夜、その通り魔に襲われたんだ」
「「「…………ッ⁉」」」
三人の顔が二人に向いた。
「で、まあいろいろあって、結果的にあの通り魔を捕まえようと思った。まあ、官憲が先に捕まえんなら、それでもいいけどよ」
だめ押しするように、ルタは言う。
「つーわけで、いま情報を集めてるわけだ。通り魔と戦ってほとんど無傷で済んで、むしろ逆にあとちょっとで追い詰められそうだったおれなら、捕まえられる可能性は大いにあるからな」
「「「…………」」」
自信満々なルタに、三人は互いに顔を見合わせる。その顔つきを見るに、いま彼らのなかでは、こいつならもしかしたら、とか、こいつには話しても大丈夫なんじゃ、とか、そういった思惑が巡っていそうだった。
「「…………」」
そんな彼らを、ルタとロウもまた無言で見つめていた。どんなに説得しても、話すかどうかは結局は三人次第。ならばルタとロウにできるのは、彼らが重く閉ざした口を開けるのを待つことだった。
「「「…………」」」
目顔を見交わせていた三人の顔が二人に再び向く。そこにはある種の、なにかに怖がりながらも話すことを決めた表情があった。
持っていた箸と食器を盆の上に置いて、男が口を開く。仲間達もまたそれぞれの食器を置いて、男の話を無言で裏付けるようにルタ達に顔を向けていた。
「……奴がどこの誰なのか、その正体が分かるようなことは何も見ちゃいないし、知らない。それは本当だ。オレ達が見たのは、オレよりも背が低い、テメエと同じかチョイ下くらいの、フードをかぶった奴だ」
「「…………」」
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