【完結】 『未熟』スキル 最強ではないが相手を最弱にすれば関係ない ~かつてパーティーを追放された者の物語~

はくら(仮名)

文字の大きさ
74 / 131

第七十四話 あ、あんたは⁉

しおりを挟む

 業を煮やしたルタは前方へと手をかざし、その手のひらに淡く暗い光を灯す。

「デバフ!」

 その光を逃げる相手へと飛ばした。『未熟』スキルによるデバフの光。対象のスピードを遅くし、追いつこうとしたのだ。……が。

「きゃ……っ⁉」

 逃げることに夢中で足元の石に気付かなかったのか、前にいた相手が不意に転んだ。そのせいでデバフの光が相手の頭の上を通り過ぎていく。

「な……っ⁉」

 ルタが驚いた顔をする。転んだ相手はすぐに起き上がると、また逃走を再開した。

「運のいいヤローだ!」

 ルタが毒づくが、おかげで分かったこともある。転んだとき、相手は女のような高い声を発した。相手は女なのかもしれない。

「くそっ、あいつはまだなのかっ⁉」

 相手が転んだことで、多少は距離は縮まっていた。しかしまだ捕まえるには遠い。とにかくいまは追いかけなければいけない。そうすれば、いずれは……。
 路地の出口が見えてくる。長い長いトンネルの出口から出るように、相手がやや広くなった通りへと飛び出したとき。

「追いついたぁっ!」

 尾行者の横側からロウもまた両手を伸ばしながら飛び込むように出てきて、

「っ⁉」

 びっくりする相手の身体を地面に押し倒した。勢いがつきすぎてしまったのか、二人してゴロゴロと地面を一、二メートルほど転がっていく。

「でかした!」

 ほこりを巻き上げながら、ようやく止まったロウと尾行者にルタが駆け寄っていく。と、その足が二人の直前で止まり、ルタが驚いた声を出した。

「あ、あんたは⁉ おやっさんとこの⁉」

 ロウと折り重なるようにして倒れていたのは、料理屋で女給をしていたニーサだった。

「えっ⁉」

 ルタの声に、ロウも自分が押し倒した者の正体に気付いて驚きの声を上げる。腕立て伏せの体勢でロウがニーサを見下ろしたとき。

「きゅうー……」

 彼女は目をグルグルとさせて、小動物のような声を漏らしていた。
 ……………………。

「で? なんでおれ達のあとをつけてきてたんだ? 路地裏になんか隠れて」
「てへへ……」
「てへへじゃなくて……」

 頭の後ろに手を当てて苦笑いを浮かべるニーサに、ルタがジトーとした目を向ける。
 追走劇からやや経って、三人は近くの公園のベンチに座っていた。真ん中にニーサが座り、彼女を挟むようにルタとロウが左右に座っている。

「逃げやがるし」
「そ、それはいきなり追いかけてきたから、びっくりしちゃって……」
「「…………」」

 言い訳のように言うニーサに、二人が小さな息をつく。確かに彼女の視点からすれば、思わず逃げ出したくなってしまったのだろう。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎
ファンタジー
 伝説級勇者パーティーを首になったニースは、ギルドからも放逐されて傷心の旅に出る。  その途中で大地の精霊と運命の邂逅を果たし、精霊に認められて加護を得る。  出会った友人たちと共に成り上がり、いつの日にか国家の運命を変えるほどの傑物となって行く。  そんなニースの大活躍を知った元のパーティーが追いかけてくるが、彼らはみじめに落ちぶれて行きあっという間に立場が逆転してしまう。  大精霊の力を得た鑑定師の神眼で、透視してモンスター軍団や敵国を翻弄したり、創り出した究極のアイテムで一般兵が超人化したりします。  今にも踏み潰されそうな弱小国が超大国に打ち勝っていくサクセスストーリーです。  ※ハッピーエンドです

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈@コミカライズ連載中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】 私には婚約中の王子がいた。 ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。 そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。 次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。 目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。 名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。 ※他サイトでも投稿中

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

辺境追放された「植物魔導師」の領地開拓 ~枯れ果てた死の大地は、俺の魔力で聖域(楽園)へと変貌する~

リーフレット
ファンタジー
​「植物魔法? ああ、農作業にしか使えないあの地味な魔法か」 ​帝国騎士団の専属魔導師だったアルトは、無能な二世皇太子レオンによって、一方的に追放を言い渡された。 アルトがどれほど魔導植物を駆使し、帝国の食糧難を裏から支えていたかを知らぬまま、彼は「戦闘に役立たない役立たず」という烙印を押されたのだ。 ​帝国を出て行き着いた先は、魔物が跋扈し、草一本生えないと言われる最果ての荒野。 死を待つだけの地。しかし、アルトは絶望するどころか、晴れやかな顔で笑っていた。 ​「やっと、気兼ねなく『植物』を愛でられる。……よし、ここを世界一の庭(楽園)にしよう」

処理中です...