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第八十四話 世間話
しおりを挟むははは、と軽く笑う彼を見て、ニーサもまた、
「…………」
とそれ以上なにかを言うことができなかった。彼は本当に自分のことを心配していて、これ以上わがままを言っても困らせてしまうだけだ、と。
彼女の気持ちをほぐすかのように、いつものひょうひょうとした雰囲気をまとわせながら彼はニーサに言った。
「今日のところはお開きってことで。近くまで送っていくからさ」
「…………、分かりました。それじゃあ、夕食の買い出しがあるので、家の近くのお店まで……」
「店ならそこにもあるけどな」
ルタが親指で示す。彼の言う通り、すぐそこが量販店であり、多くの客が買い物袋を提げて出入りしていた。
だが、ニーサは残念そうな声で。
「このお店はあまり来たことがないので……いつものお店なら夕方に特売をやっているので……」
よく知らない店だから商品の配置や特売の時間などもよく分からない。ここでいま買い物に余計な時間を掛けてしまうよりは、いつもの知っている店のほうがなにかと都合がいいと、そういうことだった。
またそれ以外にも、ニーサとしてはいまここで別れるよりも、もう少し一緒にいたいという気持ちもあったようだが……ルタはそのことには気付いていないようだった。
「なるほどな。そんじゃあ、その店まで送るってことで」
それでいいか? と、彼がロウへと目顔で尋ねると、ロウもまたうなずいた。あたしなら別に構いませんよ、と。
そうして彼らは茜色に染まる道を、人混みとともに歩いていく。人混みのなかで事件の話というのもアレだったのか、ルタは世間話をするように。
「だけど、特売か。なんか意外だったな」
「へ……?」
自分に向けられた言葉だと気付いて、ニーサは一瞬ポカンとした顔になった。ルタはかすかに笑みながら。
「いや、なんか勝手なイメージだけど、ニーサさんはあんまりそういうの気にしないというか、こだわらないイメージだったから」
「はあ……」
どういう反応を返していいのか分からない様子で、ニーサは曖昧な声を出した。彼女に代わって、ロウが彼に文句を言う。
「他人に勝手なイメージは持たないようにって、言われたことないんですか? ニーサさんだって困ってるみたいですし」
「そういうあんたはまんま特売とか行ってそうだよな。そんで毎日、お得に買えたってホクホク顔してやがんの」
「ホクホク顔なんかしてませんっ! 特売には何日かに一回くらいは行ってますけど……」
「ははは」
「笑わないでくださいっ!」
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