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第八十三話 なにかあったら

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 それぞれの意見が一致したので、三人はまた聞き込みを再開することにした。

「よし、そんじゃあ、また三十分聞き込みして、ここに合流ってことで。それでも見つからなかったら、次は場所を移して聞き込むっていう流れで行こう」
「はい」「分かりました」

 ルタの行動指針にロウとニーサも同意して、彼らは再び町のなかへと散っていく。
 聞き込み、合流、得られた情報の共有化、場所を移してまた聞き込み……。一連の流れを何度か繰り返しているうちに、あれほど明るかった午後の日差しも傾き始め、いつしか辺りは茜色に染まりつつあった。
 最初の聞き込みから数時間、しかしそれでも有力といえる情報を得ることはできないでいた。聞けるのは昨夜の現場に居合わせて、通り魔の逃げる背中やフード姿を見た……くらいのものだった。
 顔を隠した通り魔に関しては、ルタとロウも目撃し、交戦もしている。ほしかったのはそれ以上の、その先の情報だったのだが……残念ながら目撃者はいないようだった。
 そして何度目かになる合流を経て、ルタは左腕に付けた腕時計に目を落とす。短針は四と五の間を差し、長針は左半分を回り始めるところだった。

「もうこんな時間か……」

 とある量販店の壁に背を向けながらルタがつぶやく。期待していたような情報が得られなかったことに、彼の前にいるロウとニーサは残念さと徒労感を漂わせた顔つきを浮かべていた。
 道には仕事帰りやクエスト帰り、はたまた夕食の買い出しの人々が通っていて、昨夜の通り魔事件が嘘のように平和な日常があった。朝から動きっぱなしということでルタ自身も疲れているはずだが、そんな様子は見せることなく彼はニーサに向いて言う。

「もうすぐ夕方だし、ニーサさんはもう帰ったほうがいいかもな。俺達は冒険者だからまだしも、夜になったら危ねえし」

 通り魔に狙われてしまうかもしれないからと、暗にその意味を込めていた。自分達は最悪出くわしても戦えるが、彼女はそうもいかないから、と。
 しかしニーサはこんなところでは帰れないと、食い下がるように応じる。

「そんな……もう少しだけ手伝わせてください。まだ陽も落ちてませんから……っ」

 せめて何かしらの進展があってから、事件解決への希望が持ててからにしたい……ニーサはそう思っているようだが、ルタは首を横に振る。

「申し出はありがたいんだけどな、ニーサさんになにかあったら俺がおやっさんに殺されちまう。よくもうちの店員を危ねえ目に遭わせたな、って」

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