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第八十二話 聞き込み
しおりを挟む代わって口を開いたのはニーサだった。ニーサは残念そうな声で。
「それじゃあ、調査は諦めるってことですか……残念です……」
彼女は肩を落としてしまう。ロウもまたうつむいて諦めた顔を浮かべた。
しかしルタは。
「いや、現場の調査ができねえってだけで、やれることならまだあるぜ。ほんの少しだけどな」
彼の言葉に、ロウとニーサが彼を見た。二人同時に声を出す。
「「なんですか……⁉」」
異口同音に言葉をハモらせる二人に、ルタは思わず目を丸くした。身を乗り出すように問いただそうとしてくる二人に、身体をわずかに引きながら答える。
「なにって、聞き込みだよ、聞き込み。事件を直接は目撃してなくても、なにかしら怪しい物音を聞いたり、怪しい奴を事件の前後で見かけてたり、そういう奴らもいるかもしれねえからな」
「「な、なるほど……」」
ロウとニーサが同時に納得する。この二人はどこかしら似ている部分があるのかもしれない。
ルタが言った。
「つーわけで、さっそく聞き込みを始めるか。官憲に見つかったら面倒くせーから、それは気を付けろよ」
「「は、はい……っ」」
「じゃあ、俺はこっち。あんたはそっち。ニーサさんは……」
「あっちですね」
彼の言葉を予測して、ニーサがその方向に指を差す。ルタはうなずいて。
「そ。んじゃ、聞き込み開始で。とりあえず三十分後に、またここで落ち合うってことで」
「「分かりました」」
ロウとニーサもうなずきを返して、そして三人は周囲への聞き込みを開始した。
結論からいうと、収穫はなかった。
三十分後、聞き込みを終えた三人が再び合流して、それぞれが聞いた情報を言おうとしても、三人とも首を横に振るだけだった。ロウとニーサは残念そうに、ルタは肩をすくめながら。
ある意味、これは予想できた結果だともいえる。もし事件に関する目撃情報があるのなら、とっくに官憲が聞き出して事件の捜査を進展させているだろうから。
時刻はすでに昼を過ぎ、午後に入り始めていた。太陽は空の真上辺りに輝き、暖かな日差しを降り注がせている。
ニーサが二人へと言う。二人を元気付けるように努めて明るい声で、拳を握った両腕を心持ち自分の身体の前で上げながら。
「まだ諦めるのは早いですよっ。もう少し聞き込みを続けましょうっ」
応じたのはルタだ。彼女の言う通りだと肯定するように、うなずいて。
「そうだな。他にやることも考えつかねえし、とにかくやるだけやっておこう」
ロウもまたうなずいて言う。
「そうですね。まだ三十分しか聞いてないわけですし。もっと聞いて回れば、なにか情報が見つかるかもしれませんからね」
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