【完結】 『未熟』スキル 最強ではないが相手を最弱にすれば関係ない ~かつてパーティーを追放された者の物語~

はくら(仮名)

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第百三話 朝早くから

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 だから官憲事務所自体は開いているだろうが、朝にルタが訪れているとは限らない。彼のことだから普通に昼ぐらいまで寝ていて、寝癖を直さないまま昼過ぎにやってくる可能性も充分あった。
 ロウはそう思っていたのだが。

「なんだ、あんたも朝早くから来たのか。寝てりゃいいのに」

 彼女が官憲に到着したとき、その入口の前にはすでに彼の姿があった。フードキーパーに保存していたのだろう、肉を挟んだパンをモグモグとしながら、もう片方の手には紙パックに入ったココアを持っていた。
 自分よりも早く来ていたことにびっくりしつつ、ロウは彼に応じる。

「それはこっちのセリフです。ルタさんのことだから、てっきりお昼過ぎまで寝坊していると思ってました。別に待ち合わせの約束もしてませんでしたし」
「ま、いつもだったらそうかもな」

 ゴクンと、頬張っていたものを飲み込んだあと、ココアをゴクゴクと飲んでいく。それからまたパンの残りを頬張り始めてから。

「けどいまは調査の真っ最中だからな。面倒なことは早いとこ終わらせたい性格なもんで」
「……ルタさんが積極的に取り組む必要はないはずだと思いますけどね……」
「揚げ足取るねえ」

 なにがおかしいのか、ルタはニヤリとする。それから再びゴクリと喉を動かすと。

「それを言うなら、あんたもじゃねえの?」
「あたしは、新たな被害者が出るのを防ぐために……」
「そういや、おれのボディーガードするとか言ってたけど、昨日の夜は自分ちに帰っちまったしな」
「そ、それは、その……っ」

 彼の話を聞いて、いろいろなことを考えていたら、うっかりしていて……とは恥ずかしくて言いにくかった。あれだけ彼の護衛をすると言っていたのに、まさか自分自身が忘れてしまうなんて、穴があったら閉じこもりたい気持ちだった。

「ま、別にいいけど。おかげでいつも通り一人でゆっくり過ごせたし。その調子でこれからも忘れてくれ」
「…………」

 感謝されているような言い方だが、そこはかとなくバカにされているような気もした。忘れていた自分が悪いのだから仕方ないのだが、ロウは釈然としない気持ちだった。
 彼女がなんともいえない表情をしているなか、ルタは手にしていた肉サンドとココアを平らげると、ゴミをフードキーパーのなかへと入れる。

「汚いですよ」
「仕方ねえだろ、近くにゴミ箱がねえんだから。フードキーパーなら他のものを汚さねえし、ゴミ箱を見つけたらちゃんと捨てるしよ」

 フードキーパーの内部は特殊な空間となっており、入れたものを入れたときの状態で保存できる。フードキーパー内では他の物質と干渉することもないので、確かに臨時のゴミ入れとしても使えることは使えるのだった。

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