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第百四話 食べ物と事件のことしか
しおりを挟む「んなことより、さっさと行くぞ。ようやく手掛かりが掴めるかもしれねえんだから」
「……もしかして、あたしがここに来るのを待ってたんですか? 朝ご飯をたべながら……」
「いや、違えけど」
「…………」
即答だった。照れ隠しでそう言っている……わけでもなさそうだった。
「ただ単に早いとこ解決するために朝早く来ただけで、メシを食ってたのは腹が減ってたからだ。さすがに官憲のなかで手掛かりを探しているときに食うのはアレかと思ったからな。で、そうしてたら、あんたがやってきたってだけだよ」
「…………」
あるいはもしかして……とかすかな思いを抱いたのが、なんかアホらしくなってしまった。本当に待ってくれていたのなら、ようやく彼に認められたような気がしたのに、と。
「……はあ……」
ロウは彼にも分かるように露骨にはっきりと大きなため息をつくと。
「行きますよ。こんなところでグズグズしてる暇なんかないんですから」
彼を追い越すように官憲事務所へと向かっていく。そんな彼女にルタは首を傾げると、そのあとを追いかけながら。
「なに怒ってんだ、あんた」
「怒ってません。呆れてるだけです」
「似たようなもんだろ。あ、もしかしてあんたも肉サンド食いたかったのか?」
「違います」
「それじゃあココアか?」
「それも違いますっ」
「遠慮しなくても、腹減ってんなら分けてやるぜ。まだ余ってるし」
「だから違いますからっ」
どうやらいまの彼の頭には食べ物と事件のことしかないらしい。
そうして言い合っている間に事務所の入口へと着いていて、二人は自然と口を閉ざす。ロウがガラスのはまったドアを開けて、二人はなかに入ると、昨夜訪れた窓口へと再び向かった。
当然のことではあるが、窓口にいた受付の人は変わっていた。かれこれ三回目の訪問になるが、同じ受付の人に当たったことはない。
おそらく数人態勢の持ち回り制なのだろう。官憲は様々な事件を取り扱っていて忙しいので仕方ないが、来る度にいちいち名前や身分を告げるのは面倒だった。
しかし今回はいままでと違うことがあり、二人の名前を聞いた受付の人はこう言ってきた。
「ルタさんとロウさんですね。サージさんから話は聞いています。いまサージさんをお呼び致しますので、少しお待ちください」
思わず二人は顔を見合わせる。またいつもの面倒なやり取りを繰り返すことになると思っていたが、どうやらサージがあらかじめ話を通していたらしい。
受付の人が手近にあった小さな箱型のアイテムに触れる。通信アイテムだ。それでサージと連絡を取っているらしく、通話を終えると二人に向いて。
「すぐに来るそうです。もう少々お待ちください」
「分かった」「分かりました」
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