【完結】 『未熟』スキル 最強ではないが相手を最弱にすれば関係ない ~かつてパーティーを追放された者の物語~

はくら(仮名)

文字の大きさ
129 / 131

第百二十九話 ……ルタ……おれの名だ

しおりを挟む

「はっ! さすがは悪魔なだけはあるってか」

 毒づくようにルタが言う。あれで終わるとは思っていなかったとはいえ、やはり目の当たりにすると少し辟易してしまう。
 まだ終わらないのかと。早く終わってくれと。

「無論じゃ。我輩は魔界に名を轟かせた悪魔、ベルゼー。これしきのことで終わってたまるか」

 自身では回復できないのか、全身に火傷を残した状態で悪魔が言う。魔力を展開しているのか、その足元が淡く光り始めていた。

「『この地に眠る数多の者達よ、我がベルゼーの名において命ずる。いま再び大地に姿を現し、我が眼前の敵を常世に引き入れよ!』」

 悪魔の言葉には力が宿っていた。ただ魔力を行使しているだけではなく、さらなる力を引き上げるための呪文だ。
 悪魔が言い終わるやいなや、ボコリと地面からなにかが出てくる。白骨化した、なんらかの生物の手だった。それも一つだけではなく、悪魔の周囲からいくつも伸びてくる。

「……スケルトン……」

 地面から現れるそれらを見てルタがつぶやく。それらは全身が白骨化したオオカミやライオンなどの動物や魔物であり、なかには人間と思しき死体も混ざっていた。

「かっかっかっ! ものども、掛かれ! あやつを八つ裂きにするのじゃ!」

 悪魔の命令が轟き、スケルトンの群れがルタへと襲い掛かる。だが彼は背を向けて逃げようとはせずに、逆にその群れへと駆け出していった。

「かかか! 自棄になったのか⁉ いくら貴様でもこの数は……」

 笑う悪魔に対して、しかしルタは駆けることをやめず、両手のひらに淡く暗い光をまとわせていく。その光をスケルトンへと飛ばし、あるいはすれ違いざまに軽く触れて、スケルトン達にも光を宿らせていく。

『未熟スキル:レベル2』
『特技:リバース』

 彼のそばの空間にメッセージウィンドウが現れて、彼が小さくつぶやいた。

「戻れ。おまえらが元いた場所へ」

 途端、スケルトン達の骨がバラバラに崩れていき、落下した先の地面へと飲まれていく。彼のスキルによって、悪魔に使役される前の状態に戻っていったのだ。

「な……っ⁉」

 驚く悪魔の眼前へとルタが迫る。その手には腰から引き抜いた一振りのナイフ。距離的にも時間的にも、悪魔にトドメを刺すまであと一歩の猶予があった。
 そのわずかなラグを悪魔が逃すわけもない。悪魔は即座に赤黒くなった手のひらを頭上にかざすと。

「我輩を守れ! 歴戦の戦士よ!」

 地響きが起こり、悪魔の背後から巨大な影が立ち上がっていく。それは一本一本の骨が人間よりも巨大な、巨人族の魔物のスケルトンだった。
 高さ数十メートルのスケルトンの腕がルタへと伸びていく。あと一歩縮める前に捕まれば、勝ち目はなくなってしまうだろう。
 だが彼はまったく動じることなく。

「無駄だ。デカさとか強さの問題じゃねえんだ」

 巨人のスケルトンにもまた淡く暗い光が灯る。直後、それも地面へと崩れて沈んでいった。

「……っ⁉」

 そして最後の一歩を詰めて、驚愕する悪魔の胸元へとナイフの切っ先を突き立てた。
 …………。瞬間的な静寂。一秒が永遠に引き伸ばされたような時間の錯覚。
 悪魔が目を見開いて、腕をガクリと垂れ下げさせる。もはや反抗する余力は残っていないようだった。

「……かか、か……見事じゃ……我輩を打ち倒すとはのう……」

 赤黒かった身体が徐々に灰白色へと移り変わっていく。それはまるで紅葉色の秋の季節が雪の積もる冬に変遷していくようであり、悪魔の命がもうすぐ尽きることを意味していた。
 最期に言い残そうとするかのように悪魔が口を開く。あるいはそれは消え行く自身の心に刻み込むためのように。

「最期に、聞いておこうかの……お主の名を……お主は何というのじゃ……」
「……知ってるはずだろ、ニーサさんを通して」

 素っ気なく答えたルタに、悪魔は力のない笑い声を漏らした。

「かか……無粋な奴よのう……おまえさんの口から聞きたいのじゃよ……」

 この世から完全に消滅してしまう前に、自分を倒した者の名を直接聞いておきたいということだ。たとえ悪魔だろうと相手の心を汲み取れないほど、ルタは読めないわけではなかった。
 口を開いて、ルタが名を告げる。

「……ルタ……おれの名だ」

 聞いた悪魔がかすかに微笑む。まるで優しさを取り戻した人間のように。
 そして最期につぶやいた。

「……さらばじゃ……ルタ……我輩を倒した者よ……」

 まるで灰が風に乗って散っていくように、悪魔の身体は跡形もなく消滅していった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

【完結】テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

攻略. 解析. 分離. 制作. が出来る鑑定って何ですか?

mabu
ファンタジー
平民レベルの鑑定持ちと婚約破棄されたらスキルがチート化しました。 乙ゲー攻略?製産チートの成り上がり?いくらチートでもソレは無理なんじゃないでしょうか? 前世の記憶とかまで分かるって神スキルですか?

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚… スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて… 気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。 愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。 生きていればいつかは幼馴染達とまた会える! 愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」 幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。 愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。 はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?

処理中です...