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74 話す決心を
しおりを挟む…………。そしてその日の授業が終わり、翌日になり、放課後へと至る。シャンディーには事前にこう言っていた。
「今日は放課後に友人に部活を見学していってと言われているので、先に帰っていていいですよ」
「えー⁉ それじゃあわたしも一緒に見学したい!」
シャンディーはアリエスと一緒にいたいのだ。しかし……。
「ごめんなさい、高等部の部活だから、中等部のシャンディーは……」
言葉を濁すアリエスに、話を聞いていたドロナが助け船を出した。
「シャンディー、聞き分けなさい。アリエスさんが困っているでしょう?」
「でもー……」
なおも渋るシャンディーに、アリエスは仕方なしというように言うのだ。隠れてついてこられて、ピナと会っているところを見られても困るので……。
「それなら、わたしが戻るまで停車場で待っていてくれませんか? なるべく早く終わるようにしますから」
「…………」
「ね。それならいいでしょう?」
「……分かった、早く終わらせてね、約束だよ」
「はい、約束です」
そうしてなんとかシャンディーを説得して……アリエスは放課後の学舎裏へとやってきたのである。
ピナはすでに来ていた。彼女は学舎の壁に背中をもたせながら地面に座り、魔法学の教科書を読んでいた。
アリエスの近付く音に気付いた彼女は、教科書を閉じて立ち上がる。スカートについた土を払いながら。
「来たわね。危うく教科書を読み終わるところだったわ」
どうやらずっと前からここで待っていて、読んでいたらしい。
「まあ、どうせもう何回も繰り返し読み込んじゃってるんだけど」
「勉強熱心なんですね」
「授業を受けてないからね。せめて教科書くらいは読んでおかないと。学園に来てるときは暇を持て余してるし」
それは前世のアリエスと同じだった。前世のアリエスもまた、悪役令嬢として悪戯やその準備をしているとき以外は、教科書や参考書を読み込んでいたものだった。
「そんなことより……他に誰もいないわよね?」
「はい。言い訳をして一人で来ました。とはいえ早めに停車場に向かわないと、変に思われてしまうかもしれませんが……」
「うん、それはそうね。じゃあ……昨日のあんたの質問に答えるわよ」
「話す決心をつけてくれたんですね」
「昨日そう言ったじゃない。だからここに来たわけだし」
「…………」
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