【完結】 学園の聖女様はわたしを悪役令嬢にしたいようです

はくら(仮名)

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104 魔法の発動原理

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「やっぱりスピードを上げただけではまだね、パワーも上げなきゃ、『ファイブフレイムパワー』!」

 ベリーの剣に今度は炎がまとわれる。炎属性の付与および攻撃力五倍強化の魔法だ。
 ついいましがたまでのアリエスは、ベリーの剣撃を魔力で強化した身体で防御していた。スピードが上がっただけの剣撃なら、それでもなんとか耐えられると判断しての対応であり、実際細かな斬り傷は受けつつも耐えていた。

 だがこの炎属性のエンチャントかつ五倍強化の前では、魔力で強化しただけの防御では無理だろうと直感した。強力になったベリーの剣撃が振り抜かれる直前で、アリエスはとっさに後方へと跳んで回避する。

「逃げても無駄だってのに!」

 ベリーのその剣撃自体の回避は、ぎりぎりで成功した。しかしアリエスが地面に着地するのと同時に、上空からの落雷が追撃してくる。
 その落雷はスピードだけならベリーの剣撃よりも数段速く、上空が光ったと思った瞬間には、アリエスの頭上目掛けて一閃に直進してきていた。いままでのものよりもさらに速く、回避は不可能だと、思うよりも先に本能的に悟る。

 だから、アリエスがその動作を実行出来たのは、ひとえに脊髄反射的な身体の反応に近かった。アリエスは落雷が頭に直撃する一瞬前に、右手を頭上に掲げて、避雷針のようにそちらへと落雷を誘導させたのだ。

「…………っ!」

 魔力を集中させていた手に、魔法の落雷が直撃する。激痛が手や腕に走る。それでもアリエスは右手を横へと払って、胴体へと至ろうとしていた稲妻を庭園の木立へと放り飛ばすようにして振り払った。
 耳をつんざくような甲高い衝撃音が響き渡り、稲妻の直撃を受けた木立が火柱を上げて真っ赤に燃えていく。その付近が炎の赤色に照らされていく。

「へぇ、貴方、意外と強かったのね」

 ベリーが少しだけ感心した声を出す。魔力を集中させた手による、魔法の弾き飛ばし……一般的に魔法による攻撃は、魔力そのものの攻撃よりも強力なものが多い。
 その理由は魔法の発動原理に関係してくるからだ。魔法は魔法を使えるようにさせる『存在』との契約によって扱えるようになるが、魔力はそれぞれの個人が持つ生体エネルギーだからである。

 例を挙げるのは難しいが……あくまで射手の筋力で放つ弓矢と、火薬によって簡単に撃てる銃火器の違いが、それに近いだろうか。弓矢と筋力が魔力的なイメージ、銃火器と火薬が魔法的なイメージとなる。
 魔法の源たる『存在』の力を借りている以上、魔法は、あくまで個人の力である魔力よりも基本的には強いのである。ただし、無論それに当てはまらないケースもあるにはあるが。

 ……ベリーの想定では、いまの落雷の一撃でアリエスは黒焦げに炭化しているはずだった。だがしかし、弾かれたのは意外ではあったし、死ななかったのも予想外ではあったが……ならば今度は防御も回避も弾き飛ばしも出来ないような一撃を食らわせるだけである。

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