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第二章 ゾディアックにまつわる面倒な連中
第六話 とらぶる
しおりを挟むおもむろにトパが振り向いてきて、心から嬉しそうな笑顔を向けてくる。
「やったよ、レイン! 褒めて褒めてー」
「…………」
「褒めて褒めてーっ」
これ以上無視したらもっとうるさくなりそうだったので、面倒だったが仕方なく。
「……はいはいよくやったよくやった」
テキトーに流しておく。凄まじく雑な返答だったのにもかかわらず、しかしトパは本当に嬉しそうに。
「えへへーっ」
と無邪気に笑っていた。
たかが授業の模擬戦で、データの魔物を討伐したくらいで、どうしてそんなに嬉しがることが出来るのか。
マジで分かんねえ。
トパに対して不可解な表情を浮かべていると、向こうのほうからジャージ教師が声を掛けてくる。
「二人とも、次の組が控えていますので、早くそこから離れてください」
「はーいっ」
いまだにニヤケ顔のトパが返事をして、
「レイン、行こっ」
手を取ってこようとした時、さっきまでイエロースライムがいた場所に、突如として直径数メートルほどの魔法陣が描き出される。
「「「「……え⁉」」」」
ジャージ教師やクラスメイト達、トパが驚きの声を漏らす。驚愕するみんなの前で魔法陣の光が強くなり、そこから数十体のオークが姿を現した。
「オーク⁉ いったいどうして⁉」
ジャージ教師が困惑と驚愕の入り交じった声を上げる。
オーク族。二足歩行の魔物で、人間に似た筋肉質の身体をしている。体長は一メートル半から二メートルほどで、多少なりとも知能を有していて、原始的なものが多いが人間のように武器を扱うことも出来る。
魔物としての強さは下の上といったところで、魔物との戦いに慣れている奴でも油断すれば手痛い一撃をもらうこともある。
「皆さん、早く逃げてください!」
「先生、早く消してよ!」
「あれは私が呼び出したものではありません! とにかく早く逃げて!」
ジャージ教師がクラスメイト達に大声で言い、突然の事態にクラスメイト達はパニック状態になっている。
オークはゴブリンやホビットなどと同様の、亜人種に分類される。中でもオークは好戦的な気質を有しており、単独でも戦いを挑んでくる面倒くせえ奴だが、群れで現れた時はもっと面倒くさくなる。
「レインっ!」
クラスメイト達が大慌てで逃げていく中、トパが緊張感に満ちた声を掛けてくる。
「…………おまえも逃げたほうがいい。いまのおまえじゃオークに対抗するのはまだ早い。ましてやあの数だ。早く逃げろ」
ジャージ教師のあの態度からして、これは本当の緊急事態、想定外のトラブルだろう。
「これは模擬戦じゃない。本当に死ぬぞ」
「……っ⁉」
オークの群れに睨む視線を向けながらトパに言う。しかし彼女は一向に逃げようとはせずに、むしろオークのほうを向いて魔力を込めた手をかざした。
「……あたしは逃げないからっ。レインに全部押し付けて逃げるなんて、あたしはしたくないっ」
その声に偽りはなく、だからといって恐怖心がないわけでもないらしい。かざしている手は小刻みに震えていた。
…………。
「……悪いが、あいつらは俺の獲物だ」
「え……?」
ポンッとトパの頭に手を置きながら、一歩前に出る。
「レイン……」
さすがにこの状況で眠いと言って、あくびをしていることは出来ないだろう。
「久々に力でも使うか」
言いながら身体の前で両手を合わせて、それから離していく。その両手の間に淡く光る魔力の剣が出現する。
その剣を握った時、前方にいるオーク達が石斧や石剣など、それぞれの武器を振りかざしながら迫ってきた。
「二人とも何してるの⁉ 早く逃げなさい!」
後方からはジャージ教師の切羽詰まった声。
悪いが、その命令は聞けない。落ちこぼれの不良学生なんでね。
剣技の名前はあるが、言うのは面倒くせえんだ。だから。
「斬られて死ね」
床を蹴り、一瞬にしてオーク達の間を駆け抜けていく。
「はっ、他愛ねえ」
血に濡れる魔力の剣を振り、血を払う。その瞬間、全てのオークが噴水のように血を吹き上げながら倒れ伏していった。
「「……っ!」」
後ろで見ていたトパとジャージ教師が、驚きで口を開けていた。
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